医療用大規模言語モデル「MedGPT」、中国企業が発表 問診・検査から正確な診断導く

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オンライン診療プラットフォームを運営する中国「医聯(Medlinker)」が5月25日、独自に開発した医療用大規模言語モデル「MedGPT」を発表した。Transformerアーキテクチャをベースに開発したもので、汎用型大規模言語モデルとは異なり、実際の医療現場で価値を発揮し、疾病の予防から診断・治療・リハビリまでの全プロセスをインテリジェント化する。

MedGPTプロジェクトの責任者である王磊氏によると、汎用型大規模言語モデルは医学的な問題を扱う際の正確性に欠けており、問診でも簡単に結論を出そうとする傾向があるという。しかし医療現場で使う以上、一致性や正確性は最低限守られなければならない。

そのため、MedGPTは簡単に診断を確定せず、何度も問診を繰り返して患者から十分な情報を聞き出したうえで診断プロセスに入る。「我々は大規模言語モデルに多くの判断材料を集めさせている。判断材料とは症状、病歴、検査などだ。大規模言語モデルは重要なデータや判断材料を集めて初めて、患者に対して検査を勧めたり診断やアドバイスを伝えたりすることができる」と王氏は述べる。

これを実現するため、医聯のMedGPTは大規模言語モデルの技術とエンジニアリング面の最適化技術、医学的一致性の検証技術を組み合わせた監督メカニズムを構築した。またモデルの微調整トレーニング段階で大勢の医者に参加してもらい、RLHF(人間からのフィードバックを使った強化学習)を実施して、疾病の特徴判断やパターン認識の能力を向上させている。「予想通りの回答が出ればそのまま採用し、そうでなければ再度回答させる」ことで医療の正確性を確保するという。さらに、AI診療と実際の現場のすり合わせを常に行う仕組みづくりをして、正確な診断につなげている。

しかし、仮診断の後に充分な検査データがなければ問診は続けられない。王氏によると、MedGPTではTransformerアーキテクチャが既存のさまざまな医療検査を統合してつくりあげたマルチモダリティ(異なる形式のデータを一元管理すること)を基に、問診が終わった後、必要な検査項目を患者に提示してさらに病状を明確にし、最終的な診断を経て治療計画を作成する。

その後、患者はオンライン病院を通じて処方薬を自宅に届けてもらえる。さらにMedGPTでは服薬指導と管理、定期診察・再診、リハビリ指導などがインテリジェント化されており、予防・診断・治療・リハビリまでの全プロセスを患者に提供できる。

王氏によると、MedGPTのプラグインソフトのプラットフォームでは、以下のようなものを揃えている。

1つ目は子どもの注意欠陥・多動性障害(ADHD)などに用いるデジタル治療のプラグイン。2つ目はテンセントの診断補助エンジン「騰訊覓影(Tencent Miying)」やアリババクラウド(阿里雲)の画像分析機能などサードパーティー製プラグインで、読影やレポート読解をサポートして治療に関するアドバイスを与える。3つ目は整形外科のリハビリ治療に用いられるプラグイン。プラットフォームは将来的にプラグインストアとして開放し、サードパーティー製のマルチモーダルなプラグインを多数揃えてていく予定だ。

MedGPTは医療AIの構築法「DIAE」を編み出した。Disease(疾病分類の網羅)、Intelligence(インテリジェント化)、Accuracy(正確性)、Efficiency(受診効率)の頭文字を取ったもので、この4つを物差しにしてプロダクトを構築・改良し、医療におけるMedGPTの価値を高め続けていく。

MedGPTは、1000億規模のパラメーター数を有し、事前トレーニング段階で20億以上もの医学文献のデータ、微調整トレーニング段階では800万本以上の構造化された臨床データを活用し、さらに100人以上の医師からのフィードバックを投入してRLHFを行うという。現在、MedGPTは国際疾病分類第10版(ICD10)に掲載される疾病の60%をカバーしている。加えて、デジタル医院がより多くの人の役に立つよう、よく見られる疾患に重点を置いた開発を進めていく。年内に80%の疾患に、2024年には600種類の疾患に対応できるようにする計画だ。

ただし、大規模言語モデルの公開は国の政策に厳格に従う必要がある。医療用となればなおさらのことで、現段階ではMedGPTは学術研究にのみ用いられている。王氏によると、極力早期の実用化を目指し、医聯では医学分野の専門家とともにAI診療の基準を構築中だ。年末には関連する臨床試験もスタートし、事前に大勢の被験者を募集するという。

(翻訳・山下にか)

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