ビリビリ動画、LoL決勝戦3年間独占放映権を125億円で取得した狙いは

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ビリビリ動画、LoL決勝戦3年間独占放映権を125億円で取得した狙いは

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世界的な人気を誇るeスポーツ「リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends、英雄聯盟、以下LoL)」。その決勝戦(ワールド・チャンピオンシップ)の3年間の独占放映権を、中国の大手動画共有サイト「ビリビリ動画(bilibili、以下ビリビリ)」が8億元(約125億円)で落札した。タブロイド紙の『新京報』が先月3日付で報じた。この入札には、ショート動画配信の「快手(Kuaishou、海外版は『Kwai』)」や、ゲーム実況配信プラットフォームの「闘魚(DOUYU.COM)」、「虎牙(Huya)」なども参加した。

市場では、取得額は5億元(約80億円)だったとの噂も流れているが、いずれにしろ投資効果でみた場合、市場価格を大幅に上回る高い買い物だったといえる。ゲーム実況配信各社の投じるLoLの放映権料は年4000万~8000万元(約6億4000万~12億8000万円)程度であり、毎年のように値上がりしているとはいえ、さほど高くないことを考えると、今回の取得額は破格だったといえよう。

LoLに80億円は見合うか?

今年のLoLワールド・チャンピオンシップは上海で開催される予定で、同市の宗明副市長が自ら予告CMに出演するなど、大いに盛り上がりをみせている。同大会は、昨年の大会で中国プロチームが優勝するとメディア各社がこぞって第一報で報じたほどの凄まじい人気ぶりだ。

こうしたなか、LoLの中国での運営を手がけるIT大手テンセント(騰訊)もLoLから得られる利益を最大化する方法を模索している。業界関係者によると、テンセントの互動娯楽事業部(インタラクティブエンターテインメントグループ)と米eスポーツ企業ライアットゲームズ(Riot Games)は昨年1月、eスポーツを運営する「騰競体育(TJ Sports)」を設立し、向こう3年の売上目標を10億元(約160億円)と定めた。年間売上げ目標は3億元(約48億円)程度になる。このうち、スポンサー料が年1~2億元(約16億~32億円)、虎牙や闘魚、ビリビリなどのプラットフォームから受け取る放映権料が年1~2億元(約16億~32億円)としている。

画像提供:ビリビリ動画

この売上目標の達成はさほど困難なことではない。米プロバスケットボールNBAやサッカー英プレミアリーグなどの放映権料が年々値上がりしており、ゲームの放映権料も今後の値上がりが見込めることから、利益の最大化を図ることは可能だ。

テンセントは世界最大のゲーム会社であり、人気ゲームのライセンスを数多く所有している。虎牙や闘魚、ビリビリのほか、快手にも出資し、モバイルゲーム動画配信の「触手(Chushou)」ともライセンス契約を締結するなど、各社との提携を進めている。

eスポーツ実況配信にかけるビリビリの狙いと野望

こうしたなか、ビリビリも賭けに出た。今後3年も引き続き中国チームが好成績を挙げられると踏んだのだ。

ビリビリにとって、今回の放映権料は払える額とはいえ大金だ。同社が発表した2019年第3四半期(7~9月)の決算報告によると、売上高は18億6000万元(約298億円)、純損失は4億600万元(約65億円)だった。それほど余裕はないのが現状で、放映権に大金を使えばキャッシュフローを圧迫するのは自明だが、一体どのような算盤を弾いたのだろうか。

同社は2018年にeスポーツ事業に本格参入し、新会社「上海嗶哩嗶哩電競信息科技公司」を設立した。その前年の12月にeスポーツチーム「BLG(Bilibili Gaming)」を設立、チームは中国リーグ(LPL)の代表となり、翌年には春季リーグで5位、デマシア杯(Demacia Cup)では準優勝を果たすなどの戦績を挙げた。

画像提供:IC photo

ビリビリが今回、3年間の独占放映権を高額で取得したのには、eスポーツ市場を拡大させる狙いもある。市場が拡大すれば自社の成長にも繋がるからだ。

2019年第3四半期決算によると、ビリビリの実況配信と付加価値サービス事業の売上高は前年同期比167%増の4億5000万元(約72億円)に上った。同社によると、多様なコンテンツを取り揃えることで視聴者数が上がるという。特に年々注目度の高まるeスポーツの伸びは目覚ましく、2019年のLoLワールド・チャンピオンシップの最大同時視聴者数は前年比で倍増した。

これまでビリビリは、他社のように多額の報酬を出して人気キャスターを起用することはしてこなかった。理由は、ゲーム実況そのものに多額の費用がかかるからだ。トップクラスの人気キャスターをめぐる争奪戦は虎牙と闘魚の2強間で繰り広げられており、ビリビリはまだこの争いに巻き込まれていないものの、今後、報酬が高額化するのは目に見えている。ビリビリが今回、放映権を高額で手に入れたのは、人気キャスター起用とは別のやり方でゲーム実況競争に参入するとの意思表明だったともいえる。

ビリビリにとって今後競合相手となる存在は他にもいる。快手だ。同社が発表したデータによると、ゲーム実況配信のDAU(日当たりアクティブユーザー数)は3500万と、闘魚と虎牙の合計をも上回っている。モバイル関連データの調査を手がける「Quest Mobile(北京貴士信息科技)」のまとめによると、2019年6月5日時点の闘魚と虎牙のDAUはそれぞれ1500万と1100万だった。

LoLの決勝戦は今や世界中のファンが熱狂するものとなった。その人気の沸騰ぶりからみてもeスポーツ業界は急成長を続けており、市場拡大をにらむビリビリにとって独占放映権の獲得は3年間におよぶ賭けといえよう。
(翻訳・北村光)

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