中国で広がる火鍋のデリバリー、アリババ系生鮮ECの「盒馬」も市場に参戦

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

大企業編集部お勧め記事注目記事

中国で広がる火鍋のデリバリー、アリババ系生鮮ECの「盒馬」も市場に参戦

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

アリババが展開する次世代スーパーの「盒馬(Hema Fresh)」の候毅総裁は先ごろ、中国で人気の高い鍋料理「火鍋」のデリバリーサービスを開始することを明らかにした。価格は一般的な火鍋専門店の半分に抑えるという。国内20数都市でサービスを展開し、対象地域内であれば火鍋をデリバリーで注文することができる。

火鍋市場は競争の激しいレッドオーシャン

中国の外食市場規模は2018年末に4兆元(約60兆円)を突破した。そのうち火鍋の市場規模は4800億元(約7兆2000億円)、2017年にはジャンル別で13.7%とトップシェアを占め、翌年も10%以上を維持している。

データの出典:国家統計局、iiMedia Research、中信建投証券研究発展部

火鍋のデリバリーも堅調だ。最初にデリバリーサービスを始めたのは火鍋専門店の「海底撈(Haidilao)」で、2010年にサービスを開始し、2018年にはデリバリー部門の売上高が3億元(約45億円)を超えた。生鮮ECの「毎日優鮮(MissFresh E-Commerce)」も数年前から火鍋の取扱いを始めている。盒馬には後発者としての戦い方が求められるだろう。

写真:盒馬アプリ

盒馬の主要顧客は「80後(1980年代生まれ)」「90後(1990年代生まれ)」の若年層に集中している。若年層の特徴のひとつは「面倒を嫌う」ことだ。このため、食材の組み合わせに悩みたくなければ、おすすめメニューを選び、ワンクリックで鍋つゆの味に合わせた食材を購入することができるようになっている。

火鍋のデリバリーに関しては、店舗から3キロメートル圏内であれば30分で配達する。海底撈は90分以内の配達を謳っているが、それに比べると配達時間で圧倒的な優位性を誇る。

火鍋のデリバリー事情は

火鍋業界で上場しているのは鍋料理専門店の「呷哺呷哺(xiabu xiabu)」と海底撈の2社だけだ。この2社はデリバリー業務でもそれぞれの立場を明確にしている。

海底撈は一貫してサービスを重視しており、デリバリーも例外ではない。調理用の鍋や卓上電磁調理器も配達可能で、専門のスタッフを配置し、店内と同様に長い髪を結ぶためのヘアゴムやスナック菓子も準備している。

一方、行き届いたサービスがゆえに価格は高めとなっている。2~3人分のセットを調理器具と一緒に注文した場合、最終的な支払い額は407元(約6100円)となり、店内で食事をするよりも高くなる。また、配送にかかる時間についても、店舗から5キロメートル圏内で60分、10キロメートル圏内で90分と、熱々の火鍋をすぐに食べたいという要望には応えられていない。

呷哺呷哺は2015年にデリバリー業務に乗り出した。同社は大衆路線を打ち出しており、配送はフードデリバリー業者に外注している。配送時間は店舗から3キロメートル圏内で約50分、2人前セットの価格は127元(約1900円)だ。

海底撈と呷哺呷哺の場合、火鍋のデリバリーを通して店内と同じ体験を届けたいという意図がはっきりしている。一方、盒馬は生鮮ECであり、サービスの対象は家で食事をしたいが食材選びにうんざりしている若者で、彼らには調理をする腕も意欲もある。

盒馬は現時点では調理器具は取り扱っておらず、回収作業による物流コストも発生していない。実店舗でのサービスとしては、店内にテーブルを設置して同社の火鍋を提供しているものの、例えば北京市の十里堡店でもわずか10テーブルほどと数は多くない。

盒馬がより重視するのは、家庭でも安全な食材を使ったコストパフォーマンスの高い火鍋を手軽に食べられるようにすることだ。同社は火鍋の注文のほとんどがオンライン経由で行われるとみている。

生鮮EC各社の取り組み

毎日優鮮などの生鮮ECも火鍋のデリバリー業務を手掛けており、盒馬との激しい競争が繰り広げられそうだ。毎日優鮮は2017年冬にサービスを開始しており、今年は関連商品の売り上げが1億元(約15億円)を突破する見通しだ。

盒馬とは違い、毎日優鮮はオリジナルの鍋用調味料などは出さず、有名な火鍋専門店との提携を進めている。だが、将来的にオリジナルブランドの鍋用調味料を発売する可能性もあるとしている。

同じく生鮮ECの「叮咚買菜(dingdongmaicai)」もミニプログラム上に火鍋のカテゴリーを設けている。同社は2017年末に火鍋用食材の販売を始めているが、現時点で配送区域は上海及びその周辺に限られている。

インターネット上の情報をまとめて作成

盒馬の同業他社との大きな違いは実店舗で火鍋を味わえる点だ。ただし、あくまで体験であり、焦点はオンラインの顧客に合わせられている。

冬季と夏季はフードデリバリーの繁忙期だ。この時期に集客が見込める商品や体験を打ち出すことは、ユーザーのロイヤルティーを高め、ブランドに対する見方を育む上でプラスになることは間違いない。家庭で手軽においしい火鍋を食べられるようにした企業が冬の競争に勝つチャンスを手にするだろう。
(翻訳・池田晃子)

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録