国産車からの需要増を見込み、エアサス制御装置の中国ベンチャーが急成長

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自動車のエアーサスペンションに関するソリューションを開発する「上海時駕科技(SDRIVE)」が、このほどプレシリーズA+で数千万元(数億〜十数億円)を調達した。出資を主導したのは科興科創投資、堅木投資(SOLID WOOD INVESTMENT)、諾延資本(NUO YAN CAPITAL)。

時駕科技は2021年9月に設立され、主にエアーサスペンションシステムのコア部品やソフトウェア、ハードウェア、システムソリューションの開発・生産・販売に従事する。同社の資金調達は3回目で、これまでに累計約1億元(約20億円)を調達してきた。今回調達した資金は主に同社の第2世代製品である集積型エアーサスペンション制御ユニット「SDRIVE ONE BOX」のマーケティングと量産に充てられる。

サスペンションとは車体と車輪をつなぐ装置で、路面の起伏からの衝撃をやわらげ、車輪で生じる振動を吸収することで快適な乗り心地を保つものだ。エアーサスペンションは空気圧を利用した空気バネで車高やバネの硬さを調節する。従来のサスペンションに比べて構造が複雑でコストもかかるため、これまでは一部の高級車にしか搭載されなかった。

華安証券(HuaAn Securities)の調査レポートによると、中国のエアーサスペンション普及率は2023年上半期時点で3.3%となり、前年の2.7%からは伸びている。一方の欧米市場では、エアーサスペンション搭載の乗用車はすでに14.5%を占めている。この割合は中国でも25年までに15%に達すると予想されている。

乗用車のエアサスペンションは空気バネ、ダンパー、加速度センサー、サスペンション制御装置、エアタンク、コンプレッサー、流量調整弁、車高センサーなどの部品で構成される。現時点で空気バネ、ダンパー、制御装置などコア部品の多くは中国国内にサプライヤーが存在する。

これらのコア部品の国産化が進み、エアーサスペンションを搭載する国産車が増えるにつれ、エアーサスペンションにかかるコストは2020年以前の1万元(約20万円)以上から約8000元(約16万円)へと目に見えて下がった。

時駕科技は中国で最も早くエアーサスペンション産業に参入した1社だ。主力製品はエアーサスペンションの電子制御ユニットで、すでに第2世代製品が開発されている。初代製品は空気バネ、マルチチャンバー型の空気バネ、半自動ダンパー、磁気粘性流体ダンパーで構成されるもので、第2世代製品は前述のSDRIVE ONE BOXだ。

創業者の烏偉民氏によると、第2世代製品のSDRIVE ONE BOXはコンプレッサー、電磁バルブ、制御装置などエアーサスペンションのコア部品を集約した製品だ。統合型設計を採用することで大幅にコストを下げたほか、ソフトウェアとハードウェアを分離し、フレキシブルかつオープンなインターフェースによって次世代型E/Eアーキテクチャーにも対応可能になった。SDRIVE ONE BOXは初代製品に比べ、重量や占有スペース、稼働音などが改善し、性能全体のパフォーマンスが向上したという。

紹介によると、SDRIVE ONE BOXは来年に量産と納品に移る予定で、受注がすでに始まっている。年間生産能力50万セットの生産ラインも完成している。

年間50万セットを生産できる時駕科技の自動化生産ライン

烏氏は、ステアリングや制動などの分野と比べ、サスペンションの技術はまだ向上の余地があり、これからも全自動化、デジタル化、インテリジェント化に向かって進化していくだろうとの見方を示す。「サスペンションは人体でいう四肢に相当する部分で、これにもし『耳と目』が加われば、より広い範囲の音を拾い、より遠くまで見通せるようになって、フィードフォワード制御(自動制御の一種)が実現する」と述べる。

自動車のインテリジェント化が進む中、自動車メーカーも車載ソフトウェア開発への熱量を増している。蔚来汽車(NIO)、理想汽車(Li Auto)、小鵬汽車(Xpeng Motors)などの新興メーカーは自社開発事業のかなりの部分をソフトウェア分野に集中させており、サプライヤーにとって決して有利な状況ではない。

しかし、烏氏の考えでは乗用車へのエアーサスペンションの普及率が上がるにつれ、国内自動車メーカーはコスト削減をより切実に求めるようになる。国内のサプライヤーは大手とは異なり、ソフトウェアとハードウェアのデカップリングなど柔軟で臨機応変な対応ができるため、その点が競争力やチャンスになると見ている。

(翻訳・山下にか)

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