爪1枚40秒で完成するAIネイルプリンター 専用アプリでオリジナルデザインもラクラク作成

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爪1枚40秒で完成するAIネイルプリンター 専用アプリでオリジナルデザインもラクラク作成

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昨今、中国のビューティー関連市場が急成長を遂げている。ネイル専門コミュニティサイト「美甲幇」のデータによると、一昨年のネイル市場全体の規模は1200億元(約1億8000万円)、年平均成長率は20%に上るという。また中国全土のネイルサロン店数は37万軒超、就業者数は260万人超となっている。

総じていえば、中国のネイルサービス市場はネイル商品市場より大きく、消費は店舗での施術を主としている。だがネイルサロン事業の参入条件の低さ、同質化、規模拡大の難しさという問題により、市場のブランド化は進んでおらず、ネイルサロンの9割以上は独立系店舗だ。これらの個人経営型サロンの生き残りは厳しく、ネイリストの流動性も高い上に、人件費や店舗賃料も上昇の一途をたどっているため、新規開業率と廃業率はいずれも30%を超える。

これらの難題の解決に向け、一部の企業はプリンターから発想を得て、一部の作業を人手に替わって行う自動ネイルプリンターの発売を開始している。ネイルプリンター「美甲塗塗」を開発したのはSUNVALLEYグループ傘下の「深圳丹芽科技(Shenzhen Danya Technology)」は、一昨年にネイルプリンターの自社開発を開始し、今年5月に正式に販売をスタートした。同社は市場調査の過程で、市場に流通するAIネイルプリンターは、プリントの仕上がりやインタラクティビティの面で大きな改善の余地がある上に、業界のスマート化水準も低く、市場へのPRも不十分であることを発見した。これらの原因により、実際に機械を購入するネイルサロンは決して多いとはいえず、無人店や異業種との連携といった新たなシーンの開拓も難しい現状がみられた。

同社のネイルプリンターは一辺が20センチメートルの立方体で、タッチパネルを搭載しており、ネイルデザインはミニプログラムとアプリを通じてデータベースから選べる。指一本あたりのプリント時間は約40秒だ。小売価格は5980元(約9万円)だが、現時点ですでに1000台以上を販売しており、年内に1万台の出荷を予定しているという。現在の機種は主にネイルサロン、美容院、展示会、集客を目指す店といったBtoB市場をターゲットとしている。ネイルの施術単価は比較的高く、プリンターの導入コストも低いため、通常は1台につき1カ月前後での資金回収が可能だ。

創業者の林鎮清氏によると、同社は現在コンシューマー向け商品の開発にも取り組んでいる。来年5月には「日替わり」でネイルを楽しめる新機種を1000元(約1万5000円)以下で販売する計画だ。

創業メンバーは当初から「女性向けビジネスとテクノロジー」の融合に将来性を見いだしていたという。AIネイルプリンターの技術障壁は高く、市場競争も過酷ではないため、研究開発で強みを持つスタートアップの参入分野としては最適だったといえる。

製品や技術面では以下のようなアップグレードを実施している。

インタラクティビティの面では、機器にディスプレイを搭載することで、プリントの過程が可視化され、より安心して使用できるようになった。また操作もしやすくなったほか、携帯電話と連携しなくても独立した端末として操作できるため、屋外やネット環境が整備されていない店舗でも使用できる。

プリントに関しては、画像認識技術の活用により、爪表面の正確な認識が可能となった。人間の爪の形状には個人差があるため、既存のネイルプリンターでははみ出し防止用の保護ジェルを爪の周囲に塗る必要があったが、煩雑で時間がかかる上にデザインがゆがんでしまっていた。美甲塗塗は独自のAIアルゴリズムによって爪の正確な形状を自動認識し、爪表面のみに図柄をプリントできる。さらに機械制御アルゴリズムの進化により、デザインはより細かくはっきり印刷されるほか、専用アプリに画像編集機能を搭載しているため、アプリ上で図案のトリミングや背景の削除を行い、オリジナルデザインが作成できる。

さらに、使用するジェルに関しては特許を取得しており、従来の「ベースジェル、カラージェル、ネイルアート、トップジェル」という施術手順にプリント用ジェルの塗布工程を加えた。カラージェルとプリント用ジェルは自社開発品を使用することで、仕上がりの鮮明さや光沢がより向上している。林氏によれば、ネイルジェルの販売が継続的な収入源となるほか、同業者が似たようなネイルプリンターを製造したとしても、アルゴリズムや独自ジェルの模倣までは難しいとのことだ。

同ネイルプリンターの開発にあたっては、計39人の技術者が2年の歳月を費やし、開発費は4700万元超(約7億1000万円)に上ったという。「欧米、日本および韓国にはすでに類似品があったが、高額な人件費がネックとなり海外人材の導入は難しかった。一方で国内には参考にできる中核技術が存在せず、ゼロからの開発が求められた」と林氏は語る。同社のシステムアーキテクチャを担当するメンバーには、台湾のフォックスコン(富士康)や中国の自宅訪問型ネイルサービス企業「河狸家(Helijia)」出身者もおり、アルゴリズム、ハードウェアおよび運営面での経験の持ち主だ。同社は現時点ですでに50件以上の特許申請を終えている。

このほか、ミニプログラムとアプリには「近くの店舗をオススメ」する機能も追加されたため、顧客が増えた際はネイルプリンターを使用する実店舗に顧客を誘導することもできる。

製品のPRにおいては、TikTok(抖音)上の独自コンテンツに加え、有名キャラクターとコラボしたネイルデザインを採用し、ファンを獲得している。また主要顧客が企業や事業主であるため、実際に製品を体験してもらうことがコンバージョン率向上に重要であることから、販売代理店経由での販売や各種展示会への参加も、現段階での重要な販売チャネルとなっている。(翻訳・神部明果)

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