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今年の「618セール(中国のネットショッピング大型販促イベント)」で、無糖飲料ブランド「元気森林(GENKI FOREST)」は合計226万本の飲料を販売、通常の1日の90倍に相当する販売量を記録し飲料水カテゴリーで一躍トップに躍り出た。
元気森林は2016年に設立。レッドオーシャンとされていた飲料市場でわずか3年で道を切り開き、ゼロからのスタートで1カ月当たり1億元(約15億円)近い売り上げを実現。中国のビジネスニュースメディア「晩点LatePost」によると、同社の評価額は40億元(約600億円)に達するという。
同社の急速な成長の要因は、販売経路とブランド力だけでなく「健康志向」という時流に乗り若者の人気を獲得したことにある。
1.商品で健康意識を掘り起こす
無糖飲料は上半期の飲料市場で最も成長したカテゴリーだ。米飲料大手コカ・コーラが7月に発表した2019年第2四半期の決算報告では、炭酸飲料の販売量は全体で3%増加。社名にもなっている定番の「コカ・コーラ」商品が4%の伸びを見せたが、無糖をうたった「コカ・コーラ ゼロシュガー」は7四半期連続で2ケタの成長率を見せている。
元気森林の商品は、ほぼ全てにベンチマークとする加糖版の商品があるという。代替甘味料(主にエリスリトール)を使用して似た味わいにしているが、対象商品より低カロリーで健康的だ。各ソーシャルメディアにおいて、元気森林はしばしば「ダイエット」や「太りたくない」などのキーワードと結び付けられる。
「健康」というタグづけにより、元気森林はスムーズに市場に参入することができた。新しいカテゴリーを作り出す必要もなく、新しい味を消費者にアピールするコストもかからない。もちろん、同社がターゲットにしているのは清涼飲料水を買う習慣があり、健康のためならすすんで1、2元(約15~30円)多く支払うという若者たちだ。
2.コンビニの出店攻勢が追い風に
元気森林の売り上げのうち60~70%は実体店舗での販売で、オンラインでの売り上げは3割に満たない。
「中国連鎖経営協会(CCFA)」が発表した「2019年全国コンビニエンスストア発展報告」によると、ここ数年コンビニ業界は変わらず高成長を維持しており、2017年と2018年の成長率はそれぞれ23%、19%だった。店舗数も2016年の9万4000店から2018年は12万2000店にまで増加しており、平均すると毎月1160店以上のコンビニがオープンしている計算だ。
高い成長率を誇ると同時に、一、二級都市(大都市)にしかないと思われていたコンビニが今、急速に地方都市に進出している。今年7月の報道によると、セブンイレブンが河北省の唐山市など華北地区の三級都市に出店するという。この状況は、元気森林にとっても、コンビニの店舗拡大によって販売チャネルの開拓に関する時間とコストを大幅に削減できると同時に、同ブランドのオフラインでのリーチ数を拡大できるという好材料だ。
3.オンラインマーケティングで消費者に訴える
販売チャネルや宣伝の面では、元気森林は一貫して若者をターゲットにしている。まず一、二級都市のコンビニに展開することでターゲットとする消費者に一気にリーチできる。次にソーシャルメディアで露出していく。アイドルやKOL(キーオピニオンリーダー)などによる宣伝を行うのだ。
ブランドイメージでは日本的な要素「和風」を十分にアピール。「元気」は日本語であり、健康的でプラスのイメージを持つ。ブランドの位置づけ「無糖専門家」という言葉も日本語の用法で、同社では無糖生活を提唱している。価格の面では、国内の商品と比べると割高だが、輸入商品と比べるとコストパフォーマンスが良い。
コカ・コーラに代表される飲料業界のビッグネームはグローバル化のチャンスをうまく捉えて成長した企業であり、現在のような環境下では「第2のコカ・コーラ」が誕生することは難しいだろう。しかし、100億元(約1500億円)の評価額を持つ香港のおやつブランド「曲奇四重奏(クッキー・カルテット)」のような会社が登場するなど、なお可能性はある。若者向けの「健康版」コーラとして次に100億元(約1500億円)評価額を実現する会社は元気森林かもしれない。
(翻訳・山口幸子)
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