Intel、量子コンピュータの実用化には後10年かかるとコメント

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IntelとIBM、Googleは量子コンピュータ研究のリーディングカンパニーだ。しかしIBMとGoogleが「量子超越性(quantum supremacy)の実証」にしのぎを削る中、Intelは静観しているように見える。

Intel Labs(インテルラボ)マネージングディレクターの Rich Uhlig氏は、量子超越性は重要ではなく、重要なのは量子コンピュータの実用性だと言う。

英科学雑誌『Nature』に掲載された論文の中でGoogleは、古典コンピュータで1万年かかる計算を、量子コンピュータを使って約200秒で完了し、特定の分野の計算では従来のコンピュータの能力を凌駕する量子超越性を実証したと発表した。しかし、IBMは、Googleが主張する量子超越性には欠陥があり、測定結果にも改ざんの疑いがあると主張している。

Uhlig氏はGoogleの業績について「エキサイティングなニュースだ」と評価しながらも、量子超越性を証明するには、(1)従来のコンピュータで処理するには複雑過ぎる問題を見つけること、(2)その問題の処理において量子コンピュータの優越性を実証すること、という2つの条件が必要であると述べた。また、Googleはそのような問題を探し出し、量子コンピュータの優越性を証明したと主張しているが、同氏はそれに対し、Googleが今回使用した問題にはほとんど実用性がなく、量子コンピュータには実用価値のある問題を処理させるべきだと指摘した。

Googleの研究チームが今回設定した問題は「ランダム量子回路サンプリング」である。これは純粋に数学的な問題であり、実用価値はほとんどない。Uhlig氏は、量子コンピュータに解かせる実用的な問題を発見するには、あと10年は必要だと見ている。確かに量子化学、材料モデリングに将来性はあるが、Max-Cut問題を解くアルゴリズム、暗号解読アルゴリズムなどはより多くの量子ビット数を必要とするため、それが実現するには時間がまだかかる。

これは、IBMが予測した期間よりはるかに長い。IBM東京基礎研究所所長でIBM Asia Pacificの CTOでもある森本典繁氏は、かつて量子コンピュータの実用化に3~5年は必要だと語っている。

量子コンピュータの実用性を直感的に理解するために、Intelは高性能量子ゲートシミュレータを使用し、Max-Cut問題を解いた場合、量子コンピュータがスーパーコンピュータノードを凌駕すると予測した。Max-Cut問題は変数が増加するにつれ加速度的に複雑性が増すアルゴリズムであり、トラフィック管理から電子回路設計までさまざまな分野で広く使われているので、この問題がテストケースとして選択された。

量子コンピュータ研究において、Intelは超伝導量子ビットとシリコンスピン量子ビットの両方を開発している。Uhlig氏によると、シリコンスピン量子ビットには超伝導量子ビットより極小化できるという利点があるので、Intelでは現在シリコンスピン量子ビット技術により多くのリソースを投入しているという。

量子コンピュータの開発はまだ初期段階にあり、Uhlig氏によれば、現在地は「マラソンの最初の1マイル」でしかなく、商業化にはほど遠いと言う。量子コンピュータは今のところ、たった数10量子ビット程度であり、複雑なタスクを処理するには数100万量子ビットが必要である。

しかし、業界は既に量子コンピュータ商業化の初歩的な試みを始めている。MicrosoftとIBMは最近、相次いで量子コンピュータに無料でアクセスできるクラウドサービスを発表した。しかし、これらのサービスは問題を解決するためではなく、量子コンピュータを普及させるという意義が大きい。Microsoftは、開発者や企業が量子アルゴリズムやハードウェアに触れることにより、業界全体がこの技術のメリットを理解することができるだろうと述べた。

注目に値するのは、量子コンピュータはCPU古典コンピュータに取って代わるものではなく、古典コンピュータで解決が不可能な極めて複雑な問題を処理するためにあるということだ。IntelのMichael Mayberry CTO(最高技術責任者)はかつて、インタビューの際に、量子コンピュータの発展によって、既存のコンピュータが時代遅れになることはなく、現用のCPUも依然として有用だとコメントしている。
(翻訳・永野倫子)

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