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中国の人工知能(AI)スタートアップ「DeepSeek」が、AI開発をめぐる業界の常識を覆した。これまで、AIモデルの性能は訓練コストと比例すると考えられていたが、DeepSeekは低コストで開発した複数のAIモデルを発表し、高性能なAIモデルの開発に巨額のコストが必ずしも必要ではないことを証明した。
2024年12月に公開された「DeepSeek-V3」は、訓練コストが米メタの「Llama 3」の1%、推論コストは米OpenAIの「o1」の3%に過ぎない。DeepSeekの革命的なブレークスルー(技術突破)は、たちまち世界のテック業界の注目の的となった。同時に、株式市場にも巨大な衝撃を与え、とくに米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)への影響が大きかった。
DeepSeekのAIアシスタントアプリは1月27日、中国と米国のApp Storeで無料アプリランキング1位となった。これを受け、米国のテック株は一斉に急落。27日のSOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)は2020年3月以来最大となる9.2%の下落幅を記録した。NVIDIAはとくに悲惨で、同日の株価は17%下落し、時価総額6000億ドル(約91兆円)が蒸発した。1日で吹き飛んだ時価総額としては、米国株式市場で過去最大級だった。
米テック大手のAI関連支出は増加の一途
DeepSeekの登場で、米国株式市場は演算処理性能の追求に天井が見えてきたことや、企業のAI関連支出が減速することを危惧したようだが、米テック大手の2025年のAI予算は減っていない。
グーグルは2月4日に開いた決算電話会議で、2025年の資本的支出は市場予想を32%上回る750億ドル(約11兆4000億円)になると明らかにした。メタもアナリスト予想の513億ドル(約7兆8000億円)を上回る600億〜650億ドル(約9兆1000億〜9兆9000億円)を支出する方針。マイクロソフトも25年初めに、前年の557億ドル(約8兆5000億円)を超える800億ドル(約12兆2000億円)を支出すると明らかにしている。ただし、マイクロソフトはOpenAIとAI開発をめぐる考え方に違いが生じたため、OpenAIへの追加出資を減らすとみられる。
2025年はグーグル、メタ、マイクロソフト、アマゾンの米テック大手4社の売上高の合計に占めるAI関連支出の割合が22%となり、24年の17.2%からさらに上昇するとの分析もある。
長期的かつ現実的に見れば、DeepSeekの低価格・高性能路線はGPU(画像処理半導体)の需要をさらに押し上げるとみられる。マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は自身のSNSで「ジェボンズのパラドックス」を引用し、資源の利用効率が上昇すると、むしろ資源の消費量は増加すると指摘した。DeepSeekがもたらした演算コストの縮小傾向は、AIアプリ開発のハードルを下げ、アプリの普及がGPUのニーズを刺激する可能性が高い。
米証券会社のキャンター・フィッツジェラルドも「GPU関連の支出が天井に達したとの見方は当たっていない。実のところDeepSeekはコンピューティング業界やNVIDIAにとって非常に有利に働いている」との認識を示した。
複数のアナリストチームも依然としてNVIDIAの先行きを好感しており、米金融大手シティグループのアナリスト、Atif Malik氏のチームはNVIDIAに対する「買い」評価を維持するとしている。
*1ドル=約152円で計算しています。
(翻訳・田村広子)
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