中国、家電修理は「まずAIに相談」へ 2億件の修理データで見積もり・技術者紹介も
2026年に入り、AI業界の潮流は「対話型AI」から「特定分野で実務を担うAI」へとシフトしつつある。こうした流れの中、家具や家電の設置・修理サービスを手がける中国のプラットフォーム企業「万師傅」は3月初旬、住まい関連サービスに特化したAIエージェント「豌豆AI」を公開した。業界特化型エージェントとしては初の試みだという。
同AIは、万師傅が12年にわたり蓄積してきた2億件以上の受注データと、400万人を超える認定技術者の作業経験を基盤に構築されたもので、消費者が安心して家電・家具修理サービスを利用できる環境の整備を目的としている。
日常生活を送るうえで家電の設置や修理は避けられないものの、技術的な専門性が高いため、価格やサービスの基準が分かりづらいことが多い。万師傅を創業した田暁正氏によると、プラットフォームの役割は、技術者のスキルのばらつきや標準化しにくいサービスといった課題を解決することにあるという。
自然な対話を売りにするDeepSeekなどの汎用大規模言語モデル(LLM)とは異なり、豌豆AIは蓄積された業界ノウハウに基づく高い専門性を強みとしている。インターネット上の一般知識の寄せ集めではなく、故障内容や修理方法、見積もり、サービスに対する評価を含む2億件の実データが基盤となっている。幅広い知識を持つ「理論派」というより、何万台もの家電を修理してきた「ベテラン技術者」のような存在だ。
豌豆AIは、万師傅のWeChatミニプログラムに組み込まれており、ユーザーが不具合内容を入力すると、AIが図解付きの診断ガイドや業界の参考価格を提供し、技術者の紹介までしてくれる。現在のバージョン1.0は家電修理の分野に特化し、出張費の追加請求や不透明な料金体系といった業界の課題解決に重点を置いている。将来的には、家具・家電の設置やクリーニングなど対応するサービスを段階的に広げていく計画だ。
豌豆AIの登場は、住まい関連のサービスが「情報化」から「スマート化」へと移行していることを示している。これまでのサービスプラットフォームは、利用者がサービスを依頼し、実際の作業が終わった後でそれを評価するという流れのため、何か問題があってもサービスはすでに完了しており、ユーザーは低い評価を付けることしかできない。豌豆AIの場合、ユーザーが技術者を探す前に、AIが故障診断や修理方法の予測、価格の目安を提示し、サービスを受ける前の意思決定を手伝う。
「先にAIに相談し、それから技術者を探す」というプロセスにより、消費者がサービス利用に関わる主導権を取り戻し、技術者に言われるがままの立場から、双方が対等に交渉して合意に至る関係へと大きく変化する。サービスの標準化が難しいという業界特有の課題に対し、豌豆AIは「データ-診断-見積もり-技術者紹介」という一連の流れを完成させることで、住まいに関連したサービスのあり方を劇的に変えようとしている。
(翻訳・畠中裕子)