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液体水素技術の研究開発を手がける中国のスタートアップ企業「萊登低温科技(Leiden Cryogenic Technology)」がこのほど、エンジェルラウンドで深圳市啓賦天使私募創投と寧波天使引導基金から数千万元(数億~十数億円)を調達した。資金は、液体水素貯蔵タンクや水素液化装置、液体水素・超電導蓄電装置プロトタイプの開発、チームの拡大に充てられる。
2020年に設立された萊登低温科技は、超低温技術と超電導技術を生かして、水素エネルギーの製造、貯蔵、輸送に関わる装置の開発と活用に取り組んでいる。低温冷凍機や窒素液化装置、水素液化装置のほか、蒸発をほぼゼロに抑える液体窒素貯蔵タンクと液体水素貯蔵タンクといった製品を開発し、液体水素の大規模な貯蔵や輸送、蓄電の技術に関する特許の取得も進めている。
同社は低温、超伝導、液体水素、液体窒素などの最先端分野で多くのコア技術を有している。15年以上にわたり低温分野に携わる創業者の朱鈺吉氏によると、逆カルノーサイクルの原理に基づき同社が開発した冷凍機は、極低温で温度帯が広く高効率、小型、軽量、低騒音などの特長を有し、1分以内にマイナス200度以下(最低温度はマイナス270度)まで温度を下げられる。
この冷凍機は現在、低温医療、低温生物学、超伝導、蒸発抑制システム、半導体、航空宇宙などの分野で広く活用されている。
水素エネルギー事業では、分散型エネルギー源を利用したグリーン水素の製造や液体水素の貯蔵・輸送に注力している。水素の貯蔵・輸送は、水素エネルギー産業の製造サイドと消費者を結ぶ重要な部分となっている。水素は一般的に高圧ガス、低温の液体、固体、有機ハイドライドによって貯蔵され、液体の場合は水素ガスをマイナス252.8度で液化し、専用タンクで貯蔵する。
萊登低温科技は、特殊なエアロゲルによる超高真空の多層断熱、蒸気冷却シールド、超臨界貯蔵など低温・液体水素分野の最先端技術をベースに、液体水素の長距離輸送に適した貯蔵タンクや超臨界高密度貯蔵タンクのほか、PEM電解槽と組み合わせて1日10リットル以上を製造可能な小型の水素液化装置を開発し、液体水素の確保や安全な長距離輸送の問題解決にも注力する。
「水素液化装置はウォーターサーバーのように、水を入れると水素の製造・液化装置を通して高純度の液体水素を作り、貯蔵もできる」。朱氏によると、水素の製造と貯蔵が可能な同社の複合型装置は、独自開発したクロードサイクル冷凍システムに、同社のスターリング冷凍機と貯蔵タンクを組み合わせたもので、極めて少ない電力で蒸発がほぼ無い液体水素貯蔵を実現できるという。
この装置で作られた液体水素は、燃料電池車(FCV)の水素燃料としてそのまま使える。
注目すべき同社のコア技術として、海洋エネルギーを使った液体水素・超電導蓄電技術がある。これは、超伝導と液体水素の製造・貯蔵を融合し、海洋エネルギーを使って水素エネルギーを生み出す技術だ。
朱氏によると、低温冷凍と超伝導の技術を活用して、洋上で水素を製造するために必要な電力と淡水を得られるシステムを開発した。それには、風力や波力を利用した発電システム、海水を使った水素製造装置、水素液化装置、液体水素貯蔵・輸送システムなどが含まれている。
同社は液体水素の貯蔵・輸送技術を生かして、洋上で作った水素を長距離輸送するという次のステップに踏み出し、洋上での発電から水素製造、液体水素貯蔵・輸送、蓄電に至る総合的なシステムの構築を目指している。このシステムはすでに技術プランの設計を終え、事業化の準備が進んでいる。
また、液体窒素事業では複数の装置を開発し、バイオエンジニアリングと半導体の分野で1000万元(約2億円)規模の受注を獲得した。建設を計画している量産工場は今年末から稼働する予定で、年間数百台が見込まれる窒素液化装置と水素液化装置の需要に応えられるという。
萊登低温科技はすでに数千万元(数億~十数億円)に上る次の資金調達を進めている。将来的には、風力エネルギー、太陽光エネルギー、潮汐力エネルギーだけを使ったグリーン水素の大規模な製造・貯蔵・輸送を目指すという。
*1元=約22円で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)
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