高齢者の転倒をAIで検知 中国ベンチャー、介護分野のデジタル化に注力

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高齢者の転倒をAIで検知 中国ベンチャー、介護分野のデジタル化に注力

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中国で高齢化が加速している。民政部のデータによると、中国の総人口に占める高齢者(60歳以上)の割合は2021年末に18.9%となり、2025年には20%を超える見込みだ。

中国の介護サービス市場は介護の人材と場所の需給不均衡という問題に直面している。これに対して中国政府は、介護産業の発展を促す政策を相次いで打ち出し、在宅介護を中心(90%)に、それを地域コミュニティのデイケア(6~7%)と介護施設(3~4%)で補うことを奨励してきた。一方で近年は中国の世帯当たり人員が徐々に減り、在宅介護に要する人力を確保することも困難になっている。そのため、介護の需給不均衡を解決するには他のやり方を探す必要がある。

この状況はハイテク製品が介護産業で普及するチャンスをもたらした。スマート介護産業ではさまざまな介護シーンに対応するスマートデバイスが開発され、人工知能(AI)やビッグデータの技術をベースに健康管理やデータ分析などのサービスを提供する企業が生まれた。

ToF技術とAIアルゴリズムで高齢者の転倒を検知

高齢者が見守りを必要とする場面において転倒予防が重視されている。中国疾病監視システムが発表したデータによると、中国では65歳以上の高齢者のケガによる死亡は転倒が最も多い。

「上海趨視藍城信息科技」(以下「趨視藍城」)は、ToF(赤外線を使った測距)レーダーとAIアルゴリズムをベースとする3Dスマート姿勢センサーの「小藍獅」シリーズを発表すると共に、AIとIoT(モノのインターネット)を組み合わせたAIoTプラットフォームを構築して、姿勢の注意喚起、健康データの管理・分析などのスマート見守りサービスを提供している。

同社は2022年に「趨視信息科技(Truth Vision)」と「藍城春風」の共同出資で設立された。AIビジョンを使った行動分析技術に特化し、その製品とソリューションは小売、セキュリティ、スマートコミュニティなど多くの分野で使われている。

藍城春風は不動産総合サービスを手掛ける「藍城集団(Blue Town)」の傘下企業で、藍城集団は不動産の開発と運営・管理で20年以上の経験を有する。

電子デバイスはToFセンサーを通じて、ある場面の環境・物体・人体の深度データ収集とリアルタイムの画像生成をサポートする。収集されたデータはAIアルゴリズムによって、距離と大きさの測定や動きの捕捉に使われる。ToFの深度データに基づいて構築されたAIアルゴリズムのエキスパートシステムと深層学習ネットワークは、転倒、座位、臥位、歩行など姿勢の正確な認識を可能にする。

趨視藍城のToFセンサーは最大で距離8メートル、解像度640×480ピクセルのデータ収集に対応する。同社の単義勇CEOは「データ収集の距離と解像度を上げることが重要だ。センサーモジュールの対応距離は2021年に6メートルだったが、22年には8~10メートルに伸びた。また、解像度はすでにVGAレベルに達し、ヒトの姿勢と動きを見分けられる」と話した。

姿勢認識の精度を上げるには、対応するAIアルゴリズムとAIモデルのサポートに加え、大量のデータでモデルを継続的に最適化していく必要がある。同社はこれまでに深層学習に使う大量のデータを蓄積し、成熟したモデルを持っている。

他のレーダーセンサーとの生成画像の比較
趨視藍城のToF-3Dセンサーによる生成画像

抱える課題

趨視藍城は、藍城集団と関連企業が有する不動産業界のリソースを生かし、CCRC(高齢者がケアサービスを受けながら暮らせるコミュニティ)や高齢者向け高級施設といった不動産プロジェクトで提携。今年は10件以上のプロジェクトを実施し5月に量産を実現して、約1万台の製品を顧客に納める計画だ。一方でいくつかの課題にも直面している。

まずは製品の価格が高いにもかかわらず、市場の支払意欲と購買力が低いことだ。単CEOによると、ToFデバイスはAIチップが搭載されているため、価格を一般的なレーダーセンサーと同じ水準まで下げるのが難しい。趨視藍城のデバイス価格は現在、1台当たり2000元(約3万8000円)となっている。通常はトイレ、寝室、リビングの3カ所に1台ずつ設置する必要があるため、1軒の住宅にかかるデバイス購入費は少なくとも6000元(約11万4000円)に上る。これは同社がCCRCや高齢者向け高級施設に参入した大きな理由の1つだという。今後は生産量が増えてコストを削減できれば、デバイスの価格が1台当たり1000元(約1万9000円)前後に下がる見通しだ。

また、現時点で趨視藍城の姿勢認識製品が対応するのは、介護の一部であるリアルタイムの見守りと即時フィードバックに過ぎない。それ以上の介護サービスとなると、専門の機関やスタッフの補助が必要だ。デバイスの導入が実際に介護者の需要減、介護の効率向上とコスト削減につながるかどうかも、大切な検討事項になるだろう。

(翻訳・大谷晶洋)

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