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3Dプリント技術の発展に伴い、いかにして生産規模を拡大するかがメーカー共通の課題になっている。現在の3Dプリント技術は、スピード、材料、ソフトとハードの組み合わせなどの面で制約があり、現在のところ航空宇宙、自動車、医療などの分野において補助的に利用されるしかない。応用シーンが限られている上に価格が高いため、3Dプリンターの需要はそれほど多くはない。このような理由で3Dプリント市場は需要が分散し、メーカーの収益に影響を与えている。
生活必需品である靴は、中国国内市場だけでも、2010~2017年に年間100億足以上が生産されている。「Raise 3D」はこの靴業界に注目し、ノウハウを生かして3Dプリントの生産規模を拡大しようとしている。
Raise 3Dは2015年に米国で設立され、3Dプリンターとその応用シーンにおけるソリューションを提供している。顧客の95%以上は海外企業であり、製品は航空宇宙、自動車、医療、クリエイティブ産業、家庭用電化製品などの工業生産分野に適している。このような企業向けの製品としてPro2シリーズがある。現在、同社はすでに数千社もの顧客を抱え、客単価はおよそ3~4万元(47万~62万円)である。
Raise 3Dは2019年に中国市場に進出し、コストパフォーマンスの高い3Dプリンター「Raise3D E2」を発売した。創業者である封華CEOによれば、E2は2万元(約31万円)という低価格ながら、正確で安定して使いやすい3Dプリンターで、これが可能なのは同社の技術力によるものだという。
封華CEOによると現在、中国市場の多くの3Dプリンターの研究開発には、海外のオープンソースのソリューションが使われているが、Raise 3Dのコアチームはソフトウェア開発において豊富な経験があり、ソフト・ハード共に自社開発をしているとのこと。また全世界の50社近い材料メーカーと共同で造形材料を開発し、品質と安定性を確保している。
現在の市場の多くの3Dプリンターがプラスチックを材料に使っているのに対し、Raise 3Dはゴムを使用しているため、造形の品質、安定性、正確性において高いレベルが要求される。現在、1台のプリンターで1日平均4~8足のソールを生産でき、製品は85%以上の正確性が保証されている。すでに取引の意向を持つ顧客がいるとのことだ。同社は将来的に顧客のために3Dプリントによる靴生産工場を設計し、ハード・ソフトおよびシステムサポートを含む3Dプリント生産ラインの構築を一括で提供する計画である。
従来の靴の生産方式と比べて、3Dプリントによる完成品は軽くて通気性に優れ、片足わずか22gで、複雑な細孔構造となっている。製造過程において廃棄物を出さず、消費電力は150w未満で、外部電源や水源、温度や湿度の管理なども必要ではないため、低コストで環境に優しい。
Raise 3Dは江蘇省の南通市に工場を所有しており、生産能力は年間2万台である。現在、売上の90%以上は3Dプリンターの販売によるものである。海外市場は比較的成熟しているが、中国国内市場における3Dプリンターの需要はまだ大学の研究分野と一部の製造業に集中している状態だ。3Dプリンター以外の売上は、3Dプリンターの消耗品、ソフトウェア、クラウドプラットフォームおよび個別のニーズに応じたコンサルティングサービスの提供によるものである。2016年から現在まで、年間売上高の伸び率は平均すると約70%で、2019年の売上高は2億元(約31億円)に達する見込みである。研究開発費は売上高の15%~20%を占める。
Raise 3Dは最近、シリーズBで「長江国弘(Grand Yangtze Capital)」傘下の投資ファンドから数千万元(数億円)を調達した。それに先立ちエンジェルラウンドとシリーズAで、「十方同人」、「順融資本(SR Capital)」から資金を調達しており、これまでに調達した資金は累計で1億元(約16億円)近い。
3Dプリントによる靴製品はすでに市場で販売されているが、小ロットのオーダーメイド生産にとどまっている。アディダスが3Dプリンターメーカー「Carbon」と提携して生産したシューズ「Futurecraft4D」はランナーをターゲットにしている。2014年に設立されたカナダのスタートアップ「Wiivv」は、750万ドル(約8億1000万円)を投入して、オーダーメイドのサンダルとインソール製品を扱っている。米ヒューレット・パッカード(HP)も2017年に3Dプリントによるフットウェアソリューション「FitStation」をリリースし、靴のオーダーメード市場に参入した。3Dプリンターメーカー「Prodways」はナイキと協力して3Dプリントによるシューズのソールを開発している。
(翻訳・普洱)
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