アリババのスマートスピーカー「天猫精霊」、音声ショッピング機能を本格導入

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中国では例年11月11日の「独身の日」に年間最大のネット通販イベント「双11(ダブルイレブン)」が開催される。今年の「双11」では、アリババグループ傘下の大手EC(電子商取引)サイト「天猫(Tmall)」が「音声ショッピング」機能を初めて導入した。アリババが手掛けるスマートスピーカー「天猫精霊(TmallGenie)」のデータによると、今年の「双11」では500万人以上が音声ショッピングを利用し、105万件の注文が行われたという。

音声ショッピングの最も大きな特徴は、複数人での利用が想定される家庭でのニーズに適している点だ。一方、極めて個人的で、プライバシー性が高い買い物の場合はモバイルショッピングの方が適している。

音声ショッピングの機能は「双11」前から準備が進められてきた。アリババAIラボでプロダクトディレクターを務める杜海涛氏によると、同機能は中国で例年6月18日に行われるネット通販イベント「618」で実験を開始。ユーザーの反応が良かったことから、今年の「双11」でアリババ傘下ECの「淘宝網(タオバオ)」と天猫で機能を大々的にプロモーションすることに決めたという。

全く新しい買い物の手段として、音声ショッピングはまずリピート率の高い生活必需品から対応を開始した。これらの商品は一般的に、一度購入すると半数以上が1カ月以内に再び購入すると言われている。

だが「双11」を前に、独自商品や人気商品を打ち出したいという考えから、さまざまなカテゴリーの商品が音声ショッピングに対応するようになった。現在、音声ショッピングにおける最大の変化はブランド化がよりはっきりしてきたことだろう。また、ユーザーの利用に対するハードルを引き下げ、リピート率を高めるため、天猫精霊の開発チームはショッピング機能のウェイクワードを意識的に「週末ショッピング」「開けゴマ」「今日のおすすめ商品」とし、記憶に強く残るようにしている。

杜氏は「ブランド化というのはアイテム数を絞り、商品セレクトの精度と商品自体の質を高めることだ」と説明。ウェイクワードを短くし、パスワードをできる限り簡単なものとし、ユーザーが悩まずに済むよう対応商品を絞ることで、天猫精霊を使って便利に日用品が買えることを分かってもらうとしている。

「618」に比べ、「双11」ではブランド各社の音声ショッピングへの協力も深まった。参加したブランドは176社に上り、各社とも知名度があり、かつ在庫が比較的安定している商品を選んだほか、口コミでの宣伝も行った。

杜氏によると、選ばれた商品の大半が音声ショッピング専用の商品だという。典型的な例を挙げると、穀物生産を手掛ける「五常市金禾米業」と提携して商品化した有機米「聖上壹品」の場合、天猫精霊限定の価格やクーポン、この商品のためだけに作られたウェイクワードなどがあり、価格は一般的な価格の半分になっている。

音声ショッピング専用商品の特徴は主に規格や包装だ。天猫精霊はやはり家庭での利用を想定していることから、米であれば5キログラム、10キログラムを規格として採用。また、外装に天猫精霊の各種ウェイクワードを印字することで、ユーザーのリピート購入を促している。

家庭での利用が想定されているとはいえ、音声ショッピングは今後も利用が広がるとみられるほか、若者向けのブランドにも対応している。杜氏は「音声ショッピングは買い物スタイルの一つであり、将来的にはブランドの細分化も行っていく」と語る。なお、天猫精霊は若者向けに「盲盒」(サプライズトイ)を取り扱っており、新たな版権商品への取り組みも進めている。

中国IT大手の小米科技(シャオミ)、百度(バイドゥ)、アリババはスマートスピーカーで競争を繰り広げている。だが、シャオミはスマートスピーカーにセンサー機能を搭載してスマートホーム機器に対応、バイドゥはコンテンツサービスや音声検索サービスを提供するなど戦略は各社で異なる。アリババの強みは買い物であり、米アマゾンのスマートスピーカー「Echo(エコー)」という成功例があることからも、アリババが音声ショッピングの足掛かりを家庭での利用としたのは自然な流れだと言えるだろう。

ただし、中国ではスマートスピーカーの普及が思うように進んでいない。音声認識や対話分析技術開発の米「Voicify」によると、2019年の米国のスマートスピーカーユーザー数は成年人口の約26%に上っている。一方、中国ではわずか8%にとどまる見通しだ。

音声ショッピングは長期にわたるユーザーへの働きかけが必要になるだろう。少なくとも中国ではモバイルショッピングを上回るメリットは見当たらない。また、スマートスピーカー自体が他社製品への乗り換えが容易なものであり、ショッピングをするにしても代替が利く。スマートスピーカーの購入補助金が打ち切られた後で、どのようにユーザーをつなぎ止めるかが天猫精霊の解決すべき課題になりそうだ。
(翻訳・池田晃子)

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