フォルクスワーゲン、中国EV事業を安徽省の拠点に集約 開発・新車発売のペースアップへ

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ドイツの自動車大手フォルクスワーゲンは組織改革に伴い、中国における電気自動車(EV)開発事業を安徽省にある開発拠点「大衆汽車(中国)科技(VCTC)」に集約した。北京市にある研究開発センターは一部のハイブリッド車の開発を続けるが、多くの従業員が安徽省VCTCに異動または別事業への配置転換となる。

VCTCが開発した新車種の生産と販売は、フォルクスワーゲンが中国に設立した3つの合弁会社(大衆安徽、上汽大衆、一汽大衆)が担当する。

将来的に、フォルクスワーゲンが中国で開発するEVは2つのEV用プラットフォームに集約される。1つは、グローバル市場向けに開発した「MEB(Modular Electric Drive Matrix)」。VCTCは、MEBを採用した新車種を中国市場に適合させる現地化業務を担う。もう1つは、中国市場向けに開発された「CMP(China Main Platform)」で、このプラットフォームを採用した新車種の開発はVCTCが指揮を執る。現在、VCTCの従業員数は2000人ほどだが、増員して今年中に3000人を目指すという。

フォルクスワーゲンの組織改革のイメージ

こうした動きからは、フォルクスワーゲンが中国でのEV事業を強化しようとしていることが見て取れる。VCTCの設立以前、フォルクスワーゲンのEVは全てドイツ本社で開発されていた。中国にある合弁会社の一汽大衆と上汽大衆は独自のポジショニングや市場戦略に基づき、ドイツで開発されたモデルを中国市場に適合するよう改良を加え、新型車としてそれぞれで発売していた。

しかし、合弁会社2社のEV事業は決して順調には進まなかった。「EVはなかなか売れず、採算も取れないため、現場の士気は上がらない」と関係者は話す。フォルクスワーゲンは、2030年までに中国市場に少なくともEVを30車種投入する目標を掲げているものの、現時点ではわずか11車種にとどまっている。

これまでの体制では、フォルクスワーゲンが中国で新車を販売する場合、必ず合弁会社を通じて現地化し、中国市場に合わせた製品に仕上げる必要があった。しかし、合弁会社がEV事業に消極的だったことが一因となり、同社のEV化戦略は大いに難航してきた。中国のEV市場ではめまぐるしい速さで製品がアップデートされているため、フォルクスワーゲンも組織改革に乗り出さざるを得なくなった。

今回の組織改革の中心は、中国でのEV開発をVCTCに集約することだ。VCTCが中国市場におけるフォルクスワーゲンの命運を握っていると言っても過言ではない。

まず、VCTCはフォルクスワーゲンの中国におけるEV化戦略を大いに後押しすることになる。中国市場向けのCMP車両の開発だけでなく、今後はグローバル市場向けのMEB車両の現地化もVCTCが主導する。これにより製品の開発サイクルは30%短縮され、新車種投入のペースが向上する。

また、基盤技術を確立することで長期的なコスト削減効果も期待できる。VCTCがフォルクスワーゲンのソフトウエア子会社CARIAD中国および中国EVメーカー小鵬汽車(Xpeng)と共同開発したE/E(電気・電子)アーキテクチャ「CEA(China Electrical Architecture)」はその一例だ。このアーキテクチャを採用することで車内の電子制御システムが大幅に改善し、使用するコントローラーの数を30%削減できるようになった。CMPをベースに開発する新車種では、小鵬汽車との共同調達も予定されており、製造コストの削減に直結することが見込まれる。

計画では、小鵬汽車と共同開発したCMPをベースにVCTCが開発を主導する新車種を2026年に発表し、大衆安徽の直販システムを通じて販売するという。新車販売台数は目標に届くのか、中国市場のニーズに合った製品やサービスを提供できるのか、フォルクスワーゲンの真価が問われることになる。

(翻訳・畠中裕子)

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