京東、地方都市への浸透戦略が奏功し業績回復 戦略的投資拡大へ

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京東、アリババの中国のEC2強から目が離せない。9月末、ちょうどアリババ(阿里巴巴)が年に一度の世界投資家大会を開催していた頃、京東(JD.com)は今後の投資戦略について、外部向けの説明会を初めて開催していた。

京東が外部に伝えたいメッセージはどのようなものなのか。京東の戦略的投資部門トップに任命されたばかりの胡寧峰(Jason Hu)氏にインタビューした。以下に京東の現状と展望を記す。

アリババやテンセントに対抗

戦略的投資に関して、京東はこれまでテンセント(騰訊控股)やアリババに、やや後れをとっていた。

企査査のデータを元に36Krが作成

中国企業情報サイト「企査査」によれば、2012年10月以降、京東が国内外で行った77回の投資のうち、約30回は戦略的投資だが、初めて戦略的投資を行った時期や、これまでの投資回数を比較してみると、アリババやテンセントには敵わないというのが現状だ。

投資する企業にとって、戦略的投資とは何を意味するのか。戦略的投資を行うためには、資金だけでなく、多くのリソースを投じる必要があるが、投資先企業との業務提携により、サプライチェーンの構築が期待できる。さらに、出資者として強い発言権を持って長期的な投資を行うことで、シナジー効果による最大限の利益を創出する可能性を秘めている。

京東は、技術、マネジメント、市場、人材資源等の包括的な枠組み作りという点でも、アリババと比べ後れている。しかし、ECプラットフォームとして自社完結型システムを構築してきた京東は、さらに一歩進化したオープンプラットフォームという新たな枠組みを作ろうとしており、胡氏の言葉を借りれば「京東の再構築」に向かっているという。

この1年間、京東は大連万達集団(ワンダ・グループ、中国の商業不動産大手)関連子会社で、全国にショッピングセンター「万達広場(ワンダ・プラザ)」を展開する「万達商業」や、高級品専門EC「寺庫(SECOO)」等へ投資を行ってきたほか、女性向けEC「唯品会(vip. com)」や食料品デリバリー「達達-京東到家(Dada-JD Daojia)」といった既存の関連会社とも、強固な協力関係を維持している。

胡氏によれば、今後京東はより頻繁に、より大規模な投資を行っていくという。

激化する地方都市市場争奪戦

2019年に入り、京東は地方都市市場を開拓するため、家電販売チェーン「五星電器」、携帯電話小売「迪信通(D.Phone)」、生活雑貨「生活無憂」、エレベータ広告会社「新潮伝媒(Xinchao Media)」に戦略的投資を行ってきた。小規模地方都市を中心に展開し、江蘇省の60%以上の農村部を網羅している五星電器の店舗は、京東が家電大手の「蘇寧(SUNING)」に対抗するために不可欠な存在だ。また、迪信通、生活無憂、新潮伝媒もそれぞれ京東の地方都市展開において極めて重要な役割を担っている。

京東の2019年のテーマは「地方都市への浸透」である。

戦略的投資だけにとどまらず、京東は動画投稿アプリの「TikTok(抖音)」や「快手(Kuaishou)」とも提携を結び、様々な地域や年齢層のユーザーを取り込もうとしている。さらに、京東は、「拼多多(Pinduoduo)」のモデルを参考に共同購入専用アプリ「京喜」をリリースし、低所得者層市場開拓を進めている。

最新の第2四半期決算データをみると、京東の業績が徐々に回復していることが分かる。売上高の伸び率は22.9%にとどまっているが、第1四半期の20.9%よりは上回った。年間アクティブユーザーは、前四半期の3億1050万人よりも1080万人増えた。「低線市場」と呼ばれる三級都市以下の小規模都市や農村での注文金額は、前年同期比で2倍以上増加したという。これは、地方都市への浸透戦略の効果が数字に表れ始めたためだと言える。

拼多多やアリババが「低価格」路線で低線市場の開拓を進める中、これまで客単価が高かった京東が、地方都市で受け入れられるかはまだ明らかではない。戦略的投資を行うだけでは、大きな壁にぶつかる可能性もある。これに対し前出の胡氏は、全ての事業を自社のみで行うのは不可能であり、広い分野での相互補完が見込める投資を行いたいと語った。

京東は今後、将来を見据えてより多くの投資にチャレンジしていくことだろう。
(翻訳・桃紅柳緑)

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