中国のEV電池、迫る「大量廃棄」時代。注目のスタートアップ、独自技術で高い回収率実現

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リチウムイオン電池のリサイクルサービスを手がけるスタートアップ企業「安徽恒創睿能環保科技集団(RuiCycle)」(以下、恒創睿能)がこのほど、シリーズCで国芯創投(Hefei Guoxin Capital)や君聯資本(Legend Capital)、隠山資本(Hidden Hill Capital)などから数億元(数十億円超)を調達した。資金は市場開拓や技術開発に用いられる。

恒創睿能は2017年に設立され、リチウムイオン電池のカスケード利用やリサイクルに従事する企業として、中国政府が正式に認めたホワイトリスト企業に選出されている。創業者の陳志鵬CEOは長年にわたって低炭素化分野に深く関わり、多くの実績を上げてきた。

リチウムイオン電池のリサイクル方法は、大きく分けてカスケード利用と再資源化の2つがある。

カスケード利用とは、劣化したバッテリーパックやセルを分解し、検査や選別を経て、品質レベルに応じて用途を変えながら再利用することを指す。EV用バッテリーの寿命は通常5~8年とされ、バッテリー容量が80%にまで低下すると使用に適さなくなるため、その後は電力要件の低い低速電動車用などに活用される。中国では2026年、EVバスやEVタクシーのバッテリーが一斉に寿命を迎え、大量廃棄のピークが訪れると陳CEOは指摘する。

カスケード利用にも適さない廃バッテリーについては、ニッケルやコバルト、リチウムなどの金属材料を回収し、再資源化する。再資源化には高度な技術が求められ、主要材料の回収率が技術力を測る指標となる。

恒創睿能は、金属材料を回収する独自技術を確立しており、帯電破砕による高い材料回収率を誇る。また、湿式製錬の浸出液に酸性度の低い溶液を使用することで、廃水を減らして環境負荷を軽減し、消費エネルギーやコストの削減にも成功した。

同社はこれまで国の重点プロジェクト「循環経済技術と装置」の研究開発計画や、広東省の重点プロジェクト「新エネルギー車」研究開発計画などに参加してきた。2020年には広東省環境保護科学技術賞で1位を、21年には江蘇省科学技術賞で3位を獲得するなど、数多くの受賞歴もある。

廃バッテリーの調達先として、恒創睿能はまず電子機器向けのバッテリーに狙いを定め、徐々に駆動用バッテリーや蓄電池へと範囲を拡大し、最終的にあらゆる種類のバッテリーに対応することを目指している。すでに米アップルのサプライチェーン企業となっているほか、中国各地のバス会社と提携しており、深圳バスで最初に廃棄されたEVバス200台分のバッテリーを受け入れている。駆動用バッテリーを生産する中国BYD(比亜迪)やサンオーダ(欣旺達)なども同社の顧客だ。

今回の資金調達に成功したことで、同社は市場開拓や技術開発をペースアップし、十分な準備を整えてバッテリーの大量廃棄時代の到来を迎えることができるだろう。

中国のバッテリー交換サービス、ブロックチェーン技術を活用 追跡可能で電池リサイクルの効率向上へ

*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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