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電気自動車(EV)向けの充電設備ソリューションを提供する中国スタートアップ企業「EN+(驛普楽氏)」が、日本市場進出に向け動いている。
同社は2015年に深圳で設立され、昨年9月にはシリーズCで1000万ドル(約14億円)を超える資金調達を実施した。現在海外40カ国以上で事業を展開している注目のコンシューマー向けEV関連企業だ。
充電設備ソリューションと書いたが、具体的には充電スタンドをはじめとした直流・交流充電設備や、充電モジュール、運用プラットフォームシステムを提供している。同社のこれまでの歩みや日本での展開予定についてマーケティング責任者の曹麗氏に話を聞いた。
新製品のポータブル充電器がトレンドに
まず曹氏は直近の新製品について紹介した。今年に入ってから立て続けに同社は2kW直流ポータブル充電器と、7kW直流充電器と、20kW直流充電器を発表した。7kW~と、20kW~の製品は各種ネットワークが利用でき、商用利用が可能な小型製品となる。一方2kWの製品は家庭用の220V(中国)の交流電源からEV用の直流電源に変換して充電できる持ち運べる機器で、コンセントさえあればどこでもEVを充電できるというもの。辞書程度のサイズで軽く、 IP67レベルの防塵防水対応で低ノイズなのが特徴だ。
EN+のコンパクトな充電製品は、中国でも上海、深圳や北京などEVが特に普及している地域では充電には困らないが、地方の小都市や農村で利用するとなると充電インフラ不足でEV導入に二の足を踏む消費者も多くいよう。地方でのEV普及を促進する製品として、また都市部のEVオーナーが田舎で安心して運転ができる製品として、活躍することだろう。また「多くのEVがオンボードチャージャ(OBC)を採用しているため、それに合わせて新製品をリリースしています」と説明している。
欧米をはじめ海外市場で快挙を果たしたワケ
充電スタンド的な大きな製品から小型の製品までラインアップを揃えるEN+は海外市場で評価を得ている。曹氏によると、一例としてドイツやイギリスでは家庭用充電機器がよく売れている。それに加えて政府のEV普及政策で公共施設にEVスタンドを導入しようという動きから大出力の充電スタンドが売れ出しているという。
とはいえ欧州各国からみれば外国企業のEN+は実力は未知数のはずだ。どうやって信頼を得たのだろうか。まずは製品の品質については、自動車部品のグローバルな調達基準として採用する自動車産業品質マネジメントシステムの国際規格「IATF 16949」の認証を同社は受けたほか、民生用IoT機器に適用されるサイバーセキュリティに関する欧州規格「ETSI EN 303645」やEUの個人データやプライバシーの保護規定「GDPR」など各国の市場進出で必要な認証を多数取得している。
同社の海外進出の重要なポイントを曹氏は語る。「2016年には欧州市場に進出しました。欧州市場では価格面のメリットだけでなく、導入したユーザーの体験、つまり製品の性能や各種サービスについてのレビューにも非常に関心がもたれています。そのため欧州だけでなく各国の市場進出前に、その国の消費者の習慣に加え、法律・法規、ルールやネットワークセキュリティなどについても綿密な事前調査を行っています」。勢いで進出してトライアンドエラーを重ねるのではなく、しっかりとした市場リサーチをした上で進出しているわけだ。
続けて「進出国の市場や政策のニーズを把握したら、それに対してカスタマイズ・ローカライズした製品のリリースも含めて需要に応じて、サービスについても同様に対応しています」と説明した。2016年から世界展開をしているので、海外展開の経験をその分積み重ね、ノウハウとしているのも同社の強みだ。
「各国展開での経験を積み重ねており、絶えず市場調査をしているため、今後どの国、どの市場でニーズが発生するかを予想して行動できるようになりました」と曹氏は言う。「EN+は市場を牽引する先端の製品をリリースしています。つまりある国で新しいEV政策が推し進められるか、新しい需要の芽が出そうなときには、最初に市場が広がるタイミングで多くの顧客獲得を狙い、購入してよかったという体験をしてもらおうと考えています」
日本進出は、今がチャンス
EN+は世界各国の政府方針を見ながら進出し、日本はこれからがチャンスだと考え、日本での展開を進めている。つまり、日本のEV市場は、これから来るだろうと同社は予測しているわけだ。「日本政府のEVについての政策の動きがありますし、また日本の自動車メーカーにも動きがみられます。もちろん世界的なEVやCO2削減トレンドの中で、日本においてもEV化トレンドは避けられず、普及は時間の問題と考えています」。日本市場でも最初に充電スタンドのパイをとろうとしている。
日本進出の進捗については「日本で製品を展開するために一部パートナーと提携して認証を通している段階で、認証を取得すれば販売は可能になります」という状況だ。ただ同社が直接販売していくのではなく、日本での代理店やパートナー企業を増やしていくという。曹氏は「まだ詳しくは言えないのですが、年末にも日本のニーズに応えるある製品をリリースする予定です」と言う。日本の市場にあわせたEV充電機器が出るようで、その品質はもちろんコスパにも期待したい。
※36Kr Japanでは、日本進出に意欲の高い中国スタートアップ企業にクローズアップしています。この度、独自に募集した日本市場に関心ある100社近くの企業の中から、注目すべきスタートアップを厳選し、今年5月にオンラインにてピッチイベントを開催しました。
今回の特集で紹介する企業は、日本のパートナーとの積極的な連携を望んでいます。今後、日中間のオープンイノベーションや日中協業の促進のため、36Kr Japanは継続的にイベントを行いますので、ぜひご注目ください。
(作者:山谷剛史)
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