ブラックフライデーの盛り上がりに逆行 かつての人気越境ECが衰退し「弱肉強食」進む

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米ロサンゼルス地方検察局は「ブラックフライデー」を前にした先月26日、消費者に理性的な消費行動を呼びかけ、コピー商品に留意し、問題ある商品については返品手続きを行うよう求めた。また、Eコマース業者に対しても罰金制度の存在を示しながら節度ある商業活動を求めた。

米国発祥の大規模な特売イベント「ブラックフライデー」はすでに海外に波及している。

北京在住のある女性のもとには、ブラックフライデーに関する大量の営業メールが届いた。送信元は越境ECサイトやファッションブランドなどだ。消費者の購買意欲をたきつける毎年恒例のこの特売イベントでは、多くの若者がリボ払いを選択してでも買い物に走ることになる。

クリスマスを前にしたこの一大商戦の最大の受益者はデパートやスーパーマーケットであり、またインターネットが普及した近年ではECプラットフォームだ。さらには海外の商品を気軽に手に入れられる越境ECが浸透し、中国の大手EC企業も同分野を拡大し続けているほか、反対に海外のEC企業も中国市場の開拓に余念がない。さらにはSNSやライブ配信サービスも販促手段として加わってきて、品質の保証された豊富な海外製品が簡単にかつすぐに手に入るようになり、アフターサービスも充実してきた。今年、越境EC市場の取引規模は10兆元(約155兆円)規模に達するとみられるが、これまで幅を利かせてきた小規模な越境EC事業者は、市場の活況に反して淘汰の道を進んでいる。

海外商品を手にする手段の変遷

ブラックフライデーをめがけてソウルに上陸した王さん。ライブ配信を通じ、現地で見つけた魅力的な商品を次々と中国の友人に紹介していく。イヴ・サンローラン、エスティ・ローダー、クロエなど、有名ブランドの商品がどれもディスカウントされている。

1990年代生まれの王さんは2年前まで、越境ECを通じて海外の商品を購入していた。動画共有サイト「ビリビリ動画(bilibili)」で、自身が長らくフォローしている動画投稿者が越境ECをオススメしていたのがきっかけだ。当時は海外滞在中の個人に商品の購入と発送を依頼する「代購(代理購入)」が流行していたが、こうした個人に依頼するより小規模でも事業体として運営するECのほうが安心だからだ。また、小規模の越境ECはクーポン制度を有していることが多く、価格面でも魅力的だった。また、それぞれのECが得意分野に特化しているため、コストパフォーマンスの高い掘り出し物を見つけるのも容易な上に、個人で購入する際に必要な通関手続きなどの面倒なプロセスが省けるのもメリットだった。

しかし、現在では自分で海外へ飛んで買った方がさらにお得だという。ソウルまでの航空券は往復2000元(約3万1000円)程度。週末に1日の有給休暇をプラスすれば存分に買い物ができるという。

王さんよりも上の年齢層で、企業の管理職を務める子育て中の尚さんは、王さんほど身軽な身分ではない。セールの時期に利用するのはもっぱらオンライン通販だ。アリババ系の越境EC「天猫国際(Tmall Global)」や京東商城(JD.com)系の「京東国際(JD Worldwide)」など、主に大手のプラットフォームを利用する。品質、配達日数やアフターサービスに関して安心だからだ。それ以外では、海外旅行に行く友人や親戚に買い物を頼む。また、自分自身も年に2回は海外旅行に出向き、旅程の1~2日はショッピングに充てる。

一方で1995~1999年生まれのグループに属するサリーさんの周囲では、友人からの紹介を介して知った小規模系の越境ECを利用する人が多いという。小規模ECの利点はニッチな商品を取り扱っている点で、ライフスタイルにこだわりのある層を惹きつけている。こうしたECが存在する以前は、海外ブランドの公式サイトを通じて商品を購入し、現地から中国へ商品を転送してくれる業者を通じて手に入れていたという。しかし、こうした方法では注文した商品が手元に届くまで数カ月かかることもある。無論、返品や交換は難しい。

さらに一部の海外ブランドはこうした個人輸入や転売業者を排除する目的で、中国のクレジットカードで決済を希望する注文や、これまで頻繁に同一の住所をに発送先に指定してくる注文を拒否することもある。注文した商品が届かないことも珍しくなかったのだ。

現在は状況が一変した。海外のEコマースサイトは中国市場をことのほか重視している。多くのサイトが中国語表示に対応し、中国の決済サービス「アリペイ(Alipay)」に対応し、ワンクリックで自宅へ発送してもらえるようになった。

海外のさまざまな商品が手に入りやすくなり、サリーさんがこれまで愛用してきた小規模系の越境ECサービスや海外のECサイトは使い勝手が悪いと感じるようになってきた。これらのサイトの多くは取扱商品の発送国や商品ジャンルが単一のことが多く、日本のコスメ、米国のベビー用品、ドイツの高級品などといったふうに狭い分野に特化している。現在は中国の大手越境ECサイトを利用すれば、さまざまな国のさまざまな商品がワンストップで手に入るのだ。

ニッチな小規模ECが淘汰される経緯

オンライン通販がますます普及するのと相反し、越境ECを手がける小規模業者はみるみる陰っていく。オールラウンドな大手と異なり、ニッチ向けに展開してきたことが仇となった形だ。

設立当初はその「ニッチさ」が売りで、インフルエンサーたちの後押しを受けて顧客の信頼を得てきたのだ。2015年7月に欧米系の商品に特化した「別洋(Beyond)」が、翌8月に日本の商品に特化した「豌豆公主(ワンドウ)」がローンチされると、ビリビリ動画などの動画サイトや「中国版ツイッター」の微博(Weibo)でこぞって取り上げられた。投稿者が実際の商品を開封し、使って見せることでユーザーを惹きつけたほか、クーポン券の存在も彼らにアプリのダウンロードを促した。しかし、こうした販促方法はインフルエンサー個々人の信用の上に成り立っているものであり、プラットフォームそのものへの愛着を生む可能性はあまり大きくない。

インフルエンサーによるマーケティングは短期的には集客に効果的だが、長期的にみるとそうとも言えない。一般に、インフルエンサーが商品を紹介する時にはよい面ばかりを強調するため、実際に商品を購入した際に紹介内容と少しでも違いがあると「期待外れだった」という気持ちが強まってしまうのだ。

また、プラットフォームの立ち上げ初期に一気に集客を行うと、仕入れ、配送、カスタマーサービスなどの体制構築が追い付かず、顧客体験(UX)を損ねる。前出の別洋や豌豆公主はこうして徐々に勢いを失っていった。

その一方で、天猫国際や京東国際、「拼多多(Pinduoduo)」「唯品会(VIP.com)」「洋碼頭(yMatou.com)」「寺庫(SECOO)」などの大手はブラックフライデーを席巻し、大激戦を繰り広げている。

大手プラットフォームは長年かけて業界を深く理解しており、ブランドとしての信用も確立し、多くの固定ユーザーを抱えている点が小規模ECとは異なる。さらに、仕入れ、物流、アフターサービスなどの全プロセスで自社ソリューションが完成しており、UXの質が保証されているのだ。

また、小規模ECは微博など外部のSNSや動画サイトへの商品露出を利用して人気を得てきたが、こうした第三者プラットフォームから商品を買うためにわざわざECプラットフォームへ遷移してくるユーザーはますます減っている。コンテンツとECの双方を兼ね備えたワンストップ型のプラットフォームが増えてきているからだ。

大手の団結で四大流派が誕生

今年の中国のブラックフライデーにはやや異変が生じた。

中国のEC専門ポータルサイト「網経社(100EC.CN)」傘下のシンクタンクでシニアアナリストを務める莫岱青氏によると、今年の中国ではブラックフライデーに際し、大手EC同士が結びつき、拼多多系、アリババ系、京東系、洋碼頭系の「四大流派」を形成したという。会社とも越境EC市場でシェアを得るために、結束することを選んだのだ。

同じく網経社のシンクタンクの特約研究員・李鵬博氏は、アリババ傘下の「天猫国際」がネットイース(網易)系の越境ECプラットフォーム「ネットイースコアラ(網易考拉)」を買収したことで市場の寡占化が進み、これを受けたその他の大手が次々とプラットフォームの拡充に動いたと指摘している。

かつてニッチ化で攻めた小規模ECにとっては、成長の可能性はますます縮小し、一気に劣勢に持ち込まれた感がある。

作者:鋅刻度(Wechat ID:znkedu),李覲麟、鄧曉進
原文URL:https://mp.weixin.qq.com/s/bkFItu09lafRAub_F5XJOA

(翻訳・愛玉)

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