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自動車と同様、航空機も将来的に電動化が進むと見られている。
既存の航空機はいずれも航空燃料を動力源としているが、航空燃料は航空各社にとって運営コストの最大の重しになっているほか、廃気による環境汚染問題が大きな悩みの種だ。これを受け、スウェーデン政府が2030年までに国内路線で化石燃料ゼロ化を目指しているほか、世界の大手航空機メーカー各社が航空機の電動化に着目している。
米ボーイング社は2017年、電動航空機のスタートアップ「Zunum Aero(ズナム・エアロ)」に出資。仏エアバス社も、独シーメンスなどとの共同プロジェクトでハイブリッド電動航空機の開発に着手した。
さらに、同分野では2016年に米カリフォルニア州で設立されたスタートアップ「Ampaire」も要注目の存在だ。2018年には中国の杭州市にも支社を設立。中国やアジア市場の開拓をすでに視野に入れている。
同社は既存の航空機を改造し、通常エンジンの一部を自社開発の電動機に切り替える形式でハイブリッド機を開発している。初機種の「Ampaire EEL」はすでに試験飛行を成功させており、116機を受注済みだ。同機はセスナ社製の6人乗り小型機「377スカイマスター」をベースとしている。内燃機関と電動モーターによるパラレル方式ハイブリッドでエネルギー効率を大幅に上げ、航続距離320キロの範囲内なら燃料コストの75%を削減できる。電動航空機の利点はそれだけではない。環境にやさしく、騒音を抑えた飛行が可能になり、維持費も大幅に抑えられる。
Ampaireの共同創業者でCTOのCory Combs氏は同社のコアコンピタンスについて、「電動航空機を開発する過程は、内燃機関を電動機に交換すれば済むという単純なものではない。機体内部の各システムとスムーズに連動させ、各部品やシステムの効率を最大限に引き上げなければならない。Ampaire社製のパワートレインは汎用性に優れ、多くの既存機や新型機にも対応できる」と述べる。同社の採用するパラレル方式ハイブリッドシステムは、既存のバッテリー技術の開発にも応用できるほか、燃費を最大限に圧縮すると同時にバッテリーの軽量化も実現し、関連機関が求める非常用予備蓄電の条件も満たすという。
同社の技術力を支えているのは優秀な人材だ。Ampaireの創業メンバーには新エネルギー車や航空分野のエキスパートが揃う。
共同創業者兼CEOのKevin Noertker氏は、米軍事企業ノースロップ・グラマン出身。航空機や衛星技術の開発を手がけてきたほか、R&Dプロジェクトのマネジメントでも豊富な経験を有する。共同創業者兼CTOのCory Combs氏も同じくノースロップ・グラマン出身で、新型航空機の開発に従事してきた。SVP(シニア・バイス・プレジデント)のSusan Ying氏は、ボーイング社のリサーチ&テクノロジー部門でディレクターを務めたほか、中国の民間航空機メーカー「中国商用飛機(COMAC)」でCIO(最高情報責任者)を務めた人物だ。同じくSVPのPeter Savagian氏は米ゼネラルモーターズ電動自動車(EV)部門の元主席エンジニアで、「中国のテスラ」とも称されるEVベンチャー「ファラデー・フューチャー」のSVPも務め、電動システムに造詣が深い。
同社が将来的に想定する収益源は、航空機の販売およびアフターサービス、バッテリー交換や航空用電子機器を含む更新サービスなどだ。
同社は現在、300キロ以内の短距離飛行に対応する6人乗りの小型機を手がけているが、徐々に大型機への移行も予定している。電動航空機の商用化にあたっては、地上試験、飛行試験、部品・機体の認証取得など多くの段階を踏む必要があるが、すでに飛行試験まで成功したAmpaire EEL機は年内にバージョンアップを完了させ、ハワイのモクレレ航空の商用飛行ルートを使用した飛行試験に入る予定。また2021年に米連邦航空局(FAA)の認可を得て商用化へ移すのが目標だ。
スイス最大の銀行UBSの推算では、世界のハイブリッド式電動航空機市場はおよそ1780億ドル(約19兆円)規模に達している。米航空会社ケープ・エアーが米航空宇宙局(NASA)に提出した報告書によると、9人乗りの航空機だけをとっても今後20年間で1万1000機が交換時期を迎えるという。1機あたりの平均額が500万ドル(約5億3000円)とすれば、概算でも55億ドル(約5900億円)の需要が生まれることになる。UBSの予想では、50~70人乗りの電動ハイブリッド機の実用化は早くても2028年以降になるという。
(翻訳・愛玉)
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