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世界的に電気自動車(EV)の普及が進む中、中東諸国も新エネルギーへの転換に舵を切った。今年6月だけでも、3カ国の投資会社が中国EVメーカーへの出資を発表した。
アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ首長国政府系ファンドであるCYVN ホールディングスは、「蔚来汽車(NIO)」に約11億ドル(約1600億円)の戦略的投資を実施すると明らかにした。
サウジアラビア投資省は、「華人運通(Human Horizons)」に56億ドル(約7900億円)を出資し、同社が手掛ける高級EVブランド「HiPhi(高合)」の開発・製造・マーケティングを共同で進めていくという。
ヨルダン最大の民間企業であるManaseer Group は、EVスポーツカーで知られる「前途汽車(Qiantu Motor)」の親会社「長城華冠(CH-AUTO Technology)」と戦略的パートナーシップを締結した。
国際エネルギー機関(IEA)の統計によると、2022年の世界の新エネルギー車(NEV)販売台数は1000万台余りで、新車販売台数の14%を占めた。道路交通用の石油需要は25年ごろにピークを迎え、30年にはEV転換により削減される石油使用量が1日当たり500万バレルに達するとの試算もある。石油収入に依存してきた中東諸国も、新たな発展の道を急いで切り開く必要に迫られている。
中東最大の自動車消費国、サウジアラビアの統計局が発表したデータによると、同国の22年の石油収入は前年比50%増の約2245億ドル(約32兆円)で、収入全体の68.2%を占めた。しかし、新エネルギーへの転換が世界各国で加速すれば、この成長にもストップがかかるだろう。
サウジアラビアは2016年、脱石油の経済改革構想「ビジョン2030」を発表し、30年までに石油以外の輸出が国内総生産(GDP)に占める割合を従来の16%から50%に高める計画を明らかにしている。また、首都リヤドを走る自動車の30%をNEVにする計画だという。政府系ファンドによるNEVメーカーへの投資も重視しており、世界最大級の政府系ファンドとして知られるパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)がすでに、米テスラや米ルーシッド・モーターズなどに出資している。
UAEも「エネルギー戦略2050」を推進し、50年までにエネルギー構造を変革してクリーンエネルギーの割合を50%に高める計画だ。UAEではすでに、首都ドバイに25カ所、アブダビ首長国に30カ所のNEV向け充電ステーションが設置されているという。
中東諸国では、従来は日本のトヨタ自動車や日産自動車、韓国の現代自動車や同社傘下の起亜自動車(Kia Motors)が主流だったが、現在は長安汽車(Changan Automobile)や上海汽車集団傘下の「MG(名爵)」、奇瑞汽車(Chery Automobile)、吉利汽車(Geely Automobile)といった中国メーカーが市場を席巻している。
世界をリードする中国のNEV産業は、サプライチェーン全体で先発優位性を獲得しており、世界最大規模の充電・バッテリー交換ネットワークを構築している。これらは中東諸国のエネルギー転換でも大きな助けになるだろう。中国のNEVメーカーに投資することで、中東諸国もその技術や市場におけるノウハウを獲得することが期待できる。NIOのバッテリー交換技術の可能性にも注目が集まっている。
作者:「財経汽車(WeChat公式ID:caijingqiche)、陳亮・郭宇・王静儀
(翻訳・編集:田村広子)
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