中国製EVの猛攻で日本車が敗北?「BYDは王者トヨタに勝てない」―中国の自動車専門家が予言

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

大企業注目記事

中国製EVの猛攻で日本車が敗北?「BYDは王者トヨタに勝てない」―中国の自動車専門家が予言

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

中国の自動車メーカー江淮汽車(JAC)の元会長・左延安氏が、先日開催されたフォーラムで、EVメーカーのテスラや比亜迪(BYD)が業界の王者トヨタ自動車に勝てる公算は低いとコメントした。

近年、トヨタは中国市場で苦戦しているとはいえ、世界トップの自動車メーカーであることに変わりはない。左氏によれば、市場投入を急ぐ新興メーカーと違って、トヨタは時期や情勢を見極め最適なタイミングで仕掛けてくる。その手中にはさまざまな「カード」がそろっており、切り札を含めどのカードをどのタイミングで出すべきかを熟知しているという。

続けて左氏は、自身の発言の根拠としてソフトウエア、技術戦略、企業経営の側面からトヨタの強みを解説した。

まずソフトウエアに関して、トヨタが2023年3月期決算で4兆9449億円の純利益を出していることから、ソフトウエア開発に必要な演算能力の確保も何ら問題はないとし、もしテスラの自動運転システム「フルセルフドライビング(FSD)」がオープンソース化されれば、すぐにでも実装できる能力があるとした。

さらに技術戦略について、今後しばらくはハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、ピュアEV、ガソリン車が市場に混在し、短期的に特定の方式が淘汰されることはないとの見通しを示し、EVだけでなくHEVや水素燃料電池などを幅広く展開する「全方位戦略」のトヨタには理想的な状況だと語った。

企業経営では、トヨタ式「カイゼン」や情報共有とフィードバックの仕組みなどを通じ、企業の健全で持続的な成長を維持していることに言及した。

左氏はこれらを総合して、トヨタは機が熟せばいつでも攻勢に出ることができ、EVで快進撃を見せるBYDやテスラもトヨタの敵ではないと結論した。

中国BYDの高コスパEVは「米国には作れない」 車両の分解で明らかにされた驚きの理由

揺らぐ「日本車神話」

こうした「中国車には負けない」見方は、業界内でもしばしば耳にする。例えば、昨年6月に開催された第15回中国自動車青書フォーラムで、韓国の自動車大手・起亜(KIA)中国事業の楊洪海COOは、同社が2023年1~3月にグローバル市場で21億ドル(約3300億円)の利益を上げたことに触れ、現時点で中国市場が順調ではなくても、潤沢な資金さえあれば生き残っていけると語った。

しかし数字を見ると、起亜は2016年に中国で65万台を売り上げて以来、落ち目となっており、特に新エネルギー車の普及が進み中国市場の競争が激化してからは、製品力の劣る起亜は完全に落後している。

(画像:奇偶派)

トヨタの販売台数も決して楽観視できる数字ではない。2021年に中国市場で前年比8.2%増の194万4000台を売り上げた後は、販売台数が2年連続で前年を割っている。グローバル市場ではこの間も販売台数が伸びているのとは対照的だ。

この相反する業績から分かるのは、中国メーカーが急激に競争力を高めた結果、中国の消費者にとってトヨタの魅力が薄れてきたという現状だろう。

実際、EV専用プラットフォーム「e-TNGA」を採用したトヨタ初の量産型EV「bZ4X」は、2023年に中国市場で3万3094台を売り上げたが、同モデルはトヨタ史上まれに見る失敗作と酷評された。

航続距離の冬季テストで、最も安い「QQ Ice Cream(氷激凌)」にも劣る「bZ4X」(画像:懂車帝冬測)

トヨタが圧倒的優位に立っているハイブリッド技術をめぐっても、手ごわい挑戦者が現れた。BYDが5月28日に第5世代のPHEV技術「DM」を発表、エンジン熱効率は現時点で世界最高となる46.06%、航続距離2100kmを実現し、100km当たりの燃料消費量を2.9Lに抑えた。このDMを搭載した「秦L」と「SEAL(海豹)06」は9万9800元(約220万円)からという低価格で売り出される。

日本車神話に終止符か。中国BYD、最新PHEVを発表 航続2100kmで220万円から

BYDの王伝福会長は発表会で「世界最先端のPHEV技術は中国にある」「『ハイブリッドは日本』という神話に終止符を打った」と声高にアピールした。ハイブリッド技術をめぐる日中の新たな戦いで、トヨタの今後の動きに注目が集まる。

巨大企業トヨタに比べれば、BYDは子どものようであり、グローバル市場においても新参者だ。しかし、そのアグレッシブな戦略は中国市場で急成長を遂げる足がかりとなり、そこからグローバル市場へと打って出る道も開ける。短期的な成果や最新技術だけに目を奪われることなく、長いスパンで成り行きを見守る必要があるだろう。

*1ドル=約157円、1元=約22円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録