中国のトップ大学やテック企業も愛知に注目。県内企業の中国訪問でスタートアップ・エコシステムの構築に一歩前進

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日本を代表する製造業の集積地である愛知県は現在、新たなスタートアップ・エコシステムの構築を目指す「愛知スタートアップ戦略(Aichi-Startup戦略)」を進めており、国内有数のイノベーション推進地域として注目を集めている。この地域からスタートアップを生み出すと共に世界の有力スタートアップを招致し、愛知県内にある国内トップクラスの実績を持つ企業とのオープンイノベーションによる新産業創出を目指す。

スタートアップ・エコシステムの構築に向けた海外戦略では、中国を重点地域の一つに位置付けている。「Aichi-China Innovation Program」を戦略の一環として、県内スタートアップの中国進出支援・県内企業と中国スタートアップのマッチング支援・県内大学と中国の大学の学生交流・創業支援などを実施する。すでに中国の清華大学系列のイノベーション支援組織「Tusホールティングス」、上海交通大学、浙江大学と事業連携し、県内スタートアップと中国のビジネスパートナーとのマッチングなどを通じて双方のビジネスチャンス拡大を図っている。

2023年12月には北京と上海を訪問するツアーを開催し、愛知県とゆかりの深いスタートアップや大手企業などが参加して、中国の企業や投資機関と交流した。スタートアップは中国の投資家に自社の魅力を伝え、大手企業は自社の課題の解決につながる中国のスタートアップを発見することができたという。中国のスタートアップにとっても、日本進出や新たなビジネスの機会を得られる貴重な場となった。

日本最大のスタートアップ支援拠点が愛知県に

愛知スタートアップ戦略の中核プロジェクトとして、2024年10月には日本最大のスタートアップ支援拠点「STATION Ai」が名古屋市にオープンする予定となっている。スタートアップを中心に1,000社の入居を目指し、日本全国や海外の有望なスタートアップだけでなく国内外の投資機関も呼び込んで、ユニコーン企業の輩出を狙っていくという。

STATION Aiには一般開放エリアもあり、おしゃれなカフェやレストランもオープンする。地域住民との間で自然なコミュニケーションが生まれる工夫もされており、従来の発想に捉われないクリエイティブな施設になりそうだ。

愛知県はSTATION Aiを最大限に活用し、世界をリードするオープンイノベーション先進都市を目指す。海外のスタートアップにとって心強いのは、大手企業とのビジネス機会の創出支援や投資家とのマッチングなどを積極的に進める愛知県の姿勢だ。すでに県内のスタートアップなどが中心となり、空と陸をつなぐモビリティ戦略も動き出している。

空も陸も、「愛知・中部地域」でモビリティ新産業が動き出す。海外スタートアップにも好機

今回のツアーで交流した中国のスタートアップや大手企業、名門大学や大手投資機関からも、STATION Aiに対して大きな関心が寄せられた。技術力の高い中国のスタートアップが入居すれば、愛知県は最大限のサポートを提供していくという。

中国の大学発スタートアップと技術を日本へ

今回のツアーでは北京と上海の名門大学を訪ね、有識者や専門家と意見を交わした。

北京で訪問したTusホールディングスは、ヘルスケア分野の先端技術を持つ中国スタートアップの日本進出を支援する方針だという。同社の母体である清華大学のヘルスケアチームは、日本の大学や研究機関と活発に交流しており、2023年にも視察ツアーで日本を訪れている。

北京ではこのほか、レノボ・グループのベンチャーキャピタル(VC)「Legend Capital」や、検索大手バイドゥ(百度)の自動運転実験エリア「Apollo Park」などを訪問した。

バイドゥの自動運転実験エリア「Apollo Park」

上海では、上海交通大学に隣接するハイテク産業パーク「零号湾(NeoBay)」を訪ねた。零号湾は、イノベーションの促進やスタートアップの育成を支援するプラットフォームで、海外のさまざまな機関も参画して国際的なイノベーション・エコシステムを構築している。フランスやシンガポールの大学との共催で、定期的に交流イベントなどを実施しており、名古屋大学との交流にも意欲を見せる。

NeoBayを運営する関係者の方々と訪問ツアーのメンバーたち

中国企業、成長見込める日本のスタートアップへの投資・協業に期待

日本ではすでに、少子高齢化や地方都市の過疎化が大きな社会課題となっている。課題の解決に取り組むスタートアップも続々と誕生し、成長を続けている。中国でも今後、同じ社会課題に直面することが予想されており、市場の拡大が見込まれる。

今回のツアーには、これらの課題に取り組むスタートアップ3社が参加し、中国での事業展開の可能性を探ると同時に、事業提携パートナーや投資家とのマッチングを目指してビッチイベントに臨んだ。

・眠れる特許を収益に変える「PATRADE

知的財産の専門家集団が、特許を保有する大学や大企業と特許の活用で事業拡大を図る中小企業とのマッチング支援を行う。今後は日本と中国をつなぎ、日本の特許を中国で活用する事業、逆に中国の特許を日本で活用する事業の双方向で、新たなビジネス創出を後押しする。

・高齢者のQOL向上に取り組む「Hubbit

ITに不慣れなシニア向けのタブレットや、AIを活用した介護サービスの開発を手がける。高齢化が進む日本で実績を重ね、シニアのQOL(生活の質)を向上させつつ、医療・介護従事者の負担軽減を実現している。高齢化が急速に進む中国で、ビジネスパートナーと事業機会を探求する。

・感情の可視化でより良い社会を目指す 「Olive

生体情報を中心としたマルチモーダルな感情認識技術を通じ、ヒトの感情を周囲に「見える化」する。日本では、富士通や松竹など多くの大手企業との協業実績も多数ある。デジタル化が進む中国で、自動車の安全やオフィス環境の向上、メンタルヘルスケア、リテールでの活用など、幅広い分野で協業の可能性を探っていく。

北京のTusホールディングスの会場で開かれたピッチイベントには、日本のスタートアップとの連携に関心を持つ中国企業の幹部や投資機関の担当者が50人以上集まった。中国で注目の高まる分野を手がける3社のプレゼンが終わると、登壇者への質問と名刺交換で熱気が溢れた。今後の中国での協業に向け、より詳細な打合せを申し込む中国企業も多かった。

熱気が溢れたピッチイベント

愛知の大手企業、中国スタートアップへの投資・協業に意欲

海外進出を目指す中国のスタートアップにとって、日本企業との提携は重要だ。その点、愛知県内には中国スタートアップとの連携に積極的な大手企業が数多く存在する。今回のツアーにも、県内の大手企業の担当者が多数参加し、自社の課題を解決できる中国スタートアップとの協業を探った。

上海では、有望なスタートアップが集まる零号湾を訪問した。零号湾に入居するスタートアップは隣接する上海交通大学との関係が深く、同大学の学生が設立した企業のほか、教授が設立した企業の運営に学生が参画するケースがあり、優秀な人材が集中する。テンセントや中国VC大手から出資を受けるスタートアップも多い。

そのうちの1社、「奕目科技(VOMMA Technology)」は世界トップレベルの3Dカメラを開発している。半導体など精密機器の検査で大いに活躍しており、韓国サムスン電子など国内外の大手企業との提携実績もある。トヨタ自動車グループの内装部品メーカーをはじめ、愛知の大手企業がVOMMAを訪問し、さまざまな質問をぶつけた。高度な3Dデータを活用した検査検品ができるとあって、愛知県内に数多くある製造現場での活用が期待できる。実際に、日本企業との協業の話も進んでいるという。

VOMMA社の責任者が自社の技術を紹介している様子

愛知県は、中国との連携を最も積極的に進める地域のひとつだ。今回のツアーを通じ、日中間の明るい未来につながるイノベーションのきっかけが数多く生まれた。24年は中国の起業家や投資家にとって役立つプログラムが数多く実施される予定だという。愛知県を舞台に、日中両国のスタートアップが羽ばたく未来が近づいている。

(36Kr Japan編集部)

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