スマートEV「理想ONE」 2019年モデルを飛ばして2020年モデルを納車する理由と背景

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10月半ばに、スマート電気自動車(EV)メーカーの「理想汽車(LEADING IDEAL)」は「理想ONE」の予約客に対し、2019年モデルを飛ばして直接2020年モデルを納車すると発表した。

同社初の量産車となるレンジエクステンダーEV・理想ONEは昨年10月に正式発表され、今年4月10日から予約が開始された。販売価格は32万8000元(約500万円)。同社の初期計画において、理想ONEのグレードや品質はBMWの「X5」やテスラの「Model X」をベンチマークとしていた。

2019年モデルと比べると2020年モデルは車体のスペックはアップグレードされているが、価格は据え置きだ。しかし初回の納車時期が11月から12月に延期される。

2020年モデルに関して、理想汽車は10項目のアップグレードを挙げた。例えば、2列目のガラスを単板ガラスから二層の防音スモークガラスにアップグレードし、フロントグリルの内部にエアインテークグリルを加え、タイヤをミシュランのコンフォートタイヤ「PRIMACY」にアップグレードするなどしている。運転支援システムに関してはLCA(車線変更支援)切り替えスイッチを追加し、LCA機能の最適化も行った。足で開閉できるトランクの感応センサーも納車時から使用可能だ。

そして比較的大きな変更といえば、6シートモデルの2列目シート外側のアームレストが無くなったことだ。以前の宣伝やイメージ図では、2019年モデルの2列目シート両側にアームレストがあった。

シート外側のアームレストを無くした6シートモデル

2020年モデルは価格据え置きのまま各種スペックがアップグレードされたものの、これらの変更は契約違反ではないかとの声が一部の顧客から上がっている。

顧客にとって一番の不満は納車時期の延期だ。現時点で理想ONEの予約は1万件近い。もし納車時期が12月に延期されるとすれば、多くの顧客は来年になってやっと車が手元に届くことになるだろう。理想汽車は「10月21日以降に顧客の予約を確定し、具体的な納車時期を更新していく」としている。

このほかに、2020年モデルでは2列目シート外側のアームレストが無くなったことにも顧客は疑問を呈している。

理想汽車によると、当初2列目の独立シート両側にアームレストをデザインしたのは、SUV車のオーナーにも大型ミニバンのような乗り心地を体験してもらうためだったという。しかし「動きのある実際の生活シーンにおいて、理想ONEのシート外側のアームレストには安全上のリスクや不便さなどの問題があった」としている。

ある顧客は、試乗車にナンバープレートが発行されているのは国の定める各種の安全規定に合致しているからだとし、「もし安全上の問題があるならば免責事項にサインして、両側アームレスト仕様を選ぶ顧客もいるだろう。両側アームレストというのは車両を選択する際に多くの顧客にとって重要な要素となったはずだからだ」と語った。

情報筋は、新モデルでは車両2列目に防音ガラスを施し、ドアにも防音材料を使ったことでドアパネルが厚くなってしまい、外側のアームレストを無くさなければならなかったと分析している。理想汽車は車両後列の防音効果はアームレストよりも重要と考えており、「これは取捨選択の問題だ」とした。

理想汽車の2020年モデルは、来年4月に行われる北京モーターショーで発表される予定だった。同社はまた、その時には2019年モデルのオーナーに対して無料でハードウェアのアップグレードをするとしていた。

2019年モデルを飛ばして直接2020年モデルを納車することについて、理想汽車は「第一弾の顧客により満足してもらうため、そして購入後のアップグレードがもたらす煩雑さを解消するため、サプライヤーと協力して前倒しでより優れた2020年モデルを納車することにした」と説明している。2019年モデルは社内で使用する予定だ。

同じく新興EVメーカーの「蔚来汽車(NIO)」はバッテリー発火事故によるリコール、「小鵬汽車(Xpeng Motors)」は航続距離を伸ばした新モデルを巡って旧モデルオーナーから抗議を受けるなど、中国国内のEV各社は難しい局面に立たされている。理想汽車初の量産車として、理想ONEが背負うプレッシャーは大きい。そのため納車には慎重にならざるを得ないのだろう。
(翻訳・山口幸子)

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