アニメ会社100社以上、スタッフ4000人超が集結。「哪吒2」の大ヒットが示す中国映画産業の成長

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中国で春節(旧正月)に合わせて公開された、アニメ映画「哪吒之魔童閙海」(哪吒2)の勢いが止まらない。2019年に大ヒットした「哪吒之魔童降世」(邦題:ナタ~魔童降臨~)の続編となる同作は、中国の歴代興行収入ランキングと単一市場における世界歴代興行収入ランキングでトップに立ち、映画業界に旋風を巻き起こしている。

中国のアニメ映画は、1960年代のカラー長編アニメ「大閙天宮」(邦題:大暴れ孫悟空)から最新作「哪吒2」に至るまで、60年以上の歳月をかけて蓄積と研さんを重ね、芸術的探求から産業としての発展へと大きな転換を実現した。この発展は、技術の向上だけではなく、産業全体の仕組みや協力体制の革新によってもたらされた。

「哪吒2」の制作には、中国のアニメ会社100社以上とスタッフ4千人余りが集結。特殊効果映像も1900を超える。産業協同プラットフォームを構築することで、モデリング、特殊効果、レンダリングなど全工程が連携する体制が整い、プロジェクトの効率化を後押しした。

「哪吒2」の強力な視覚効果と圧倒的なインパクトの背後には、中国古典文学とクラウドコンピューティングの出会い、伝統的な要素と最新技術の融合がある。

データによると、本作で使われた1900を超える特殊効果映像のうち、約8割が中国国内のチームによって制作された。一部のシーンでは1フレームに2億個ものキャラクターが登場するなど、中国のアニメ技術が世界のトップレベルに匹敵することを示している。

技術チームは「ダイナミック水墨レンダリングエンジン」などの革新的な技術を開発し、中国伝統の水墨画の趣を3Dアニメに取り入れた。また、キャラクターの神通力を表現するために、敦煌の飛天壁画からインスピレーションを得て、粒子流を用いて「存在しているようで、存在していないような」東洋的な美を作り出し、デジタル技術によって「余白の美」を再現することに成功した。さらに、FACSコーディングシステムを活用し、眉のわずかな震えや口元の緊張など細部まで徹底的に捉え、キャラクターの感情を豊かに表現している。

本作のレンダリングサービスプロバイダーの一つ、蘇州藍海彤翔系統科技の陳旭副総裁は、同社のチームは分散型レンダリング技術を基盤に、以下の三つの強みを生かして、高いクオリティーの映像を制作したと紹介した。一つ目は、強力なコンピューティングパワー。七つのデータセンターと数万台のサーバーによって、高速レンダリング処理を実現した。二つ目は、AI(人工知能)による高度な最適化。AIベースのレンダリングリソーススケジューリングシステムを導入し、計算リソースを動的に割り当てることで、特殊効果チームは制作のピーク時でも高い処理効率を維持した。三つめは、コスト管理。柔軟な課金体系を採用することで、制作側のレンダリングコストを40%以上削減した。

「哪吒2」は、中国伝統文化IP(知的財産権)を創造的に活用し、その核心にある「天命にあらがう」という精神を、現代人の自己認識と結び付けることで、古代神話の中に現代的な価値観を表現。革新的な文化の再解釈により、伝統的な物語を新たな生命力と共に現代によみがえらせた。

本作の餃子(本名、楊宇)監督は、中国の伝統文化はアニメ創作の巨大な宝庫であり、世界中の人々が理解できる方法で物語を表現する必要があると述べた。

映画IPを中心としたエコシステムの構築が、中国映画産業の成熟度を明確に示している点は注目に値する。「哪吒2」は映画にとどまらず、テーマパークやトレンドトイ、コラボ商品など10を超える製品シリーズを展開し、「谷子経済(グッズエコノミー)」の市場規模は前年比40%以上伸びた。「哪吒」の「盲盒(ブラインドボックス)」は予約販売で4カ月待ちとなり、一部商品は3倍超のプレミア価格が付くなど、その「ロングテール効果」は、中国のIPが全面的に興行収入頼りのビジネスモデルから多角的な商業エコシステムへと進化していることを証明した。【新華社南京】

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