中国AIチップ「壁仞科技」、創業4年で1000億円調達 独走するNVIDIAを追いかける

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中国AIチップ「壁仞科技」、創業4年で1000億円調達 独走するNVIDIAを追いかける

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ChatGPTの爆発的な人気でAIチップが注目を集めるなか、AIチップメーカー「壁仞智能科技(Biren Technology)」(以下、壁仞科技)が年内に香港でのIPOを目指していると報道された。

設立からわずか4年で調達額は50億元超

創業者の張文氏はハーバード大学で博士号を取得し、かつてAI大手のセンスタイム(商湯科技)で総裁を務めたことがある。中国の半導体産業が発展する機運を感じとって業界への参入を決意、2019年に上海で壁仞科技を創業して中国産AIチップの開発に取り組んできた。

壁仞科技創業者兼会長の張文CEO(同社SNSアカウントより)

設立後は立て続けに資金を調達し、2年を経ずに累計額は47億元(約950億円)に達した。これは中国のチップ関連スタートアップ企業の調達額としては最高記録だ。同社はこれまでに総額50億元(約1000億円)以上を調達している。

同社の開発チームは国内外のチップやクラウドコンピューティング分野における中心的な専門家や研究者で構成され、GPUやDSA(ドメイン特化アーキテクチャ)などの分野で技術を蓄積してきたという。また、上海交通大学、復旦大学とともに共同研究室を立ち上げたり、清華大学ともプロジェクト研究で提携したりしている。

公式サイトによると、同社は2021年9月にGPUの生産ラインを稼働、22年3月にGPGPU(汎用計算向けGPU)のテストに成功し、同年8月に初めてGPGPUチップを発表した。国産初の高性能GPGPU「壁砺(BIREN)」シリーズはすでに量産が始まっている。

NVIDIAの背中はまだ遠く

壁仞科技は独自の汎用コンピューティングシステムの開発と高効率のソフト・ハードウェアプラットフォーム構築に注力し、インテリジェントコンピューティング分野で一体型のソリューションを提供している。製品にはBR100シリーズのチップ「壁砺100P」、「壁砺104」シリーズなどがある。

2022年9月、GPGPUチップ「BR104」が初めてAIベンチマークテスト「MLPerf」に参加し、データセンター推論の自然言語理解と画像分類の2つにおいて「available system(購入、レンタル可能)」の評価を獲得、シングルカード性能で世界一の成績を収めた。特に自然言語処理モデル「BERT」使用時には、NVIDIAの高性能GPU「A100」の1.58倍のパフォーマンスを示した。より高性能のBR100はすでに実用化に向け動き始めている。

「壁砺100P」(公式サイトより)

AIチップはGPU、FPGA(書き換え可能なIC)、ASIC(特定用途向けIC)、脳型チップに分かれており、現在AIの演算処理には主にGPUが選ばれている。GPUはその並列処理能力によって演算効率を大幅に向上させ、AIアルゴリズムの訓練や推論の時間を大幅に短縮し、AI時代の演算処理の主力となった。あるデータによると、中国のAIチップ市場ではGPUがFPGAやASICよりはるかに多く、9割近くを占めている。

GPU世界市場のシェア争いでは米半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)が圧倒的な力を見せており、世界中で進められているAI大規模言語モデルの訓練にはほぼNVIDIAのGPUが使われている。コンピューターグラフィックス分野の調査会社Jon Peddie Researchによると、2022年末時点でNVIDIAは独立型GPUの市場で84%のシェアを持ち、トップに立っている。

GPUの世界市場の主要メーカーには、NVIDIA以外にインテルやAMDがある。中国国内では壁仞科技のほか、「景嘉微(JingJia Micro)」「寒武紀(Cambricon)」などの上場企業や「摩爾線程(Morret Threads)」など優秀な若手企業があるが、NVIDIAのような世界的大手企業からは大きく水をあけられている。

理由のひとつに、中国のGPUメーカーは創業から日が浅く、短期間で製品を検証し量産体制を整えなくてはならないという問題がある。しかも高性能な製品は少なく、中国メーカーのチップが特定の性能ではNVIDIAを超えていても汎用性という面ではまだまだ及ばない。

加えて、現在多くの企業がNVIDIAのチップを使っているため、中国産チップにシフトする際にエコシステムの移行が必要になるという問題もある。AIの訓練に使われているGPUの市場はほぼNVIDIAに独占されているため、多くの企業ではNVIDIAが開発した演算プラットフォーム「CUDA」のプログラムでコードを書いている。もし新しいエコシステムに移行するとなると、大量のコードを書き換える必要があり、極めて多くの時間とコストを費やすことになる。

AIチップは資金と技術の両方が求められる分野だ。事業を大きくするには、研究を進めるための専門的人材を集めるだけでなく大量の資金投入が必要になる。多額の研究費をつぎ込んでも、ビジネスモデルが成熟していなかったり、研究成果の実用化がうまくいかなかったりすれば、利益をあげるのは難しい。寒武紀は研究開発費が膨らんだなどの理由で2023年1~3月期の決算は大幅な赤字となった。

米国の制裁により海外からの高性能チップの供給が制限されるなか、中国のGPUメーカーには発展のチャンスがあるとはいえ、課題も山積している。

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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