社会保険の支給を顔認証で実現 高齢者プラットフォーム「老来網」が政府の負担を軽減

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社会保険の支給を顔認証で実現 高齢者プラットフォーム「老来網」が政府の負担を軽減

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「老来網(Laolai.com)」は2015年設立の企業で、親会社の「智慧眼(Athena Eye)」は生体認証、コンピュータビジョン技術を中核とするテック企業だ。同社の顔認識技術は公安(警察署)でも導入が進んでいる。老来網は顔認識技術を軸に、国の人的資源社会保障部が年金支給の過程で直面する「認証」の問題を解決した。高齢者は老来網の携帯アプリで社会保険の身分認証ができる。老来網はこのシステムにより2億5000万人の定年退職者へのリーチに成功し、医療、金融、ライブ配信、ECなどのサービスを含む高齢者向けインターネットプラットフォームを構築している。

同社のサービスはすでに20都市以上をカバーし、登録ユーザー数は1500万人超、1日の新規ユーザー数は4万人以上、月間アクティブユーザー数(MAU)は300万人、市場シェアは95%に達している。今年に入り、シニア大学、金融・投資、ライブ配信などの新たな機能の導入も始まった。

以下は、老来網の創業者の邱建華氏が「36KrPro·WISEサロン」でシルバーエコノミーについて語った内容を中心に編集を加えたものである。

顔認証で社会保険の認証を実現

過去には内モンゴル自治区で「社区」(中国独自の地域コミュニティ、行政単位)の管理職員が80人以上の物故者の年金を詐取し、被害額が2000万元(約3億円)以上に及ぶという事件も発生している。このような事件を防ぐため政府は社会保険金の受領プロセスを厳格に管理する必要があるものの、既存の手段は効率が極めて低く、窓口での直接的な確認が必要であったため、高齢者に対する負担が大きかった。また指紋認証を開発した企業もあったが、高齢者の指紋は識別が難しいという難点があり、これらの問題の解決に向け、我々は社会保険における顔認証技術の活用に至った。

総合サービスプラットフォームとしての老来網

私の考えとしては、モバイルインターネットビジネスには前半戦と後半戦が存在する。前半戦とはBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)のような消費型インターネットだ。後半戦に入るとそれだけでは不十分であり、産業との緊密な融合が必要となってくる。

老来網は当時、親会社の智慧眼の一事業でしかなかったが、2016年に国の「インターネットプラス」重大プロジェクトに選出されたことで大きな発展を遂げた。我々の目標は、老来網が高齢者のポータルサイトとなることであり、それ自体をソーシャルサービスプラットフォームと位置付けている。

具体的には、まず社会保険、戸籍などの行政事務、福祉、医療保険などの公共サービスを社区ごとに統合している。中国の高齢者福祉は「9073」モデルと呼ばれ、90%が家族による在宅介護、7%が社区の福祉サービスセンターを利用した介護、3%が施設での介護という意味だが、つまり97%の高齢者は社区周辺で生活していることになる。さらに定年退職者に対するサービスは社区ごとに実施される。このため、中高年層に対するサービスプラットフォームは、社区を基盤とする必要があった。

このクラウドプラットフォームにより、政府の負担軽減や中高年層に対する低コストのサービスが実現したほか、プラットフォームに対する社会的信頼も高まった。これをベースとして、自宅訪問サービス、EC、金融、旅行、健康管理、シニア大学、ライブ配信といった機能をアプリに追加することで、各方面からの商業化も試みている。

湖南省長沙市を例にとると、老来網はすでに200以上の社区で導入済みとなっている。社区の職員は自身のアプリ画面で、社区の高齢者数や認証済み人数などを一目で確認できる。社区でイベントを開催したい場合、アプリ経由で高齢者に通知することも可能だ。

政府が自宅介護を推進していることもあり、中国各地に福祉サービスセンターが設置されてきたが、これまではサービス事業者を監督する仕組みが存在せず、サービスの質についても知るすべがなかった。我々は第三者プラットフォームとして、政府がサービス事業者を監督する手助けも行っている。

シニア大学やライブ配信サービスは今年の重点的な取り組みだ。シニア大学とは主にオンライン講座だが、全国に7万カ所以上もあるオフラインの高齢者向け教育施設が、老来網のSaaSを通じた講座配信、受講者管理および情報管理を行えるようになった。またライブ配信サービスは、高齢者がアプリを通じて楽しめる娯楽の一つとなっている。

現在、高齢者の利用者数が最も多いのはテンセント関連のアプリで、ニュースアプリ「今日頭条(Toutiao)」がそれに続き、3位は老来網となっているが、来年には2位に浮上するはずだ。今後はよりバラエティに富んだサービスを提供するため、同業者との踏み込んだ提携も進めていきたい。
(翻訳・神部明果)

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