プライバシー法とアマゾンの猛追 グーグルが直面する難題

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グーグルの売上高の85%を占める広告収入が、米国カリフォルニア州消費者プライバシー法(以下「CCPA」)によって規制される可能性がある。

プライバシーの保護に関して、欧州は米国より先行しており、カリフォルニア州は米国のほかの州より先行している。

カリフォルニア州の草案が可決されれば、ほかの州のプライバシー法でも参考とされ、ひいては米国全国の法律の基準になる可能性がある。

グーグルは、不利な条項の排除ないし草案の否決のためにロビー活動を展開中で、同社が求めているのは、グーグルなどの企業がユーザーのデータを分析し、共有することを認め、経営活動を法適用の例外にすることだ。これが実現できれば、ユーザーが情報の削除を求めても、企業はデータを利用することができる。

課題に直面する広告業務

グーグルの課題は、EUと米国の規制だけではない。より大きな難題はアマゾンとフェイスブックの成長だ。挑戦者の存在により、グーグルが広告業務の調整を余儀なくされるリスクが大きく高まっている。

グーグルの持株会社、Alphabetの2019年度第2四半期の財務データによると、当該四半期の広告収入は326億ドル(約3兆5000億円)で、昨年同時期の280億ドル(約3兆200億円)を上回った。

広告収入は4四半期ぶりに対前期比で上昇したことになる。2018年第2四半期から2019年第1四半期まで、グーグルの広告収入は4四半期連続で前期を下回っていた。今年の第1四半期の広告収入は307億ドル(3兆3000億円)で、対前年同期比15.31%増加したが、伸び率は昨年の4四半期いずれよりも低かった。

アマゾンがグーグルから広告主を奪い取っている。今年4月、ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、大手広告代理店のWPP、オムニコム・グループが、グーグル・ショッピング広告の予算をアマゾンに移したという。理由は簡単で、アマゾンの方が消費行動により直結するからだ。研究機関Jumpshotによれば、商品を探す人の54%が、アマゾンで直接検索するという。

当然ながら、アマゾンの主要業務は広告ではない。今年第2四半期、アマゾンの広告収入は30億ドル(約3000億円)しかなく、グーグルとは文字通り桁違いだ。しかし、アマゾンの第2四半期の広告収入は37%伸び、フェイスブックの28%、グーグルの16%をともに上回った。

グーグルの2つの顔

グーグルは冒頭のCCPAによる規制を回避しようと、カリフォルニア州政府に対しロビー活動を展開している。この情報は、ブルームバーグ社が交渉に詳しい関係者から入手したものだ。グーグルおよび持株会社のAlphabetはロビー活動を公式に認めていない。公の場では、グーグルはむしろプライバシー法の制定に賛意を表明し、ユーザーのプライバシーを大事にしているというイメージを作ることに腐心している。

2018年12月、米国会の質問に対し、グーグルのCEO、サンダー・ピチャイ氏は、プライバシー分野で「持続的に努力している」と話し、すでに施行されたEUの厳しいプライバシー法「一般データ保護規則」(以下「GDPR」)を、「熟慮された法律」だと高く評価した。

しかし、実際にグーグルは、GDPRの施行を全力で阻止しようとしていた。2012年1月25日、グーグル、アマゾン、フェイスブックを中心とする米国の大手IT企業が強力なロビー団体を作り、欧州議会本部があるブリュッセルで長期に渡るロビー活動を行った。

一方、米国会では、グーグルは真逆な態度を取っている。

ピチャイ氏は国会議員に対し、同社はユーザーのプライバシー保護に「非常に真剣」で、「どのような情報が共有されるか、ユーザーには選ぶ権利がある」と話した。それと同時に、グーグルのアプリやアンドロイドOSがユーザーの位置情報を集めていることも認めた。

今年に入り、グーグルはプライバシー保護により前向きに取り組んでいるように見える。5月のグーグル開発者大会において、プライバシーは最も多く言及されたキーワードとなった。グーグルはより多くの個人データ管理ツールのユーザーへの提供、データトラッキングの権限の制限、個人ではなく集団のデータの収集などを約束した。

しかし、これらの約束をCCPAの規制と比べた場合、小さな変化でしかないということがわかる。グーグルの態度の統一性のなさは、同社のビジネスモデルによるものだ。売上高の85%を広告収入が占めているため、データを使ったマーケティングを制限すれば、企業のキャッシュフローに直撃する。

それでも、グーグルは変わらなければならない。GDPRの施行から8ヶ月、グーグルは最初の処分を通達され、初めてGDPRにより罰金を課された米国大手企業となった。

ユーザーのデータにもとづく広告は、グーグルに多くのトラブルをもたらしている。同社は変わらなければならないが、85%の売上高を貢献する主幹業務であるがゆえに、大掛かりな手術になるだろう。グーグルが最良の解決案を見つけるまで、2つの顔の状態が続くと思われる。
(翻訳:小六)

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