Uberのヘリコプタータクシーが全面運行開始 「空のモビリティ」は普及するか

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米配車サービス大手Uber(ウーバー)は先週、ヘリコプターによるモビリティサービス「Uber Copter(ウーバー・コプター)」の利用対象者を全会員に拡大した。飛行ルートはニューヨークのマンハッタンからジョン・F・ケネディ国際空港で、車なら1時間の道のりが、ウーバーコプターならわずか10分で到着だ。同サービスは7月上旬以降、Uberの特別会員のみに開放されていた。

Uberはこれまで自動運転化をめぐる課題を抱え、より大胆な飛行タクシーのプロジェクトも実現に至らない中、モビリティ領域での自社の地位を証明するための試みを続けてきた。

同社の配車サービスはすでにある程度の規模に成長し、今後の伸びしろが狭まっているほか、アメリカ市場での有力なライバルであるLyftに対抗するため、現時点では契約ドライバーへの依存度を減らすことができない。これらの理由により同社は長らく赤字状態にあり、上場以降は株価がたびたび発行価格を下回っている。

爆発的に成長するフードデリバリー事業「Uber Eats(ウーバーイーツ)」による資金の下支えに加え、同社はより大きなビジョンを描き出すことで株価を引き上げ、投資を呼び込む必要もある。このため空飛ぶタクシーと自動運転はUberにとって最も重要な二大業務なのだ。また、飛行自動車のさらなる意義は、陸路での移動ニーズを補い、自動運転関連データを収集できるという点にもある。

とはいえ、自動運転と飛行タクシーは今なおSF映画の中のワンシーンにすぎず、実現に至っては困難が山積みだ。自動運転車は人々に受け入れられつつあるものの、Uberの自動運転車両では走行試験中の事故が多発しているため、プロジェクトはたびたび中断している。また飛行タクシーの事業進捗(しんちょく)はいまだにコンセプトデザインの段階にとどまっている。

Uberによる今回の商業化運用は、実のところ単なる「ネタづくり」にすぎず、真の意味での普及段階には来ていない。

具体的に言えば、ウーバーコプターのサービスは毎日午後2時~6時のピーク時のみで、利用者は5日も前に予約する必要がある上に、10分間のフライトが1人あたり200~225ドル(約2万2000~2万4000円)と非常に高額だ。これらを見ても同サービスが裕福な人々のお遊びでしかないことはすぐに分かる。このほか、短距離の空中移動ニーズに関しては試験の実施が必須であり、モビリティ業界は総じて懐疑的なスタンスをとっている。

同社のヘリコプターサービスは、現時点で自動車移動を補完する存在から脱却できていない。利用者はヘリコプターに搭乗する前に、Uberの車両で固定のヘリポートまで移動する必要がある。さらにヘリコプターを降りた後も、空港までの車移動が待っている。輸送力にも限界があり、現在は2台のヘリコプターしか利用できない上に、最大乗客数はわずか8人だ。

ヘリコプターは直線的な移動サービスでしかなく、制約が極めて多いが、Uberの飛行モビリティに関する野心はこれにとどまらない。

Uberの依頼を受けブラジルのエンブラエルが設計したコンセプト機「eVTOL」 写真提供:CNET

Uberは現在、ボーイングやブラジルの航空機製造大手エンブラエルなどの協力パートナーと共に、電動垂直離着陸機(eVTOL)の研究を進めている。開発に成功すれば、未来の航空機はどこでも上昇・下降が可能となり、離発着場が不要になるほか、乗客定数もアップし、スケールメリットが生まれればトータルコストも制御できるようになる。

同社はこのeVTOLに関し、2020年に初の試験飛行、2023年に3都市での試験運用との計画を発表している。さらに長期的なビジョンとして、無人航空機や都市共有型航空機ネットワークの構築も視野に入れているという。

このほか、食品輸送に使用するドローンをUberEATSに活用する計画も浮上している。だが、この領域にはライバルも多い。Googleは配達用ドローンの機体に関するFAA(連邦通信委員会)の認可を取得済みで、今年中に試験飛行をスタートする。またアマゾンもドローン配送サービス「Prime Air」を近く開始すると公表した。

自動運転と飛行自動車における短期的な収益化は難しい。Uberからスピンアウトした自動運転企業Uber-ATGは、2016年から今年半ばまでに累計12億2000万ドル(約1300億円)を投入している。さらにUberの経営状態も芳しいとはいえず、創業以来連続での黒字化は達成できておらず、前四半期には50億ドル(約5400億円)という記録的な損失を出している。同社の野心的な挑戦はいつまで続くだろうか。
(翻訳・神部明果)

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