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アリババの蔡崇信会長がこの前、ノルウェー政府年金基金との対談でアリババの過去を反省する姿勢を堂々と見せ、中国で大きな話題を集めた。すると、すでに一線を退いたアリババグループ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏も沈黙を破った。
馬氏は4月10日朝、アリババ社内に向け長文のメッセージを寄せた。その中で「この数日、少なからぬ人が蔡会長のインタビュー動画を私に送ってきて、過去の過ちを素直に認めたのは大きな決断だったと言った。そうだ。私は彼の勇気と責任感に非常に感謝している。過ちを恐れる必要はないし、過ちを犯さない人はいない。本当に怖いのは、過ちを知らず、認めず、改めないことだ」とした。
馬氏は引退から5年を経て初めてアリババの過去を振り返った。まず、新しい経営陣の改革が奏功していることを評価した。「蔡会長と呉泳銘CEOはこの1年、未来を見据えアリババの改革を実行した。その勇気と知恵に敬服する」として、新経営陣が「現在の課題と未来に向き合い、若い人たちを信頼して十分な決定権を与えた。何が必要で何が不要なのか、果断で明確な取捨選択の判断を下した」と述べた。
蔡会長はインタビューの中で「アリババが凋落したのは、誰が本当の客かを忘れたからだ。本当の客、すなわちアリババのアプリを通じて商品を購入するユーザーに最高の商品購入体験を提供してこなかった。ある意味、自業自得という部分がある」と語っていた。
馬氏はまた「大企業病」などの問題点も認めた。この1年間での最も重要な変化は、KPI(重要業績評価指標)にとらわれず、己を知り、顧客価値の基本に立ち戻ったことだと指摘。大企業病にメスを入れることにより、アリババは効率と市場を最優先する考えを取り戻し、シンプルで身軽になったとした。
格安EC大手の拼多多(Pinduoduo)は、効率の高い人材活用と購入客重視の姿勢により少しずつアリババに追い迫ってきた。拼多多の2023年売上高は2476億元(約5兆2000億円)で前年比90%増だったのに対し、アリババで中国国内EC事業を担う淘天集団の売上高の伸びは中国EC全体の成長率に及ばなかった。自慢のECで絶対的優位を失ってしまったことは、アリババにとって最大のリスクだ。
アリババのスタッフにとって、2023年は事業分割の発表からIPOの中止まで、嵐に揉まれているような1年だった。11月29日に拼多多の時価総額が一時的にアリババを上回ると、スタッフの士気はさらに下がった。これは組織を重視してきた馬氏にとって、ビジネス上の問題よりもさらに深刻だった。
馬氏と蔡会長が次々と表に出てきたのは、スタッフを鼓舞し、マーケットに安心感を与えるのが目的だ。馬氏はメッセージの中で、多くの疑念やさまざまなプレッシャーがあるが、力強く勇敢なアリババが今まさに誕生すると繰り返し強調した。
そして「組織改革と再編はスタッフ一人一人にも影響する。この1年、精力的に任務に当たってくれた全てのスタッフに感謝する。そして、目まぐるしい変化の中で、IPOするか否かの決断までもが変わる中でも信頼し、耐えてくれた皆さんとご家族に感謝する」とした。
アリババの将来については、「インターネット業界にとって3年から5年というスパンは100年に匹敵する長さで、パラダイムシフトが起きるには十分な時間だ。AIの時代は到来したばかりで、全てが始まったばかりだ」と述べた。
馬氏は今年9月に満60歳の誕生日を迎え、論語にいう「耳順う(みみしたがう)」年齢になる。かつて何事にもひるまず思うがままに振る舞ってきたアリババの創業者も、異なる意見に耳を傾けるようになるかもしれない。
※2024年4月14日のレート(1元=約21円)で計算しています。
(翻訳・36Kr Japan編集部)
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