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再使用型ロケットの開発を手掛ける中国宇宙スタートアップ「大航躍遷(COSMOLEAP)」がこの頃、シードラウンドで1億元(約20億円)を調達した。調達した資金は、ロケット回収システムの試験と再使用型ロケット「躍遷号」の開発に用いられる。
大航躍遷は2024年3月に運営を開始。ロケットの捕獲技術とスマート制御技術に注力し、低コストで信頼性の高い再使用型ロケットを開発している。中国で唯一、タワー型の回収システムを採用する民間ロケット企業だ。発射台のタワーに設けた「箸」のような巨大アームでロケットをキャッチする回収装置の検証プラットフォームを構築したほか、ロケットに搭載する飛行制御コンピューター「火石1号」や中国初のロケット回収制御装置「小火石」の開発に成功している。
同社の陳曙光CEOによると、2015年12月にイーロン・マスク氏率いるスペースXのロケット「ファルコン9」が初めて第1段機体の回収に成功したことで、中国のロケット業界も大きな刺激を受け、16年以降には大量のスタートアップが雨後の筍のように現れた。
しかし中国では、いまだ液体燃料を使った再使用型ロケットの軌道投入に成功した事例はない。技術力のある国内の民間ロケット企業も、ファルコン9を参考にしながら再使用型ロケットの開発を進めている段階だ。
スペースXは2019年に、低軌道通信衛星60基を搭載したファルコン9の打ち上げに成功し、大規模な通信衛星網「スターリンク」計画が始動した。24年10月までに、7000基を超える通信衛星が打ち上げられ、それに伴うロケットの回収作業は202回に上った。
中国では、衛星通信サービスを手がける上海垣信衛星科技(SSST)と中国星網集団(CSCN)がすでに実験衛星の打ち上げに成功している。2社の衛星コンステレーション計画に必要な人工衛星は合計3万基近くに上る。1基500kgの人工衛星を、1kgあたり4万2000元(約90万円)で打ち上げると仮定して計算すると、その市場規模は約6000億元(約12兆8000億円)にもなり、商用ロケットを手がける企業にとっては大きなビジネスチャンスとなる。
陳CEOは、中国版「スターリンク」構築に向けた動きは国内の民間ロケット企業に大きなビジネスニーズをもたらすとしつつ、コスト面を考慮すると再使用型ロケットの開発が既定路線になると指摘する。従来の使い切り型ロケットに比べ、再使用型ロケットは1回の打ち上げにかかるコストを60~80%削減できるからだという。
液体燃料を使った再使用型ロケットの回収には、着陸脚を使用して再着陸させる方法と、発射台のタワーに設けたアームでキャッチする方法がある。タワー回収式ロケットの利点としては、長寿命で、輸送能力や開発効率、信頼性がいずれも高いほか、発射台を回収装置として使うためコストパフォーマンスに優れていることなどが挙げられる。
例えば、タワー回収式ロケットは重さ3~5トンの着陸脚が不要なため、同じ規模の再着陸式ロケットよりも輸送能力が高くなる。ロケットの寿命についても、地上に再着陸する場合は着地の瞬間ロケットに大きな衝撃が加わるが、アームを使いロケットを空中でキャッチするタワー回収式ならば、衝撃によるダメージを減らし、ロケットとエンジンの寿命を効果的に延ばすことができる。
また、中国では鉄塔産業が十分に発展しており、数百トンの貨物をつり下げられる技術があるため、数十トンのロケットの捕獲に耐えるタワーを建造するのも十分に可能だ。コストコントロールも世界トップクラスで、将来的に発射台が大規模生産されるようになれば、コスト面での強みをさらに発揮できるだろう。
大航躍遷のアームを使ったロケット回収システムは2024年11月から試験を開始し、26年には初代ロケットの打ち上げと第1段機体の回収を予定している。
*1元=約21円で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)
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