中国で高まる院内感染対策にIoT活用、メディカルソリューションの「小創科技」

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中国で高まる院内感染対策にIoT活用、メディカルソリューションの「小創科技」

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感染制御を中心としたメディカルソリューションを手掛ける「小創科技(smalliot)」がこのほど、プレシリーズAで1000万元(約1億5000万円)を調達したことが分かった。リード・インベスターは既存株主のインキュベーター「杭州投哪児網絡科技(Hangzhou Tounaer Network Technology)」、コ・インベスターは既存株主の「杭州興泓数科投資(Xingyi Digital Investment)」と新規株主の「青創投(Qing Venture)」が務めた。調達資金は19都市で展開している事業の範囲拡大、透析療法室、集中治療室(ICU)、口腔外科治療室などに特化した院内感染制御関連製品の研究開発に充てる予定。

小創科技は2016年10月に杭州市で設立され、IoTを活用した院内感染制御ソリューションを提供する。最新の測位技術、センサー技術、コンピュータービジョン技術を活用し、各種医療行為をガイドライン化することで、医療スタッフのコンプライアンスを高め、院内感染と医療紛争の発生リスクを引き下げ、患者の院内感染リスク低減につなげることが狙いだ。

IoTとコンピュータービジョン技術

小創科技創業者兼CEOの章鳳祥氏によると、同社の製品はIoTを活用して重要ポイントと主要治療室でデータを収集し(上図参照)、データを取得した医療行為に対する分析と警告を行う。医療行為を即時に規範化することで、感染リスクの発生を低減させるという。

医療行為の管理対象は大きく分けて重点ポイントと主要治療室だ。前者には環境表面の衛生状態、清潔・消毒、安全な注射処置など複数の内容が含まれ、事業化の上で急速な規模拡大が見込める。後者にはICU、透析療法室など感染リスクの高い特定の場所が想定され、DRG(診断群別)の医療費支払い制度導入に伴い、需要が高まるとみられている。

同社はすでに手指の消毒、環境表面の清潔、医療廃棄物など複数の重点ポイントに対する感染制御システムを開発している。章氏は中国では手指の衛生管理が喫緊の課題だと指摘。世界保健機関(WHO)によると、手指の衛生管理をすることで院内感染率を30%引き下げることができる。また、手指の衛生管理をした上で、環境表面を清潔にし、医療廃棄物の追跡管理を行えば、院内感染率を50~60%下げられるという。

同社のIoTを活用した手指衛生管理システムはアプリと連動し、認識範囲内に設置された対象物、例えば消毒液入りボトルなどを管理し、ユーザーが手指の洗浄に利用したかどうかを判断できる。病室では設置された機器を通して、医療スタッフ、清掃スタッフの患者に対する医療行為がガイドラインに沿ったものかどうかを判断する。さらにインターネット経由でデータの収集と送信を行い、ガイドラインを外れた行為が確認されれば、胸元に着用した専用のネームタグが音声と光で警告を発する。

顧客獲得の取り組みとして、小創科技は中国最大手SNSのWeChat(微信)に「感染制御給油所」と名付けたアカウントを開設。院内感染に関するコンテンツを発信することで、医療機関で感染制御に従事する人々に接触している。章氏によると、同アカウントはすでに3万人近い医師とつながっているという。

同社は感染対策の発信やそれに関するQ&Aプラットフフォームも運営している

さらに感染制御に必要な消耗品メーカーや医療分野の情報化を手掛ける企業とも提携し、全方位的なソリューションを実現しているほか、日本、米国、カナダなど海外にも進出している。中国では19の省・市、55の医療機関で使用され、ユーザーは1万人に上る。

DRGによる医療費支払い制度が追い風に

中国では例年延べ400万人の院内感染者が発生し、600億元(約9000億円)の医療費が費やされている。直近5年の院内感染率は2.3~2.7%で推移し、改善がみられない。医療機関としても感染制御を重視しているが、完全には対応できていない。院内感染が医療保険の適用対象であることも医療機関の取り組みが不十分であることの一因となっている。

ただし、中国では今年5月、DRGによる医療費支払い制度が30都市で試験的に導入された。これにより、院内感染による金銭的負担は医療機関が担うことになり、医療機関は感染制御重視の姿勢を強め、市場ニーズも急速に高まっている。

章氏は市場規模について、中国の場合、三級医療機関(注:中国の医療機関は等級別に分類されており、三級が最高等級となる)はいずれも感染制御のニーズがあると指摘。全体で700億元(約1兆500億円)の市場規模が見込まれるとし、海外を含めれば市場規模は1000億元(約1兆5000億円)になるとみている。

市場拡大に伴い、参入企業も増えつつある。代表的なのはIoTで医療分野の「見える化」に取り組む米「CenTrak」、紫外線消毒装置を手掛ける米「Vioguard」のほか、医療行為の検査・測定にRFID技術を活用する中国の「長江脈医薬科学技術実業集団(CHANG JIANG MAI MEDICAL TECHNOLOGY INDUSTRY GROUP)」だ。

これらの競合他社と比較した場合、小創科技の強みは2つある。一つはSNSを通じて感染制御の一線で働く医師とのつながりを販路とし、先発優位を獲得していること。もう一つは3センチメートルという高水準の測位精度を実現している上、コンピュータービジョン領域で医療行為の認識に特化した完璧なアルゴリズムと最多水準のサンプル量を誇るなど、技術を確立していることだ。

小創科技創業者兼CEOの章氏はシリアルアントレプレナー(連続起業家)であり、IoT分野で8年の研究開発、6年のマネジメント経験を持つ。共同創業者の呉一閩氏はパターン認識、機械学習、センサーの研究に従事し、米国と中国で複数の特許を取得。米アップルのシンガポールR&Dセンター、米モトローラのR&Dセンターなどで技術者として勤務後、浙江省医療健康集団(ZHEJIANG MEDICAL AND HEALTH GROUP)」などで幹部を務めた。
(翻訳・池田晃子)

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