アマゾンと拼多多が提携 両社にとってのメリットは

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11月25日のロイターの報道によると、ブラックフライデーの時期に合わせて、アマゾンは中国のEC大手「拼多多(Pinduoduo)」でポップアップ・ストアを12月末まで開設し、海外の商品1000点以上を販売するという。

今回は拼多多にとって、初めてのブラックフライデーセールとなる。拼多多はすでにこのために複数の海外有名ブランドの代理店と提携しており、中でもアマゾンに関しては、拼多多のアプリにアマゾン専用のページを設けるほど重要視している。

アマゾンと拼多多が開催するブラックフライデーセール 画像は拼多多のアプリより

全世界で強力なサプライチェーンとECプラットフォームを持つアマゾンと、中国のEC企業のなかで時価総額トップスリーに入る拼多多。両社の提携にはどのような目的があるのだろうか。

苦闘するアマゾンの「海外購」

今年7月に中国本土でのECから正式に撤退したことで、アマゾンが中国で展開する業務は越境ECの「海外購」と、電子書籍のKindleだけとなった。そのため、アマゾンは単独で闘うのではなく、外に援助を求めることにした。

初めは、アマゾンはIT大手「網易(NETEASE)」傘下の越境EC「考拉(コアラ)」と合併し上場することを検討した。しかしコアラがアリババ・グループに買収されたことで合併は頓挫。アマゾンは戦略を変え、自社のサイトにこだわるのではなく外部のパートナーを探すようになり、その最初の提携先が拼多多になったのである。

左がアマゾン、右が拼多多での価格。画像はそれぞれアマゾンと拼多多のアプリから

双方の提携後、拼多多は一貫した補助金戦略を利用することで、まったく同じ商品でも拼多多のほうがアマゾンより安くなり、さらに中国国内の配送でも拼多多のほうがより迅速であることが判明した。

では、他社サイトで自社よりも安く、配送も速い商品を販売することが、アマゾンにとってどのようなメリットがあるのだろうか。

拼多多が提供する100億元(約1500億円)規模の購入客へのボーナスは、80%のコストを拼多多が負担しており、出品者の負担は20%しかない。アマゾンのようなトップクラスのサプライチェーンなら、拼多多がよりアマゾンに有利な条件を提示する可能性もある。

また、拼多多のトラフィックはアリババ・グループのEC「天猫(Tmall)」や「京東(JD.com)」に肩を並べるほどで、自社サイトのトラフィックが少ないアマゾンにとって、このことは大きな魅力だ。

また、この提携は12月末までと期間限定だ。大量なトラフィックと売上高を得ることが見込まれ、1カ月間だけなら自社サイトへの影響も限定的。中国での越境ECで突破口を探しているアマゾンにとって、メリットのほうが大きいと言えるだろう。

中国におけるアマゾンの「海外購」の影響力とシェアの低下が続いており、第2四半期のシェアは5.7%しかない。第1四半期は6.0%だった。それに対し、天猫の越境EC「天猫国際」とコアラのシェアは33%と25%に上る。

2019年第二四半期の越境ECのシェアランキング。画像はデータ分析会社の「易観(Analysys)」による

拼多多の越境ECの第一歩

拼多多にとっての今回の提携の意味は明らかだ。中国本土の越境EC大手はどこも拼多多のライバルで、提携できる大手といえばアマゾンしかないのである。

アマゾンと提携したことは、海外の大型サプライチェーンやブランドとの窓口を作れたことを意味する。今後拼多多が単独で海外や国内の有名ブランドの商品を販売する際、交渉がよりスムーズになるだろう。

拼多多の越境EC「全球購」はまだ始まって半年だが、目標は高い。11月7日に開催された第二回中国国際輸入博覧会において、全球購の担当者は今後3年間で1万の国際トップブランドを販売し、年間売上高1000万元(約1億5千万円)以上の海外ブランドを100以上生み出し、全球購事業の年間売上高を2000億元(約3兆円)にすると表明したばかりだ。実際、全球購の成長は目覚ましく、これまで前月比100%以上の成長を続けている。

しかし、大きな野望と急成長、さらに膨大なトラフィックがあっても、越境ECで勝つのは容易ではない。

商品の品質管理のために、越境ECの多くはプラットフォームとして出品者を募るのではなく、自ら商品を仕入れている。しかしこのビジネスモデルはコスト負担が大きく、実際に網易はコアラが赤字続きだったため同事業を手放したのである。拼多多の全球購は自社運営ではなく、海外の大型サプライチェーンとの提携という手法を取る。これならコストは抑えられるが、サプライチェーン側の発言力が強くなることは避けられない。そうなれば、海外の有名ブランドに対する拼多多の影響力は限定的なものになるだろう。

こうした有名ブランドは販売チャネルを厳しく管理しており、拼多多で販売することに慎重な姿勢を崩していないところも多い。今後の拼多多にとって、最大の課題はやはり有名ブランドの態度をどのように変えるかという点だろう。
(翻訳:小六)

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