「中国のテスラ」NIOが最大の窮地 上場1年で時価総額7割目減り

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「中国のテスラ」NIOが最大の窮地 上場1年で時価総額7割目減り

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「中国のテスラ」とも称される新興EVメーカー「NIO(蔚来汽車)」が昨年9月のニューヨーク上場以来、最大の危機に瀕している。苦境を脱するための有効策を示せないまま投資家離れが進んでおり、現在の時価総額は18億ドル(約1900億円)にまで落ち込んでいる。IPO時から72%、ピーク時から85%の下落率だ。

今年第2四半期、同社のフラッグシップモデル「ES8」は車載バッテリーの発火事故が相次いだことを受け、およそ4分の1をリコールする事態に発展した。今四半期は前年同期比83%増にあたる2億8300万元(約43億円)の損失を計上しており、売上利益率、純利益率も軒並み下げている。さらに共同創業者の辞職、リストラの敢行、新エネルギー車に対する政府補助金の削減など、マイナス要素が次々と重なった。9月24日に行われた第2四半期の決算報告後、NIOの幹部はアナリストとのカンファレンスコールを急きょ中止。これが悪影響となり、同社の株価は20%以上も下落した。

NIOの上場当初の勢いはどこへ行ったのだろうか。現在の企業価値は実際どの程度なのだろうか。こうした問題について以下にまとめた。

NIOが陥った最大の苦境

この苦境を乗り切れるかどうかは、李斌(ウィリアム・リー)CEOが新たに資金調達できるかにかかっている。今年第2四半期の決算報告によると、NIOの純資産は4億5600万元(約69億円)にまで目減りしている。次期も巨額の損失を出し、資金調達もかなわないとなると、債務超過に陥ってしまう。

とはいえ、営業キャッシュフローと保有するキャッシュを合わせれば、短期借入金で今後数年間の運営は可能で、資金ショートを起こすことはないだろう。

過去100年の間、自動車業界には「スタートアップ」はほぼ存在してこなかった。それを打ち破ったのが2003年に設立された米テスラ社だ。従来型のガソリン車から電気自動車への転換期に入ると、新興企業にも市場参入の門戸が開かれたのだ。電気自動車は部品の汎用性が高く、サプライチェーンの管理が容易になる。NIOは国営系乗用車メーカーの江淮汽車(JAC)に生産を委託することで、従来型のメーカーと同じ土俵に上がることができた。

しかし、2003年に創業したテスラが絶妙のタイミングでEV業界に参入したのに比べ、2014年に創業したNIOはすでに機を逸していたと言ってよい。

テスラが初の量産車を発表したのは創業5年目の2008年だ。対して、NIOが初の量産車「ES8」を発表したのは創業3年目の2017年で、現在もなお増産段階には至っていない。

創業時期が遅すぎたNIO

今年9月、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディといった世界の名だたるブランドが相次いでBEV(純電気自動車)を発表した。いずれも2020年には量産化を予定している。こうした強豪メーカーが一斉にEVの量産を開始するとなると、2020年以降は新興メーカーにとってのボーナス期が終わりを告げることになる。自動車業界に詳しいある投資家は、「既存型の大手メーカーによるEV市場への本格的な参入があと数年遅ければ、NIOもテスラのような成功を手にする可能性があったし、収益化が長期にわたっても問題なかった。しかし、テスラも中国生産を開始した今、NIOは既存大手とテスラの板挟みだ」と評する。

2016~2019年上半期までの3年半でNIOが計上した純損失額はNon-GAAPベースで累計220億元(約3300億円)。テスラが創業以来15年間で投じてきた資金の約半分を、わずか4年未満で使い果たしたことになる。前出の「2020年問題」に備え、経営の足固めを終えたいとの意向からだろう。しかし、巨額の資金を投じた結果はまだ現れていない。昨年、テスラは24万5000台を納車し、生産拠点を3カ所に増やしているが、NIOは今年8月時点で累計納車台数が約2万台で、生産は完全に江淮汽車に頼っている。

高成長の兆しも見えず

NIOについては、多くの投資家がその生産体制と納車状況を注視している。

中国の投資銀行「中金国際金融(CICC)」が新興自動車メーカーを対象に事業価値を評価した結果によれば、評価に最も影響する要素は「販売台数」だという。新興メーカーとはいえ、自動車製造企業の事業スキームは従来型メーカーと同じアセットヘビー型であることには変わりなく、資金や技術などのリソースを大規模投入してスケールメリットを創出しなければならない点も同じだ。

NIOは今年のリコール騒動を受け、新規納車台数が減少している。NIOは今年の出荷目標をすでに4万1000台に下方修正し、納車台数は4~5万台になると見込んでいる。加えて、中国政府による新型エネルギー車への購入補助金政策は年々縮小し、2021年には完全に廃止されるとみられており、そうなればNIOはさらなる痛手を負うことになる。

仮にES8の今年の生産台数が2万2000台、ES6の生産台数が2万3000台とすると、1台当たりの製造コストは約29万5000元(約450万円)で、売上総利益率は約13%となる。もし年間10万台の生産を達成できれば、売上総利益率は20%を超える。李CEOは第2四半期の決算報告後のカンファレンスコールで「年内の売上総利益率の黒字転換は不可能」と述べている。同期の売上総利益率は-4%だった。

年初に立てた年間販売計画も達成できない見込みだ。李CEOは第2四半期決算報告後、「中国の自動車市場全体が引き続き不振で、乗用車の卸売り販売額も前年同期比で14.3%縮小している」と説明した。

NIOの事業価値は

NIOの実際の事業価値はどの程度なのか。車載バッテリーが年間約10~15%のペースで値下げ傾向にある点と、政府が主導する充電設備の敷設が進んでいる点を鑑み、中国の新エネルギー車市場は2020年までに年平均成長率が50%に達するとみられる。NIOは現在、戦略的に高価格帯車種に注力しているが、同市場は2020年までは目立った競合が存在しない状態だ。NIOが納車台数を2018年の約1万台から2020年までに10~11万台にまで伸ばせれば、この事業スキームはさらに継続できるだろう。

しかし、前述のように従来型の大手メーカーが2020年以降に続々と新エネルギー車の量産化および販売に漕ぎつけた場合、またテスラが中国工場で「モデル3」を量産化した場合は、まだ生産能力が十分に育っていないNIOにとっては致命的な打撃となるだろう。華創証券(Hua Chuang Securities)の分析によると、テスラは昨年12月以降、モデル3を週6000台のペースで製造する体制が整ったことで、キャッシュフローがようやくプラスに転じ、黒字化を実現したという。

自動車企業の市場価値は販売台数に左右される。販売台数に応じて収益や利益が決まるのだ。華創証券はNIOの販売台数および売上利益率について、悲観的・楽観的・ニュートラルの三段階で予想値を出しているが、結果的にはこの悲観的な予測に近い現実が見えてきた。悲観的予測では、ES6の販売台数は月3000台、2026年時点での累計販売台数は25万台、売上利益率は18%、純利益は30億元(約450億円)となっている。また、JPモルガンの最新の調査では、NIOの今年の出荷台数は4万1000台に、2019~2020年の売上高は10~30%下方修正されている。

テスラの大株主であり、新エネルギー車市場を高く評価する英資産運用会社ベイリー・ギフォード・アンド・カンパニーは、NIOに出資して多額の損失を被った。ブルームバーグのデータによると、同社は昨年末から今年初めにかけてNIOの株式1億株以上を6億7000万ドル(約720億円)で購入。今年6月時点でもこれらを保有したままだが、損失はすでに4億ドル(約430億円)以上になるという。

テスラでの成功体験は生きなかった。というのも、ベイリー・ギフォードがテスラに出資したのは2013年のこと。NIOに出資したのは2018年で、時期に大きな違いがある。

NIOは経営面で多くの不確定要素を抱えるのは事実だが、かといって倒産に至るほどではない。新たに資金調達の目途がつけば、短期的には株価も回復へ向かうだろう。ただし、長期的には「2020年問題」の影響をみる必要がある。
(翻訳・愛玉)

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