焦るアップル 5Gモデムチップの内製化という次のカードを切る 2022年の完成を急ぐ

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焦るアップル 5Gモデムチップの内製化という次のカードを切る 2022年の完成を急ぐ

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米アップルの5Gモデムチップ内製化というニュースは今さら新鮮味はない。

アップルはベースバンドモデムチップの調達先をころころと変えてきた。独インフィニオンテクノロジーズから米クアルコムへ、今度は米インテルへ行ったかと思えば、またクアルコムへ舞い戻った。アップルはこの間、研究開発に注力しiPhoneのコアCPU、Mシリーズのコプロセッサー、パワーマネジメントIC、音声関連コンポーネント等の内製化を進めてきたがモデムチップは例外である。

クアルコムと特許紛争で和解したことでチップの供給を受けられ、来年には5G対応iPhoneのリリースが確約されている。しかしアップルは自社開発をまだ諦めていないようだ。

2017年、当時クアルコムの半導体部門を率いていた副社長Esin Terzioglu(エシン・テルジョグリュ)氏を引き抜き、無線通信SoCチームを一任した。今年になって同チームはサプライチェーン部門から内製ハードウェア技術部門へ移管、米カリフォルニア州サンディエゴに1200人規模のオフィスが新設された。さらにインテルからスマートフォン向けモデムチップ事業を買収した。

アップル製モデムチップの発表は2021~25年頃になるのではと予想されている。

アップルはなぜそれほど急ぐのか。

スマホ市場は斬新さが求められる

スマートフォンの出荷台数は世界規模で鈍っている。米調査会社ガートナーによると、2019年の出荷台数は前年比2.5~3.8%減少し、これまでで最大の落ち込みとなる見通しだ。

これはアップルにも影響を与え、従来の主力事業だったスマホ販売事業からサービス事業への転換を迫られている。これまで売上高の6割超を支えてきたiPhoneは、今後も頼みの綱であることに変わりない。

ハイエンド機種は使用寿命が延びており、iPhoneは新たな消費のきっかけをつくり出す必要がある。

当時は斬新だった初代iPhoneのマルチタッチ、その後の指紋認証、顔認証、写真の被写体を認識するコンピュータービジョン「ピープル」など業界の先を行く技術で世界のスマホ産業をけん引してきた。話題をさらっていたiPhoneだが、最近では他社に持っていかれている。

近年、アップルの新モデル発表会は話題性に欠ける。5G対応やトリプルカメラ、クアッドカメラのアンドロイド端末が次々とリリースされる中、2019年に発表したiPhone11は未だに4Gのままだった。

チップこそが次の切り札となるかもしれない。

チップの内製化でスマホメーカーがグリップを握る

アップルがモデムチップの内製化を進めるのは、コストや品質のコントロールに対してより大きな発言権を持つことが目的だ。これまでクアルコムとインテルの間で揺れ動きながら、アップルは「良いものは高い」と身をもって学んだ。

アップルがクアルコムに支払った対価は、2010~2016年でチップ購入費161億ドル(約1兆7400億円)と、特許使用料72億3000万ドル(約7800億円)にのぼる。これはアップルの売り上げの約2%に相当し、クアルコムの売上高のうち16%をアップルが貢献したことになる。

クアルコムの収益はiPhoneの販売単価と連動するモデルで、端末が高く売れれば特許使用料もその分高くなる。これは2社が仲違いとなる一因にもなった。

モデムチップを自社生産に切り替えるには多額の投資が必要になる。だが長い目でみれば、川下の端末メーカーが川上の部品メーカーの役割も担い、一体化した生産によって最終的にコストの削減を実現できるだろう。業界が不景気になり競争の激しい時に、アップルはあえてこれをやろうというのだ。

品質については、モデムチップだけでなくチップセット全体を向上すべく取り組んでいる。現在iPhoneにはCPU、GPU(画像処理半導体)、RAM、モデムなど複数のチップがあり、自社製と他社製が混在する。もしモデムを内製化できれば、5Gデータ通信や演算処理など複数の機能を一本化するSoC(システム・オン・チップ)の開発も進む。

大手にしっかりと握られていたベースバンドモデムチップ市場は開放されつつある。アップルの行動は決して早くはなかった。ライバルのファーウェイは54%のモデムチップを内製、サムスンも52%が内製だと今年1月にクアルコムの弁護士が独禁法裁判のなかで明かした。

ファーウェイは今年1月、5G対応チップ「Balong 5000」を発表した。9月に発表した5Gモデム内蔵のSoC「Kirin 990」シリーズは、4Gコアネットワークを経由するNSA(ノンスタンドアローン)方式と単独で5Gネットワークを利用するSA(スタンドアローン)方式の両方に対応するデュアルモードで、業界他社の製品と比べ36%の小型化に成功したという。

アップルが焦るのも無理はない。
※画像はVisual Hunt提供。
(翻訳:貴美華)

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