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中国EC最大手アリババグループのネット銀行「網商銀行(MYbank)」は9月中旬、インボイス・ローンという新たな小規模事業者向け小口融資サービスを開始した。電子決済アプリ「アリペイ(支付宝)」を使って増値税インボイス(=中国の正式な領収書。※増値税とは、中国税収の4割近くを占める流通税の一種で、日本の消費税に相当する付加価値税のこと)を読み取るだけで手軽に借り入れができる仕組みだ。この新サービスは広東・浙江・河北・河南・安徽・湖南・江西・陝西の9つの省で試験的に開始され、一度に3000万の小規模事業者に対応できるという。
実際の操作方法はいたってシンプルだ。事業主がアリペイアプリを使って増値税インボイスの左上にあるQRコードを読み取り、自社の納税履歴などの情報提供に同意するだけで融資枠が設定され、わずか数分間で借り入れが可能となる。
アリペイがこういったことができるのはグループ内で税務情報を活用し、グループ外から経営データ及び信用データを取り込んでいるからだ。傘下の金融サービス企業「アント・フィナンシャル(螞蟻金服)」の信用データは、主にアリババグループのEコマース及びアント・フィナンシャルのネット金融のデータからきており、すべての個人または企業の信用状況を反映しているわけではない。
税務データと照合すれば、アリペイのシステム内にその企業の過去データが無かったとしても、網商銀行から融資を受けることが可能だ。アント・フィナンシャルは、この新型ローンを導入すれば試行エリアにおける小規模事業者の融資枠は平均3倍、優良な税務履歴を有する企業では平均8~10倍増枠できる見込みだという。
網商銀行は2017年に「3年間で小規模・零細企業3000万社にサービスを提供する」という目標を掲げている。インボイス・ローンの普及促進が、同行の取引対象を広げ、地方都市の新規開拓につながるとみられる。
アント・フィナンシャルによると、2018年に網商銀行が実行した小規模事業主向け融資は1兆元(約15兆円)を超え、そのうち96%が100万元(約1500万円)以下の少額ローンだった。同行から融資を受けている300万社以上の小規模事業者のうち、地方都市における融資の伸び率は120%を超え、大都市をはるかに上回る。このデータからも中国の地方都市の市場に活気があることが分かる。
興味深いのは、同行の不良債権の割合は0.78%と、一般的な商業銀行の1.74%(2017年)よりは低いが、民間銀行全体の不良債権比率0.53%と比べると依然として高いことだ。
網商銀行の金曉龍頭取は「澎湃新聞(ThePaper.cn)」のインタビューに対し、税務データを活用できれば不良債権比率の低下につながると語った。「増値税インボイスや業績データから、顧客の経営状況をトータルに把握し、第三者的な目線から判断することができる。銀行も顧客の信用状況がはっきりと分かり、それに基づいてより高い与信を出せれば、顧客にとっても利息を低く抑えられるというメリットがある」と言う。
(翻訳:貴美華)
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