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液化水素の活用は、将来的に水素エネルギーや水素燃料ステーション、水素自動車などを支える重要な技術路線の1つになると期待されている。水素エネルギー技術の発展には複数の道筋が考えられるが、中国の水素エネルギー産業がさらに発展するためには、水素貯蔵の効率化とコスト改善が欠かせない。
中国の水素資源は西北部の寧夏回族自治区や甘粛省などに集中しており、水素製造コストも低い。一方で、水素利用は東南部に偏っている。そのため、大量貯蔵と長距離輸送のできる液化水素が、水素エネルギー産業の発展のカギを握っている。
水素はマイナス253度の超低温に冷却すると液化し、エネルギー密度も安全性も高まる。米国や日本、韓国ではすでに、液化水素の貯蔵・輸送や活用をめぐるサプライチェーンが比較的整っている。水素ステーションのデータベースを提供するH2stations.orgによると、世界の水素ステーションは2021年末時点で685カ所あり、中国以外の国では3分の1が液化水素ステーションだった。
欧米や日韓などで液化水素の貯蔵・輸送は大規模展開の段階に入っているが、中国の液化水素市場はスタートラインに立ったばかりだ。しかし、ここ数年で液化水素の国家標準規格や関連政策が打ち出されたことで液化水素市場は大きなチャンスを迎え、2016年に設立された国富氫能(GUOFU HEE)や中科富海(FULLCRYO)などがすでに液化水素事業を展開している。中でもとくに注目したいのが、液化水素の生産から貯蔵・輸送、補給ステーションまでを一貫して手がける「陕西同塵和光低温科技(Shanxi Tongchen Heguang Cryogenic Technology)」(以下、同塵和光)だ。
同塵和光は2023年に陝西省西安市で設立された。主力製品は、中・小型の液化水素ボンベや液化水素の充填システム、液化水素燃料の供給システムなど。すでに液化水素の生産や充填に関する技術を確立しており、現在は貯蔵・輸送に関する技術と設備を開発中だという。
陝西省でこのほど、液化水素を燃料とするドローンのプロトタイプが初めて試験飛行に成功した。このドローンには軽量・小型の液化水素ボンベと燃料電池システムが搭載されている。うち液化水素の充填システムと液化水素燃料の供給システムは、同塵和光と西安交通大学が共同開発したものだ。
液化水素は貯蔵や輸送の効率が非常に良いため、長距離を移動する大型のモビリティツールへの活用が期待される。同塵和光の技術責任者を務める李永新氏の話では、輸送距離が205kmを超えると、圧縮水素ガスは100kmごとに輸送コストが10元(約200円)増えていくが、液化水素の輸送コストは変わらないという。しかも、液化水素ガスの密度は圧縮水素ガスの3倍に上るため、貯蔵量の点でも優れている。
同社は現在、1日あたり0.5トンの液化水素を製造できる生産ラインの建設を計画している。軽量で持ち運び可能な中・小型の液化水素ボンベの利点を生かして川下市場の開拓を進める方針で、すでにeVTOL(電動垂直離着陸機)メーカーとの提携が決まっている。また、今後は液化水素を燃料とする大型トラックや航空機などの共同開発も目指すという。
李氏は、水素の液化技術は比較的成熟しているものの液化コストが高いことに触れ、輸送コストの強みで液化コストを相殺するため、液化水素の大規模活用を進める必要があると話す。液化水素産業では生産規模が拡大するとエネルギー損失が減少するため、1日あたり30トン生産すれば損益分岐点に達する。また、中国西北部にある十分すぎるほどの風力発電や太陽光発電のリソースを利用し、水の電気分解によって水素を製造することで水素価格を引き下げられるという。
同塵和光は、陝西省の水素エネルギー産業をたばねる「陝西維納数字科技」が液化水素の冷却技術を専門とする西安交通大学の教授2人と共同設立した技術移転型企業で、中心メンバーには同大学や陝西科技大学を卒業した大手エネルギー企業出身者がそろう。
*1元=約20円で計算しています。
(翻訳・田村広子)
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