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大規模言語モデルを開発する「智譜AI(Zhipu AI)」がこのほどシリーズB-4で資金調達を実施した。テンセント、アリババの戦略投資部門など複数の投資機関が出資に参加している。資金調達後、智譜AIの評価額は約10億ドル(約1500億円)に達し、ユニコーン企業入りを果たした。直近に実施したシリーズB-2では、生活関連サービスのプラットフォームを運営する「美団(Meituan)」が単独で数億元(数十億〜百数十億円)を出資している。
今年、一大トレンドとなった大規模言語モデルを手がける企業の中でも、智譜AIはスター企業として注目を浴びた。2019年に清華大学コンピューターサイエンス・テクノロジー学科知識工学実験室(Knowledge Engineering Group)がインキュベートした企業だ。同社が開発した大規模言語モデル「GLM-130B」は、米スタンフォード大学基盤モデル研究センター(Stanford CRFM)が2022年に世界の主要大規模言語モデルとして選んだ30のモデルのうち、アジア圏から唯一選ばれた。智譜AIの開発チームはまだ実験段階のうちから顧客を増やし、技術面でも高い評価を集めている。
今回の智譜AIのように、中国二大IT企業であるテンセントとアリババの双方が同じ企業の出資者となるケースは珍しい。クラウドベンダーにとって大規模言語モデルの開発と応用が極めて重要であり、売り上げを一気に伸ばす成長曲線にもなりうることが見てとれる。
アリババは今年4月11日、自社で開発した大規模言語モデル「通義千問(Tongyi Qianwen)」を発表した。テンセントはこれに遅れる形で9月10日に「混元(Hunyuan)」を発表している。
大規模言語モデルに関する技術では、アリババ、テンセントの双方とも米OpenAIのGPT-4からは明らかに後れており、また国内の競合を大きく引き離しているわけでもない。この技術力をめぐる競争においては、大手企業も絶対的な守りを固めているわけではない。強力なプレイヤーが現れればいつでも業界再編が起こる可能性がある。
そこで、IT企業の間では投資やM&A、業務提携などを通じて大規模言語モデルを開発するベンチャー企業とアライアンスを組むことが共通の手法となっている。4年にわたり大規模言語モデルを手がけてきた智譜AIは、テンセントやアリババなど大手のお眼鏡にかなう「人気者」なのだ。
大手テック企業の間で人気の提携企業に
今年に入って大手クラウドベンダーが提携を決めた企業のリストには、智譜AIの社名が頻繁に登場する。
TikTokを運営するバイトダンス(字節跳動)傘下のクラウドサービスプラットフォーム「火山引擎(Volcano Engine)」は6月末、提携企業第1弾のメンバーに智譜AIを迎えた。智譜AIは自社で開発した対話型AI「ChatGLM」を大規模言語サービスプラットフォーム「火山方舟(Volcano Arc)」に提供している。さらに8月にはバイドゥ(百度)の大規模言語モデルプラットフォーム「文心千帆」上で、智譜AIの「ChatGLM2」がStable DiffusionやLlama2などと並んで提供された。智譜AIに出資している美団や教育プラットフォーム「網易有道(Youdao)」など、クラウドサービスを手がけていないIT企業もこぞって智譜AIと提携し、AI関連のプロダクトを共同開発している。
智譜AIが提携先として大手企業の間で人気を集める主な理由は、確かな技術力にある。智譜AIの大規模言語モデルGLMは、GPTとは異なる学習方法を採用している。智譜AIのGLMは理論上、学習効率がGPTより高く、より複雑なシナリオを理解できるという。
GLMの取り組みはすでに成果が現れはじめている。GLMをベースにした中英二カ国語対応の対話型AI「ChatGLM-6B」をオープンソース化し、コーディングや動画、画像生成などが可能な一連のモデルも打ち出した。目下、学習やファインチューニング、デプロイメントなど企業向けのサービスも智譜AIの主要事業となっている。
「智譜AIのGLMはシリコンバレーでトップクラスのテック企業から最も高く評価されている中国の大規模言語モデルだ」。米マイクロソフトのあるアルゴリズムエンジニアは36Krの取材に対し、こう述べている。
今年8月31日、中国国内の11社が中国国家インターネット情報弁公室(CAC)から大規模言語モデルをベースとしたプロダクトやサービスの一般公開の承認を得た。智譜AIもそのうちの1社で、パラメーター数1000億の一般ユーザー向け対話型AI「智譜清言」も公開に踏み切っている。
現在の智譜AIは、ある投資家の言葉を借りれば大きな発言権を持っており、「現在、智譜AIだけが出資者を選り好みできる状態にある」という。
(翻訳・山下にか)
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