AIを活用した産業用クラウドソフトウエアを開発する中国企業「三維家信息科技（3vjia Information Technology）」（以下、三維家）がこのほど、シリーズDで数億元（数十～百数十億円）を調達した。出資したのは国科投資（CAS Investment）、匯川技術（Inovance Technology）で、調達後の評価額は約6億ドル（約860億円）に達した。

三維家は2013年に設立され、住宅内装分野の産業用ソフトウエアにターゲットを絞り事業を展開している。クラウド3D設計、クラウド製造、コンピューター数値制御（CNC）システムの3つの製品カテゴリを相次いでリリースし、家具・設備など住宅内装関連の製造業向けに「クラウドベース」「AIベース」「一元化」のクラウドソフトウエア・ソリューションを提供している。

住宅設備の製造現場では設計と生産工程が分断されているため、設備メーカーは複数のソフトを行き来しながらレンダリングや発注などを完了しなければならなかった。また手作業のためミスも多く、コスト管理や業務効率の点でも効果的とは言いがたい。

業界のこうした課題を解決するため、三維家は「設計・製造一元化ソリューション」を打ち出した。1つのシステムでインテリジェント設計やレンダリング、見積もり、注文、分割発注などが全て可能になるほか、生産設備間のオンライン接続、スマート制御、加工データの標準化・汎用化を実現できる。これまでに著名企業を含む6000社以上がこのソリューションを導入している。

地方市場のオーダーメード対応メーカーや工場に向けた軽量型システムも開発した。統計によると、中国には住宅内装関連の中小企業や工場が数十万社あるという。

現時点で、三維家は1万7000のブランドと提携し、デザイナー500万人、販売店150万店と取引している。

AI技術の活用にも早くから着手していた。AIとビッグデータの研究と応用に特化した研究室を2018年に設立し、22年にはモバイル端末で使用するAI描画ツール「3D秀」を発表した。23年には3Dクラウド設計のAIデザイン版をリリースした。

現在、三維家は室内空間やオーダーメード家具などに特化した事前学習モデルを構築しており、1000万点規模の商品のデジタルデータセットと業界ナレッジグラフを備えている。例えば室内デザインやコーディネートを提案する場面で、店舗スタッフやデザイナーはAIベースのクラウド設計ソフトを利用し、高解像度かつ高品質の設計プランを短時間で作成できる。ワンクリックでシーンや商品、色を切り替えたり、イメージ画像やムービーを生成したりして、消費者の希望やアイデアをすぐに可視化して提示できる。製造現場でも、生産戦略の最適化やスマート生産計画、全自動生産ラインにAIを導入し、大規模なオーダーメードと製造の標準化を実現している。

海外進出にも意欲的だ。現在、三維家は米国やフランス、スペイン、インド、マレーシア、シンガポール、ベトナムなどに海外サービス事務所21カ所を設立し、欧州や東南アジアで重点的に事業を展開している。例えばマレーシアでは、同社のグローバル版デザインソフト「AiHouse」が約10％の市場シェアを獲得している。蔡志森CEOによると、クラウドベース、AIベースの産業用ソフトウエアに関して言えば、世界中が同じスタートラインに立っており、市場は極めて大きいという。同社は中国の産業用ソフトウエアを通じて世界の住宅内装関連産業を活性化し、中国ソフトウエアを世界の舞台に送り出すことを目指して力を尽くすとしている。

（翻訳・畠中裕子）

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