スタバにロレアル、グローバル企業の中国トップが相次いで交代へ 激しい市場競争に備え

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米コーヒーチェーンのスターバックスと仏化粧品ロレアルで、中国事業の新CEOが決まった。

スターバックスではこれまで中国事業で上級管理職を務めてきた劉文娟(Molly Liu)氏がエグゼクティブ・バイスプレジデント兼スターバックス中国のCo-CEO(共同最高経営責任者)に着任した。同氏は2021年からスターバックス中国のCOOを務め、デジタルベンチャー事業部門のゼネラルマネージャーも務めてきた人物だ。今回就任したCo-CEOは新たに設けられた職位だという。

ロレアル中国ではこれまでのFabrice Megarbane氏に代わって新たにVincent Boinay氏をCEOに任命した。Boinay氏はこれまでグローバル・トラベルリテール(空港や免税店での販売)事業のゼネラルマネージャーを務め、社内では「トラベルリテール部門をロレアルの成長と利益の源に育て上げた立役者」と評価されている。また、ロレアル中国リュクス(高級化粧品)事業部のゼネラルマネージャー馬暁宇(Laurence Ma)氏が新たに副CEOに任命された。こちらも新たに設けられた職位だという。

外資系大企業は中国の市場や競争に、かつてないほど手を焼いているようだ。スターバックスは地元中国の大手コーヒーチェーン「luckin coffee(瑞幸咖啡)」 に店舗数で追い越されたのに続き、2023年4〜6月期決算では売上高も初めてluckin coffeeを下回った。ただし、スターバックスも地元の強敵に対し決して無策なわけではない。

今回、スターバックス中国のCo−CEOに抜擢された劉氏は過去にデジタルベンチャー事業部門の責任者として、デリバリーサービス「専星送(Starbucks Delivers)」とオンライン注文で店頭受け取りができる「啡快(Starbucks Now)」の2つの新規事業を独力で立ち上げた。この新規事業は、スターバックスが創業以来守り続けている「サードプレイス」のコンセプトと大型店のビジネスモデルを補完する重要なサービスとなった。

現在、スターバックス中国のデジタルベンチャー事業は販売額で全体の48%を占める。このデジタルベンチャー事業を統括してきた劉氏をCo-CEOに抜擢したということは、その業績を評価すると同時に、スターバックスが今後もデジタリゼーションを強化し続けることで変化の速い中国の消費市場に対処していく姿勢の表れかもしれない。

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スターバックスは8月、深圳市にスターバックス中国イノベーション&テックセンター(SITC)を設立し、店舗やマルチチャネルのデジタル化を加速させていくと発表した。
スターバックスがデジタル化と同じくらい重視しているのがサプライチェーンの構築だ。9月には江蘇省昆山市のスターバックス中国コーヒーイノベーションパークが正式に始動した。これはスターバックスが海外の生産施設にかけた戦略投資としては最大のものだ。

2023年9月19日、江蘇省昆山市でオープンしたスターバックス中国コーヒーイノベーションパーク

ロレアルの新人事も、同社の事業や戦略の方向性を示す一種のシグナルとなっている。

ロレアルの事業戦略でこれまでも重要な位置づけにあった中国市場だが、2022会計年度以降の一時期は、ロレアルの世界五大市場で成長が最も鈍化した市場となった。

このほど副CEOに任命された馬暁宇氏は、ロレアルが中国市場に進出した1997年に入社した。同氏が中国エリアで残した最も優れた功績は、ランコムを高級化粧品ブランドとして中国に定着させたことだ。

今回の人事はロレアルがハイエンド市場に寄せる切なる期待が表れているのかもしれない。

中国の化粧品市場では現在、ローカルブランドが急速に台頭してきている。オンラインチャネルやSNSマーケティングを重視し、機能性スキンケア商品が人気を博したことで「PERFECT DIARY(完美日記)」、「FLORASIS(花西子)」、「珀莱雅(PROYA)」、「薇諾娜(WINONA)」などの現地ブランドが急成長した。オンラインチャネルに高度に依存し、またSNSマーケティングに長けたこれらのブランドと比較すると、ロレアルのオンライン通販へのシフトは依然スローペースで、2022年の販売額のうちオンライン販売はわずか28%にとどまった。

中国市場で高級化粧品の販売額の伸びが鈍化したことを受け、ロレアルはすでに新たなアクションを起こしている——173億元(約3600億円)という過去最高額でオーストラリアの高級化粧品ブランド「Aesop(イソップ)」を買収したのだ。

米ニューヨークにあるAesopの路面店

中国での外資系企業の変遷は、中国ビジネス史の一部と重なる。中国市場が消費財ブランドに発しているシグナルは、中国市場がすでに単なる生産基地でも消費市場でもなくなり、研究開発の転換こそが目下の課題であることを突きつけている。

(翻訳・山下にか)

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