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中国の太陽電池業界は現在、大きな試練に直面している。2023年に始まった急激な生産能力拡大で産業チェーン全体の需給バランスが崩壊し、シリコン材料やシリコンチップ、電池セル、モジュールの価格が一斉に下落した。この影響で、24年は太陽電池メーカー各社の業績が落ち込み、巨額の損失を計上する大手メーカーも現れた。
太陽電池業界が厳冬期を迎える中、業界大手の晶科能源(ジンコソーラー)は中国でいち早くTOPCon技術に注力し、一時は業績を大きく伸ばした。調査会社トレンドフォースによると、2024年末時点の同社の電池セル生産能力は約1417ギガワット(GW)で、うちTOPCon電池が約941GWと66.4%を占めた。
晶科能源の2018年の売上高は245億1000万元(約5400億円)、純利益は2億7370万元(約60億円)だったが、TOPCon電池の生産能力を増強し始めた22年には、売上高が826億8000万元(約1兆8000億円)、純利益が29億3900万元(約650億円)に急拡大した。23年も業績拡大の勢いは続き、売上高は前年比43.55%増の1187億元(約2兆6000億円)、純利益は153.2%増の74億4000万元(約1600億円)に達した。
TOPCon電池で先行して競争優位性を築いた晶科能源だが、その勢いは続かなかった。1月17日に発表された業績予想によると、2024年の純利益は前年比で98.39〜98.92%減少し、8000万〜1億2000万元(約1億8000万〜2億6000万円)となる見込みだ。24年1〜9月期の純利益が12億1500万元(約270億円)だったことから考えると、10〜12月期に少なくとも10億9500万元(約240億円)の損失を出したことになる。
業績予想の発表直後、晶科能源の米国市場での株価は9.77%急落した。人民元建て株式(A株)市場での株価も下落が続いており、1月27日の終値は6.12元(約135円)、時価総額は612億元(約1兆3500億円)と24年のピーク時から41%余り下落している。
晶科能源によると、業績が大きく落ち込んだ最大の理由は、低価格受注による粗利益率の低下だったという。一例を挙げると、電力大手の華潤電力が2024年10月12日に実施した180メガワット(MW)の太陽電池モジュールの競争入札には14社が参加したが、うち8社の入札価格が1ワットあたり0.65元(約14円)を下回った。しかも、最低入札価格は0.531元(約12円)と原価を大きく割り込んでいた。
晶科能源の2024年10〜12月期の業績が悪化したのは事実だが、業界全体から見ればまだ良い方だ。業界最大手の隆基緑能科技(ロンジソーラー)は82億〜88億元(約1800億〜1900億円)の損失を計上する見込みだという。ある証券会社は、24年の太陽電池モジュール出荷量トップ5の企業のうち、通年の純損益がプラスになるのは晶科能源だけかもしれないと予測する。
しかし、晶科能源は市場シェアを拡大するために巨額の負債を抱え、それが株価低迷の要因となった。2024年9月末時点の負債比率は71.89%、負債総額は907億2000万元(約2兆円)で、うち支払手形と買掛金が計349億9000万元(約7700億円)だった。
さらに大きな問題にも直面している。強みとしてきたTOPCon技術が、将来的にBC(バックコンタクト)技術に抜かれる可能性が出てきたのだ。中信建設証券のリポートによると、BC電池はセルの全面にグリッド線がないため、TOPCon電池よりも変換効率が高く減衰係数や温度係数が低いという特長があり、太陽光発電所の周辺機器や工事などの費用(BOSコスト)を削減できる。
以前はBC技術が未成熟だったため、TOPCon電池が主流となっていた。しかし、BC技術の急速な進歩により、BC電池とTOPCon電池の価格差は徐々に縮まっている。隆基緑能科技の計画では、2025年末までにBC電池モジュールの価格をTOPCon以下に抑えられる見込みだという。
大手各社がTOPCon電池の生産を急拡大したことで、過剰供給による出荷価格の低下は避けられない情勢だ。晶科能源の苦難の日々は始まったばかりかもしれない。
*1元=約22円で計算しています。
(翻訳・田村広子)
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