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従来、工場の生産ラインで使われるレーザー彫刻機は、大型で価格が高いうえに操作方法が複雑で、大ロットの注文には対応するが、少量かつカスタマイズを求める個人や中小企業のニーズに応えにくいものであった。
こうした課題に着目したのが、かつて華為技術(ファーウェイ)で活躍していたエンジニアたちである。2017年に「嗨興科技(Hingin Technology)」を設立し、わずか6kgの軽量設計で、価格を2000元(約4万円)からに抑えた消費者向けポータブルレーザー彫刻機「LaserPecker」を開発した。2024年時点で、LaserPeckerはクラウドファンディングを通じて3億元(約60億円)を集め、年間売上高は5億元(約100億円)に迫る勢いを見せている。
消費者向けレーザー彫刻機市場では、中国発ブランドの「xTool」などが先駆者としてリードしているため、LaserPeckerが競争を勝ち抜くには新しい市場、もしくは既存メーカーが目を向けていないローエンド市場を開拓しなければならない。
LaserPeckerは両方の市場に挑む戦略を確立した。エントリーモデルからプロフェッショナル向けまで、幅広い価格帯でコンパクトかつポータブルな使いやすい製品を展開している。また、開発の部品比率は65%にのぼり、広東省深圳市に構築された強固なサプライチェーンを活用したことで、業界でも高い粗利益率を誇る。
2000元程度のエントリーモデルは、工作好きな子どもや記念品作りなどを楽しむ個人、さらには初心者ユーザーを主なターゲットとする。中華圏エリア責任者の董娟氏は「主婦でも卵に名前を彫れるようにすること」を目標の一例として挙げた。
小規模メーカーやクリエイターを対象としたミドルレンジモデル(価格帯3000〜8000元/約6万〜16万円)は、LaserPeckerの中核ユーザー層を構成している。大手メーカーが参入しない領域であり、海外では全体の85%がこうしたスモールビジネスユーザーだ。例えば、米国のハンドメイド皮革製品店オーナーはロゴ刻印に、日本のパティシエはケーキの装飾に、中国のファッションデザイナーはジーンズのダメージ加工に利用している。

「LaserPecker 4」は、2023年にクラウドファンディングで新記録となる557万ドル(約8億円)を集めた代表的製品だ。青色ダイオードレーザーとファイバーレーザー(赤外線レーザー)のデュアルレーザーで、誤差が0.01ミリ以下と産業用に近い性能を持ちながら、重さがわずか6kgにとどまる。「研究開発費の7割を彫刻アルゴリズムとモーションコントロールの最適化に充てている」と董氏は語る。

プロ向けのハイエンドモデル「LaserPecker LP5」は価格が約2万元(約40万円)、円筒形素材への彫刻や金属カッティング、エンボス加工など多彩な機能を搭載しており、より高い精度と表現力を求めるプロユーザーに支持されている。

董氏は、レーザー彫刻機はプロだけでなく、一般の消費者にとっても創作のハードルを下げるツールになると考えており、「将来的には、スマホに『コップに詩を刻んで』と入力すれば、自動で彫刻が完了するような世界を目指している」と語る。一部の最新機種では、すでにBluetoothを通じた遠隔操作が可能となっており、人工知能(AI)がテキストを図案に変換する描画機能の開発も進められているという。
最後に董氏は、技術力で使いやすさを極限まで高め、破壊的なイノベーターになることがニッチな市場で生き残る法則だとの見解を示した。
市場調査会社QYResearchは、世界のレーザー彫刻機市場で中国メーカーの生産能力が占める割合は2030年までに71%へと上昇し、LaserPecker、xTool、WAINLUXの三大中国ブランドが市場シェアの約半分を占めると予測している。
*1元=約20円で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)
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