グーグルの「ハード化」とアップルの「ソフト化」

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グーグルは11月初旬、米ウェアラブルデバイス大手「Fitbit」を21億ドル(約2300億円)で買収すると発表した。発表同日、Fitbitの株価は17%も上昇したという。

グーグルでデバイス・サービス部門のSVPを務めるRick Osterloh氏による発表(グーグル公式サイトより)

ウェアラブルデバイスは、近年になって盛り上がりをみせる注目の市場だ。IT専門調査会社IDCが今年6月に発表したレポートでは、2019年のグローバル市場におけるウェアラブル機器の出荷台数は2億2290万台に達すると予想され、5年間の年平均成長率は7.9%に達する。同市場を引き続きけん引するのはスマートウォッチだ。しかし、同市場の開拓者といえるFitbitに関しては、好調とは言い難い。グーグルが買収に動かなければその存在すら忘れ去られていただろう。

グーグルが手中に収めたいFitbitとは

2007年に設立されたFitbitは「全人類の健康に着目」をスローガンに出発し、2009年には初のフィットネストラッカー「Fitbit Tracker」を発表した。現代人の健康意識にフィットしたデバイスは、インターネットやスマートフォンの普及とともに北米市場でフィットネスブームの一大旋風を巻き起こした。さらに複数のフィットネスリストバンドを発売すると、こちらも大ヒット。2015年には上場を果たした。

しかしその栄華は長くは続かず、フィットネスリストバンドは新たに登場したスマートウォッチに取って代わられた。同社製品の成長に陰りが見え始め、反対にアップルやサムスンなどのブランドが市場に投入するスマートウォッチが引き続き強さを見せつけた。今年第2四半期のFitbitの財務報告では、調整後当期純損失は3600万ドル(約40億円)で、市場シェアは15.2%から9.8%に落ち込み、完全にアップルやサムスンの後塵を拝している。

Fitbitのスマートウォッチ「Fitbit Versa」(Fitbit公式サイトより)

一方のグーグルも2014年にスマートウォッチ向けOS「Wear OS(発表当時:Android Wear)」を発表しているが、成功には至らなかった。その後、スマートフォン「Pixel」シリーズの展開が順調に進み、来年初めにはワイヤレスイヤホン「Pixel Buds」も発売予定だ。Fitbit買収に付随して、スマートウォッチも同社の発売予定リストに入ってくるだろう。

グーグルはFitbitを買収することでハードウェア事業を補完するだけでなく、デジタルヘルス分野でも技術やデータを大規模に獲得することになる。

ソフトウェアから出発したグーグルは、ハードウェアの開発も間断なく手がけてきた。過去3年でパソコン、VRグラス、スマートスピーカー、イヤホン、スマートフォンなどを発表しており、ウェアラブルデバイス市場にも進出してきている。ハードウエアを取り巻くエコシステムにおいて、グーグルは猛突進しているといえるだろう。

ソフトウェア事業に注力するアップル

グーグルがハードウェア事業を強化するのと反対に、アップルはソフトウェア事業に注力しはじめた。

今年に入り、そのシグナルはひっきりなしに発せられている。先日の発表会では、雑誌の定額購読サービス「Apple News+」、ゲームの定額利用サービス「Apple Arcade」、アプリ一つであらゆる映像コンテンツが視聴できる「Apple TV」、ビデオ・オン・デマンドサービス「Apple TV+」を一気に発表し、ソフトとハードを一体化させた実力をアピールした。

これを受け、グーグルはハードウェア事業を強化させざるを得なくなったのだ。

ある統計によると、グーグルは2001年以来、AndroidやYouTubeなど270社を買収している。これに対し、アップルは企業買収にはそれほど積極的ではないが、2010年以来、音声認識やコンピュータービジョン、顔認識などAI関連企業を20社以上買収している。さらにはVR(仮想現実)、ヘルスケア、チップといった分野にも食指が動いているようだ。

二つのテックジャイアントの競争はその境界線をあいまいにしながら、徐々にソフト・ハードを混然一体とさせたエコシステムへと主戦場を移している。

(翻訳・愛玉)

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