中国新消費時代 インターネット発の新型消費をけん引する有望企業の手法とは

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

スタートアップ特集注目記事

中国新消費時代 インターネット発の新型消費をけん引する有望企業の手法とは

7月1日より、これまで36Kr Japanのメディアで提供していた記事のうち、一部スタートアップ企業に関するニュースについては、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」の会員限定で提供します(初期段階では無料会員も対象とします)。まだ登録されていない方は、ぜひそちらをご利用ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

中国では消費構造が急速に変化している。消費者層の変化に伴い、2018年ごろから小売りの新業態が次々と登場した。その特徴の一つは、販路開拓がインターネット経由になっていること。SNS「WeChat(微信)」、ライブ配信「淘宝直播(タオバオライブ)」、短編動画アプリ「TikTok(抖音)」、ソーシャルコマースアプリ「小紅書(RED)」など多様なメディアを足がかりに多くの新ブランドが成長を続けている。もう一つの特徴は、特定の層をターゲットにしたニッチブランドが活況だということ。現代においては、コカ・コーラのように多くの消費者に支持される最大公約数的なブランドはもう誕生しないということだ。

新型業態を代表するブランド

このような新業態を代表する企業は、米国では「Casper」(マットレス)、「Rebbl」(オーガニック飲料)、「Allbirds」(スニーカー)などだ。中国では「完美日記(PERFECT DIARY)」(化粧品)、「元気森林(GENKI FOREST)」(健康ドリンク)、「HFP」(スキンケア)、「luckincoffee」(コーヒーチェーン)などが挙げられる。

これらの企業が注目され、資金が集まり、急速に成長した理由や、その背後にある「インターネット的思考」、「データ運営能力」について掘り下げてみたい。

新型ブランドを支持する消費者たち

変化はまず、人から始まっている。新しい消費者層は、以下のような商機を生んだ。

■特定分野の成長:あるブランドが成功するには、その取扱商品がヒットしなければならない。商品がヒットするには、その商品ジャンルを支持する消費者の増加が条件の一つとなる。中国で現在ブームとなっている「国産コスメ」は典型的な一例で、化粧品の消費者層が若年化した結果、彼らが自国ブランドの長所を見直したことでヒットした。また、未婚者や独居世帯が増えたことがペットブームにつながっている。

■既存ブランドの細分化、ローカル化:大手ブランドが開拓した市場を土台として、大手ではカバーしきれない少数派の需要を満たして成長していくブランドも多い。最大公約数的な商品では満たされない消費者は往々にして一定数存在するからだ。

たとえば、女性向け下着ブランド「NEIWAI(内外)」が主力商品として手がけるノンワイヤー製品は、もともと大手ブランドが取り扱う品目の一つにすぎなかった。NEIWAIはそれに特化することで、ブランドの特性を際立たせている。

自社にしかない特別な技術力でもない限り、大多数のブランドはレッドオーシャンで戦っていかなければならない。コンテンツ戦略やユーザーコミュニティー形成、口コミの拡散など多様な切り口を持ち、工夫していかなければ勝ち抜くことはできない。具体的には以下のような思考が必要だ。

■切り口は小さくてもよい
市場全体から見たらごく少数派の需要にしか応えられない形であっても、消費者に印象付けるためには一つの突出した個性を見つけるべきだ。

■自社のカルチャーを徹底的にアピールする
新しい消費者群を掘り起こすためには、彼らにブランドとの一体感を実感させなければならない。個人の感性や価値観が消費の意思決定基準になった現在、消費行動は自己表現の手段になっているからだ。例えば、Allbirdsのスニーカーを購入することは、ブランドが掲げるエコロジーの理念に賛同したことを表す。

■コアユーザーを見つける
口コミを拡散してくれる熱心な支持者を見つけることも重要だ。

米Rebblは、大手食品スーパー「ホールフーズ・マーケット」で商品の取り扱いが始まる前から、コアユーザーを集めたコミュニティを活用してプロモーションを行っていた。コミュニティのメンバーたちに共通認識を醸成し、絆を深めていったのだ。結果、彼らが商品理念の伝達役になった。

拡散と露出の新手法

マーケティング戦略の「4つのP(製品、価格、流通、販促)」はよく知られているが、SNSやEコマースの台頭によって、「流通」「販促」が消費者に届く仕組みは変わってきた。購買意欲をかき立てるのは、UGC(ユーザー生成コンテンツ)による部分が大きくなってきている。具体的には、以下のようなアプローチだ。

■マーケティング経路を小刻みに変更する
米マットレスブランドCasperで北米地区のマーケティング分析を担当する人物は、「オンラインでの販促が頭打ちになった時点で、我々は戦略の軸足をオフラインに移した。多くの新業態が目にも留めなかった地下鉄構内で広告を打ったところ、一定の効果を生んだ。しかし、多くのブランドがこれに追随する頃には、我々は別の媒体を探しはじめている」と述べる。

同社はその時々の状況に合わせて新しいマーケティング経路を開拓している。そのために、マーケティング予算の5~20%を割いているという。

■適切なチャネルを選択する
適切な消費者に届くようにするために、適切なチャネルを選ぶことも重要だ。

中国の健康飲料ブランド元気森林は、まずオフラインからプロモーションを展開した。これはターゲットユーザーの属性と深く関係する。健康意識が高く、運動を生活に取り入れており、食品を購入する際には必ずパッケージの裏側を見て成分やカロリーを確認するような人々は、一定以上の経済力と学歴を持つと推測される。そのため、同社はまず1~2級都市のコンビニを中心に展開したという。

■商品自体に宣伝効果を持たせる
商品自体に宣伝効果を持たせるなど、認知度が自然に広まっていく工夫も必要だ。最も直接的な手法でいえば、パッケージデザインが挙げられる。

清涼飲料水ブランド「漢口二廠(HANKOW ER CHANG)」は、PR向けの話題商品とレギュラー商品を分けている。SNSで自然に露出、拡散していく仕掛けを施した商品、特段の宣伝を行わなくても長く支持される商品の二本立てで成長を狙う。

テック企業と同様のデータ運営

米国では近年、メーカーと消費者を直接つなぎ、中間業者を省く「DTC (Direct-to-Consumer)」という手法が出現している。自社サイトや直営店舗を通じて顧客へ商品を直接届ける方法だが、この手法のメリットは単なる販売上のものにとどまらない。最も重要なのは、顧客に直接コンタクトをとれることで、顧客の生の声をすぐに受け取れる点にある。

中国ではなかなか根付かない手法とはいえ、一種の方法論として参考にする価値はある。具体的には以下のような思考だ。

■商品の頻繁な改良
いわゆる「AARRRモデル(顧客獲得~活性化~継続~紹介~収益)」のプロセスにおいて、顧客に継続利用を促すことは特に重要である。

米スニーカーブランドAllbirdsは、テック企業の手法と同様、顧客から得られたデータをすぐさま商品に反映している。単純に「短時間で」反映するということではない。同社は正式開業前の14カ月間、公式サイトにたった一つの商品しか掲載していなかった。素材やデザインに関する顧客の真摯な意見を収集するのが狙いだった。

商品生産においては、小ロット生産を継続している。顧客の声を頻繁に商品に取り入れるためだ。結果、同社は創業わずか3年でユニコーン企業に成長している。

Allbirds

■グロースハックの勘所

顧客データの運営で事業を成功に導いた好例は、コーヒーチェーンluckin coffee(瑞幸咖啡)だ。その核心にあるのは、顧客を獲得した「後」の戦略だ。クーポン券の発行によって、確実に購買~リピートにつなげている。

多くの企業は顧客獲得までは達成しても、その後が続かない例が多い。その点、luckin coffeeは顧客に配布するクーポン券でもひと工夫している。購入頻度やよく利用するメニューなど顧客の利用履歴に基づき、異なる種類のクーポン券を配布するのだ。これはDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)のなせる業だ。同社のリピート率は54%に達している。テイクアウト専門店に至っては、リピート率は91.3%にもなるという。
(翻訳・愛玉)

7月1日より、これまで36Kr Japanのメディアで提供していた記事のうち、一部スタートアップ企業に関するニュースについては、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」の会員限定で提供します(初期段階では無料会員も対象とします)。まだ登録されていない方は、ぜひそちらをご利用ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録