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中国の人型ロボットユニコーン「智元機器人(Agibot)」が、さまざまなタスクを遂行できるよう人型ロボットをトレーニングするため、上海市に巨大な「データ収集工場」を建設し、大きな注目を集めている。36Krは、1月に稼働したこの工場を実際に訪れて取材した。
智元機器人の共同創業者は、ファーウェイに優秀な若手研究者「天才少年」として採用された「稚暉君」こと彭志輝氏だ。彭氏は2022年2月にファーウェイを離れ、智元機器人に創業メンバーとして参加し、現在はチーフアーキテクト兼CTO(最高技術責任者)を務める。
天才少年が在籍する企業ということで、多くの投資家が智元機器人に強い関心を示してきた。同社はすでに6回の資金調達を実施し、現在の評価額は70億元(約1500億円)を超えている。2024年8月には、商用人型ロボットの新製品として「遠征(RAISE)」シリーズの「遠征A2」「遠征A2-W」「遠征A2-Max」、「霊犀」シリーズの「霊犀X1」「霊犀X1-W」の計5機種を発表。同年12月には、上海市に建設した初の人型ロボット量産工場が操業を始めている。
“頭脳”訓練所で働くロボットたち
広さ3000平方メートルのデータ収集工場に足を踏み入れると、そこには映画「スターウォーズ」さながらの世界が広がっていた。工場内には家庭、小売店、サービス業、飲食業、工場という5つのシーンが再現され、ロボットたちが各シーンに応じたさまざまなタスクを黙々とこなしている。
寝室では、器用に洋服をたたむ。
ダイニングでは、食器をテーブルに並べる。
安定した手つきで料理を取り分ける練習もする。
スーパーのレジでは、ハンドスキャナーを持って商品バーコードを読み取る。
データ収集工場の責任者は、智元機器人の製品ライン総裁を務める姚卯青氏だ。これまでに自動運転スタートアップWaymoや新興EVメーカー蔚来汽車(NIO)などで、知覚アルゴリズムとエンドツーエンドモデルの開発を担当してきた。姚氏によると、ロボットの各動作をひとまとまりのデータとしてロボット本体からクラウドにアップロードし、そのデータがAIモデルのトレーニングに利用される。こうしてロボットはアイロンがけやコーヒーをいれるといったスキルを身につけていくのだという。
ロボットが短時間で必要なスキルを習得できるよう、智元機器人ではデータ収集に関わる専門スタッフを配置している。ロボットが物をつかむ、握る、放すといった人の動作を正確にまねできるよう、ポータブルデバイスやVRデバイスを使いながら付きっきりでサポートする。
データ収集工場では100台近い人型ロボットを動かして、日々大量のデータを集めている。将来的には、顧客のニーズに応じてより多くのシーンを再現するため、さらに1000平方メートルほど拡張する計画だという。
大量のデータでロボットをより賢く
智元機器人が高いコストをかけてでもデータ収集工場の建設に踏み切ったのは、業界のデータ不足が深刻だからだ。
同社は2024年6月に、ロボットの頭脳となるAIを開発することに決めたが、それにはAIモデルのトレーニング用データが大量に必要となる。業界内でオープンソースのデータベースを探そうとしたが、フォーマットの統一された高品質なデータはほとんど見つからなかった。実際のロボットから集めたオープンソースの訓練用データセットもあるとはいえ、製造元の異なるさまざまな型式のロボットのデータを寄せ集めているため、智元機器人の求める品質には達していない。このため、自社工場を建設し、大規模にデータを収集することにかじを切ったのだという。
データ収集工場では、稼働を始めてから2カ月余りの間に100万以上の実機データを収集した。タスクは1000種類を超え、1件のタスクには数百から数千の動作データが含まれている。
「間もなくデータ量は1000万を超える」と姚氏は語る。智元機器人の目指すところは、ロボットが人からの指示や周囲の環境を自律的に理解して対応できるよう、エンドツーエンドモデルを搭載したロボットを作り上げることだ。これまでのロボットはエンジニアがあらかじめ設定したルールに従って動いていたが、AIモデルを活用すればロボットに自分で考えて動く「頭脳」を与えることができる。そのためには大量のデータでAIモデルをトレーニングする必要があり、データ量が多いほど、特定のシーンで人に近い動きができるようになるという。
中国のロボット技術全般の進歩はすでに米国に匹敵するレベルにあると、智元機器人は考えている。しかも、AIをトレーニングするのに必要なコストは米国の10分の1で済むうえ、部品も国内で調達できる。智元機器人は低コストと効率的なアップデートで、活用シーンの開拓と大規模なデータ収集を実施していく考えだ。
*1元=約21円で計算しています。
(編集・36Kr Japan編集部、翻訳・畠中裕子)
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