自己認識能力を持つ「エンボディドAI」、応用拡大へ 合成データ活用してロボットアームの性能を向上

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自己認識能力を持つ「エンボディドAI」、応用拡大へ 合成データ活用してロボットアームの性能を向上

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汎用エンボディド(Embodied=身体性を有する)AIを手がける中国スタートアップ企業「跨維智能(DexForce)」がこのほど、聯想創投(Lenovo Capital and Incubator)から資金を調達した。資金は主に製品開発、チーム拡大、市場開拓に充てられる。

2021年6月に設立された跨維智能は、3Dモデル生成AI、マルチモーダル大規模言語モデル(LLM)、3Dイメージングなどの画像処理技術をベースに、ハードウエアとソフトウエアを一体化したエンボディドAIのソリューションを提供している。エンボディドAIとは、環境と相互作用しながら、そこから学習して自らの機能を継続的に改善していく次世代AIのことを指す。

創業者で香港中文大学(深圳)教授の賈奎氏は、AIやコンピュータビジョン、機械学習、3Dモデリング、3Dセンシング大規模言語モデルの研究に長年携わってきた。

賈教授は中国や海外の学術機関を経て、2016年から華南理工大学でAIを使った3Dセンシングの研究に着手した。18年以降はシミュレーションで学習したモデルを実世界で使う強化学習手法の「Sim2Real」によって、物理エンジンで3Dシミュレーションデータの合成に取り組み、これが跨維智能のコア技術となっている。

エンボディドAIは操作対象、環境、タスクの複雑さに応じ、5つの段階を経ながら機能を向上させていくと、賈教授は語る。ある程度決まったシーンで特定のタスクを処理する専用ロボットから、任意もしくは未知のシーンに対応するロボットへとアップグレードされ、最終的には自己適応が可能な汎用ロボットとなって、任意のタスクをこなせるようになる。

賈教授によるエンボディドAIの成長段階

エンボディドAIの学習から実用化へのプロセスを大きく阻んでいるのは、質の高いタグ付きデータの少なさだ。言語モデルや画像・動画の生成AIとは異なり、エンボディドAIの基盤モデルを訓練するには物理世界の絶対座標に基づいた膨大かつ正確な計測データが必要になり、データ取得の難易度やコスト、タグ付けの量は言語モデルをはるかに上回る。

跨維智能は現実世界のデータを合成データに置き換えることでコストを抑え、効率的で信頼性の高いソリューションを提供している。同社のSim2Real技術は、物理シミュレーションのロボット操作に、作業に伴う実世界のさまざまな障害を組み込み、レンダリングや軌跡データ、関節データの記録などを通じて正確にタグ付けされた膨大な合成データを作り、そのデータをエンボディドAIの大規模言語モデルに用いるというものだ。

跨維智能の技術の活用シーン

跨維智能のSim2Real技術によって、現実の3Dデータを使わずに、複雑なシーンで作業するロボットアームのための3Dビジョンモデルを訓練できる。100%合成データで訓練したモデルを導入したロボットアームは、99.9%以上の安定した操作と把持が可能になるという。

同社のエンボディドAIソリューションはすでに半導体、自動車、太陽光発電などの製造現場で導入されている。2023年5月にリリースされた産業用3Dカメラ「Xema」シリーズはAPIとSDKを公開しており、ユーザーは二次開発のコストを削減できる。

(翻訳・大谷晶洋)

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