「抖音」と「快手」、配信者とユーザーをめぐり争奪戦を展開 

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ショート動画配信の「抖音(Douyin、海外版は「TikTok」)」と「快手(Kuaishou、海外版は「Kwai」)」は互いに相手のリソースを奪おうと奮闘している。ユーザーだけでなく、配信者をめぐる争奪戦も勃発している。

抖音は新規ユーザー向けの奨励策を打ち出しており、なかには快手を想定したものが多数含まれている。快手でのフォロワーが一定人数を上回れば、抖音に新規登録する際に支援を受けられ、すでに抖音のアカウントを持っているのであれば、トラフィックを誘導するなどといった措置だ。

抖音と快手の競争が激しさを増す中、プラットフォーム同士のパイの奪い合いがよく見られるようになった。抖音も快手も公式には認めてはいないが、このような手法はプラットフォームやMCN(マルチチャンネルネットワーク、配信者のマネジメントとコンテンツ制作をサポートする組織)の熟知しているところだ。

水面下の争い

配信者争奪戦は、配信者やMCNの業務には介入していなかった快手のほうから先に仕掛けられた。高齢者向けコンテンツを制作しているMCNの担当者によると、今年5月頃から、毎日のように快手からキャンペーン情報が送られてくるようになったという。それを受け、抖音もすぐに同様のキャンペーンを開始した。

フォロワーの多いユーザーが自社のサービスに登録すれば、快手は情報アプリ「快頭条」でプッシュし、抖音はトラフィック誘導サービス「dou+」で支援する。上述のMCN担当者によると、初めはこうしたキャンペーンに惹かれた配信者が多くいたという。しかし、快手や抖音のアルゴリズムでは、フォロワーがそれほど簡単に伸びることはない。したがって、キャンペーンで保証したような効果が得られないこともしばしばある。

例えば、dou+は動画の再生回数を増やすことができるが、評価やコンバージョン率の上昇に直結するわけではない。評価、コメント数、フォロワー数、シェア回数に影響するのは、やはりコンテンツのクオリティだ。

それでも、新人の配信者にとって、アプリの上位でのプッシュやトラフィック誘導は魅力的だ。快手や抖音としても、絶えず新しい配信者を増やしコンテンツを充実させ、プラットフォーム全体の魅力を高めていかなければならない。

統計によると、今年5月時点で、ショート動画サービスの利用者のうち、46.5%が快手と抖音の両方を使用していることがわかった。一年前、この数字は18.7%しかなかった。利用者の重複率の高さが両社の争奪戦の原因になったと言える。配信者においても同様の現象が起きている。快手で人気ランキング上位100名の配信者のうち70名が抖音でも配信しており、抖音は上位100名のうち50名が快手で配信しているのだ。

ショート動画市場の成長は上限が見えている状態で、快手と抖音は既存市場での競争を余儀なくされている。そのため、どちらも相手のリソースを奪おうとしているのだ。今後両社のコンテンツはより似てくるだろう。

激戦

抖音と快手は、かねてより同じ時期に全社総会を開催することで知られていたが、最近ではそれがより明確になり、日程が数日しか違わないこともよくある。

水面下での争いとは異なり、全社総会では両社とも強気の姿勢を前面に打ち出している。10億元(約150億円)の支援金キャンペーン、100億人分のトラフィックなど天文学的数字が飛び交うのはいつものことだ。今年はさらに両社とも法人アカウントの配信を強化すると表明し、口コミサイトやECプラットフォームの市場を狙っている。

より広い分野でサービスを展開している点が、今年の抖音と快手の明確な変化だ。これまで、抖音は若者向け、快手は農村部で人気というように、特定の分野で強みを発揮してきたが、今はユーザーをできるだけ多く獲得するために、エンターテイメント、ショッピング、オンライン教育など各種のコンテンツを提供するプラットフォームとなることを目指している。

さらに、ショート動画以外の業界からもライバルが表れた。アニメ動画に強い「bilibili」はすでに抖音、快手の配信者を自社のプラットフォームへ誘導しようとしている。一見すると異なる種類のプラットフォームだが、本質的にはどちらも暇をつぶすためのコンテンツを提供しており、ユーザーにより多く時間を使ってもらいたい点では、どこも同じだ。

快手、抖音などのショート動画プラットフォームのコンテンツは長くなっており、bilibiliの動画は短くなっている。「優酷(youku)」、「愛奇芸(iQiyi)」、「騰訊視頻(Tencent video)」などの動画サイトもショート動画に乗り出している。奪い合っているのはユーザーの時間と、広告主のマーケティング予算だ。

コンテンツプラットフォームはどこも変わろうとしているが、その結果、むしろどこも同質化してきているのである。
(翻訳:小六)

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