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中国の通信機器大手ファーウェイが、同社の自動車事業に関する方針を再び通知した。
創業者の任正非CEOが「ファーウェイは自動車は造らない」と、5年を有効期限とする署名付きの文書で発表した。さらに、車体にファーウェイのロゴを使用する際のデザイン上の扱いについても厳しい条件を提示している。
関係者によると、「華為(ファーウェイ)」あるいは「HUAWEI」の文字を車両の外観や宣伝に使わないよう、特に同社が自動車メーカー「賽力斯集団(SERES Group)」と共同で立ち上げた新エネルギー車ブランド「問界(AITO)」に「華為問界」「HUAWEI AITO」の名を使わないよう強調したという。
ファーウェイは2019年9月にインテリジェント自動車ソリューション事業部を設立し、自動車のインテリジェント化に必要な部品を提供していくとしていた。しかし、同社がそれまで携帯電話事業で収めてきた成功を鑑みて「実際は自動車製造に乗り出すのでは」とする憶測が後を絶たなかった。そこで任CEOは20年11月、文書を通じてこれを強く否定。さらに、自動車製造を進言し会社の経営に干渉する者には異動などの措置もとると記し、同文書の有効期限を3年と定めている。
21年になるとコンシューマー向け端末事業部を統括する余承東(リチャード・ユー)氏がインテリジェント自動車ソリューション事業部も率いることとなり、同氏が統括する2つの事業部が統合された。「ファーウェイが自動車製造へ」との憶測がここで再燃する。
ファーウェイの自動車関連事業は自動車メーカーとの提携内容によって3つに分けられる。
1つ目は車載OS「鴻蒙(Harmony OS)」やドメインコントローラーなど単純に部品を供給するもので、2つ目はEV関連技術をフルセットで揃えるソリューション「HI(ファーウェイ・インサイド)」を提供するものだ。HIの代表的な提携先は北京汽車集団(BAIC Group)のブランド「極狐(ARCFOX)」、長安汽車(Changan Automobile)のブランド「阿維塔(AVATR)」、広州汽車集団(GAC Group)のブランド「埃安(AION)」などだ。3つ目は自動車メーカーとの提携度合いが最も深い「華為智選(ファーウェイ・セレクション)」で、ファーウェイ側は車両の販売にも関与する。
これらのその後の進展を見ると、HI(ファーウェイ・インサイド)は壁に直面している。
HIを採用した北京汽車集団の車両は販売が振るわず、広州汽車集団は3月末にファーウェイとの協業を解除した。
余氏主導で打ち出された華為智選(ファーウェイ・セレクション)モデルでは、協業相手の賽力斯が瀕死状態から一気に形勢を立て直した。前出のブランド「問界(AITO)」は、月間販売台数が一時は1万台を超えている。この成功モデルをひな形として、ファーウェイは「江淮汽車(JAC)」や「奇瑞汽車(Chery)」など自動車メーカーとの提携を広げた。
部品供給とHIの2つの提携モデルでは、ファーウェイ側はあくまでサプライヤーの立ち位置にあるが、華為智選では完成車メーカーのパートナーとして、より提携先との結びつきを深くしている。製品コンセプトからコア部品の選定、販売・サービス体系までファーウェイがしっかりと参画するからだが、これが最も象徴的に現れているのが、ファーウェイの店舗で車両を販売する点だ。ファーウェイが製品、技術からブランディング、販路に至るまでメーカーを支援するこのビジネスモデルは注目に値する。自動車メーカーとしては、車両の開発と製造により集中できる。
今年に入り競争が激しさを増す自動車市場において、問界はシェアをさらに拡大するため、ファーウェイとの結びつきをより深くしていくようだ。3月8日にSNSに投稿されたキャッチコピーには、これまで使われていた「AITO問界」に替わって「HUAWEI問界」が使われていた。
憶測が広がる中、任CEOが今回出した通知はファーウェイにおける自動車事業の立ち位置を改めて表明したものに違いない。しかし、「ファーウェイは自動車は造らない」との文言が意味するところは、決して市場から強豪の一つが去ったということではない。ファーウェイの技術と運営能力に自動車メーカーの生産力が加わって、新たな連合が形成されようとしている。
(翻訳・山下にか)
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