CATLやBYDとの正面対決を回避、中国車載電池「国軒高科」が海外進出を加速

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ここ2年間で欧米や東南アジアでも自動車の電動化が加速する中、中国の車載電池メーカーは世界市場に照準を合わせ、相次いで海外進出を進めている。

中国の電池メーカー「国軒高科(Gotion High-Tech)」は4月、2022年通年と23年1~3月期の決算を発表した。それによると、22年の売上高は前年比122.59%増の230億5200万元(約4500億円)だった。うち海外は同464.76%増の29億8000万元(約590億円)で、大きなハイライトとなった。

中国の車載電池市場における同社のシェアは2022年が約4.5%の業界4位で、トップの寧徳時代(CATL)や2位の比亜迪(BYD)とは大きな差がある。一方、海外市場では大株主のフォルクスワーゲンを後ろ盾として、長期にわたり蓄積した経験をベースに国軒高科が一気に抜き去ることができるかもしれない。

2022年の中国車載電池搭載台数トップ10(画像:中国汽車動力電池産業創新聯盟)

国軒高科は現在、欧州、米国、アルゼンチン、インドネシア、ベトナムの5カ所に海外拠点を設ける計画を進めている。うちベトナムのハティンで生産能力5ギガワット時の電池工場第1期の建設を開始、独ゲッティンゲンの生産拠点は開所式を終え、注目の米国工場も着工を控えている。

同社は2022年、海外で新たに乗用車、商用車、エネルギー貯蔵などを含む企業15社以上の指定メーカーになったという。顧客にはインドのタタ自動車、ベトナムのVinFast、米国の自動車メーカー、中国の易捷特(eGT)などの完成車メーカーが含まれる。

大規模受注も獲得、米国工場が間もなく着工へ

国軒高科は2021年12月に米大手自動車メーカーと結んだ契約に基づき、23~28年に計200ギガワット時以上のリン酸鉄リチウムイオン電池を納品する見通しだ。この数字は国軒高科の22年生産量の2倍、出荷量の7倍に相当する。また、両社は米国に合弁会社を設立し、現地生産を進めることも計画している。

2022年8月に米国でインフレ抑制法(IRA)が成立したため、中国製の車載電池を搭載した新エネルギー車は補助金の対象外となった。法案の発表後、中国の電池メーカー数社が米国での工場建設計画を停止すると発表。大手のCATLも、顧客の米フォード・モーターが出資、自社が技術を提供するかたちで米国市場に参入する決定を迫られた。

こうした中、国軒高科の米国工場建設は比較的順調に進んでいる。昨年9月には、同社の米子会社「Gotion」がミシガン州グレートフォールズに24億ドル(約3400億円)を投じて電池工場を建設すると報じられた。2025~27年に欧米で急増が見込まれるEV需要に対応するため、米国で集中的に準備作業を進めている。

一部のアナリストは、フォルクスワーゲンを筆頭株主とするグローバルな株主構成が、米国工場建設を円滑に進める鍵になるとの見解を示した。また、国軒高科は生産能力を海外で構築するだけでなく、中国にある生産能力の一部を海外向けに振り分けている。例えば、江西省宜春市と広西チワン族自治区柳州市の拠点では、生産した製品の多くをベトナムのVinFastに輸出している。

国軒高科は事業の国際化に合わせ、2022年7月にグローバル預託証券(GDR)の発行を通じてスイス証券取引所に上場した。

海外事業が第二の成長曲線を描く

海外市場では新エネルギー車の普及率が低いため、成長性がより高いと言える。中国の新エネルギー車の普及率は2022年時点で28%と、世界平均の約10%を上回る。世界では自動車の電動化はゆっくりと進んでおり、将来的に車載電池の需要は膨らむ見通しだ。それを踏まえると、国軒高科の海外事業は今のところ売上高全体に占める比率は高くないが、長期的には第二の成長曲線を描き出す可能性がある。同社は25年までに世界のリチウムイオン電池生産能力を300ギガワット時に引き上げ、うち海外の生産能力を100ギガワット時に増やす計画だ。

海外のリチウムイオン電池市場は中国に比べてプレーヤーが少なく、競争も穏やかだ。国軒高科工程研究総院の蔡毅院長は、同社が中国での競争を通じてコスト管理など豊富な経験を蓄積してきたため、海外でも高い競争力を有していると説明した。

(翻訳・大谷晶洋)

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