マイナス30度の極寒環境でも問題なし。中国発の除雪ロボット、面倒作業を完全代行

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

スタートアップ注目記事

マイナス30度の極寒環境でも問題なし。中国発の除雪ロボット、面倒作業を完全代行

7月1日より、これまで36Kr Japanのメディアで提供していた記事のうち、一部スタートアップ企業に関するニュースについては、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」の会員限定で提供します(初期段階では無料会員も対象とします)。まだ登録されていない方は、ぜひそちらをご利用ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

庭の手入れや除雪をするロボットを開発する「漢陽科技(Yarbo)」が、プレシリーズAで1億元(約19億円)以上を調達した。出資を主導した昊辰資本(STARLIGHT CAPITAL)以外に、シンガポールのZelos Venture Partners、庚辛資本中国(Glacier Capital China)、数人の投資家が出資に参加した。

2015年に設立された漢陽科技は、6年間で製品を第6世代にまでアップデートし、世界初の除雪ロボット「Snowbot」として製品化している。22年には庭の手入れ用ロボット「Yarbo」もリリースし、同年9月に米Kickstarterでクラウドファンディングを実施すると、合計345万ドル(約4億6000万円)を集め、消費者向けロボットとして過去最高の調達額を記録した。今年1月に開催された電子機器の見本市「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー) 2023」ではイノベーションアワードを受賞している。

米連邦道路局(FHWA)のデータによると、米国では国道の70%が降雪エリアにある。また英市場調査会社Euromonitorのデータでは、米国の1億2000万世帯のうち、8000万世帯が戸建て住まいだ。

マーケットとしての除雪を見ると、ガソリン式除雪機は米国で5000万台が普及済みだが、年200万台以上が売れている。1台1000ドル(約13万3000円)として計算すれば、米国では毎年20億ドル(約2700億円)の売り上げがあることになる。世界市場の規模を北米市場の2倍だと仮定すると、その規模は40億ドル(約5300億円)だ。

さらに除雪代行サービスに関しては、米市場調査会社IBISWorldのデータによると、2021年の世界市場は200億ドル(約2兆6700億円)規模。うち、一般家庭の利用が約30%にあたる60億ドル(約8000億円)を占める。つまり、一般家庭向けの除雪は、除雪機と除雪代行サービスを合わせて100億ドル(約1兆3000億円)クラスのマーケットになる。

戸建住宅に住むユーザーの場合、降雪期は車庫から公道に出るまでのアプローチを除雪しなければ車での外出はできない。さらに、米国50州のうち39州は除雪に関する条例を設けており、うち29州では規定の時間内に除雪をしなかった場合、罰金が課されたり刑事責任を問われたりする。

除雪問題を解消する方法は現状では2つ。除雪機を購入して自ら除雪をするか、業者に依頼して除雪してもらうかだ。

従来型の除雪機を使った除雪作業

しかし、これらの方法では完全に問題を解決することはできない。自ら除雪すると言っても零下10〜30℃の寒さの中、100キロ以上もの重さの除雪機を押して決められた時間内に除雪作業を終えるのは相当な肉体労働だ。安全面でも不安がある。

業者を頼んだ場合は高額な費用がかかるうえ、いつでも確実にサービスが受けられるわけではない。米シカゴ市の除雪業者の場合、利用料は年間2000ドル(約26万7000円)ほどかかるという。

これらの課題を踏まえ、Yarboは設立以来、6世代にわたるアップデートを続け、零下30℃の極寒環境でも問題なく稼働できるロボットを開発した。動力システム、運動能力、傾斜や段差など複雑な形状の地面への適応力、測位・ナビゲーション能力を備えるとともに、パワーや航続力、さまざまなタイプの積雪への対応力など、これまでクリアできなかった課題を克服している。

Yarboの歴代製品

Yarboの除雪ロボット「S1」の測位・ナビゲーション機能は、高精度測位システムのRTK(リアルタイムキネマティック)、ビジョンセンサー、慣性ナビゲーションシステム(INS)などを組み合わせたセンサーフュージョン技術を用い、誤差を数センチにとどめる。移動はキャタピラーを用い、さまざまな障害物を乗り越えながらどんな路面状況でも問題なく走行でき、傾斜30°程度の凍った地面でもスリップせず走行する。2ステージ式の除雪機構を採用しているため、約30センチの深さまで除雪でき、乾雪(粉雪)・湿雪(ぼたん雪)・圧雪(押し固まった雪)など異なる雪のタイプにも対応する。超低温環境でも急速充電が可能で、1回の充電で90分間稼働し、200平方メートルを除雪する。

Yarbo製品に搭載された測位技術

さらに、これまでの除雪作業は雪が止んでから行うものだったが、Yarboは現地気象局のAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)と連携しており、雪が降りだすと止む前から自動で除雪を開始する。

Yarboによると、除雪ロボットは新しい製品カテゴリーであるため、部品などのサプライチェーンがまだ完成していない。Yarboはまずそこから開拓を始め、製品開発、テスト、アップデートを重ね、6年かけて世界初の除雪ロボットとそのサプライチェーンを作り上げた。創業者の黄陽氏は、除雪ロボットはそれ自体が希少であることと、芝刈り機の閑散期を穴埋めできることから、販売業者との提携も取り付けやすいと述べた。

Yarboは現在米ニューヨーク、中国の深圳市にオフィスを設ける。コアメンバーは半導体製造装置メーカーASM、ドイツ航空宇宙センター、造園・建設機械メーカーのハクスバーナ、中国の通信機器大手ファーウェイなどの出身だ。

(翻訳・山下にか)

7月1日より、これまで36Kr Japanのメディアで提供していた記事のうち、一部スタートアップ企業に関するニュースについては、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」の会員限定で提供します(初期段階では無料会員も対象とします)。まだ登録されていない方は、ぜひそちらをご利用ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録