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動物からヒトへの異種間臓器移植(異種移植)に注力する「啓函生物科技(QIHAN BIOTECH)」が、新たに2000万ドル(約21億6400万円)を超える資金を調達したことが分かった。出資したのは「招銀国際(CMB International)」と「聯想之星(Legend Star)」。同社は1年前にもシリーズAでセコイアキャピタル・チャイナなどから780万ドル(約8億4400万円)を調達している。
統計によれば、アメリカでは臓器の機能低下により毎日約330人が死亡しているという。中国では臓器障害を抱える患者が年間約150万人おり、そのうち30万人は臓器移植により回復が見込まれるものの、実際に移植を受けられるのはわずか1万人あまりにとどまる。臓器移植を必要とする患者に対し、臓器を提供してくれるドナーが圧倒的に不足しているためだ。
2017年創業の啓函生物は、最新のゲノム編集技術を駆使して、ヒト以外の動物から移植用の安全な細胞、組織、臓器を摘出し、ヒトへの異種移植を目指している。
同社の立ち上げに関わったのは、異種移植研究の第一人者であるハーバード大学のルーハン・ヤン(楊璐菡)博士と、著名な遺伝子学者であるハーバード大学のジョージ・チャーチ教授。2017年8月、彼らの率いる研究チームは、ゲノム編集技術CRISPR-Cas9と体細胞クローン技術を用いて、ブタ内在性レトロウイルス(PERV)を不活性化した世界初のブタを誕生させることに成功したと発表。これにより異種間の臓器移植に伴うウイルス感染の問題が解決できたため、異種移植の研究における里程標ともいうべき画期的な成果だと評価された。
啓函生物の姉妹企業である米eGenesis社も、楊璐菡氏とジョージ・チャーチ氏が設立した会社だ。2015年創業の同社は、CRISPR-Cas9を用いてヒトの体内でウイルス感染や拒絶反応を引き起こすブタの遺伝子情報を編集し、ブタからヒトへの異種移植の臨床応用を進めている。Cas9という酵素を用いたこの技術は、ガイド役のRNAによってゲノムの標的部位を特定し、DNAの切断や置換を行って遺伝子配列を改変することができる。啓函生物が設立されたことで、中国と米国とで連携して研究を行うことが一層容易になった。
ほかに異種移植の研究を行っている企業には、中国の「蓋蘭徳生物科技(Grand Life Science & Technology)」や「賽諾生物科技(Xeno Life Science)」、米「Synthetic Genomics(シンセティック・ジェノミクス)」などがある。
(翻訳・畠中裕子)
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